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第59回グラミー賞、ビヨンセ対アデルの行方は? 渡辺志保に訊く授賞式への期待

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/13 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 第59回グラミー賞授賞式まで、あと1カ月。ビヨンセ対アデルの対決をはじめ、ストリーミングのみで全米ビルボートのトップ10に入ったチャンス・ザ・ラッパーが最優秀新人賞他全7部門に名を連ね、日本人でも坂本龍一の映画『レヴェナント』のサウンド・トラックがノミネートされるなど、様々な点で注目を集めている。 (関連:ビヨンセはなぜ『ハーフタイムショー』で社会的メッセージ性の強い新曲を歌ったのか?)  さらに、授賞式でのパフォーマンスも大きな見所のひとつ。日本でも生中継される同式では、毎年多くのアーティストが世界中に向け、大きなメッセージを訴えかけている。今年はどのような点に着目すると、よりグラミー賞を楽しむことができるのか。HIPHOPやR&Bを中心にアメリカのポップミュージック・シーンに詳しい、音楽ライターの渡辺志保氏に訊いた。 「まず、今年のグラミー賞には、音楽の聴き方は必ずしもフィジカルのCDを買うだけではないという現状が、如実に表れています。リアーナやカニエ・ウエストの作品もそうですし、その最たる例はチャンス・ザ・ラッパーです。これまでに2枚のミックス・テープを出し、3作品目となる『Coloring Book』はApple Musicのストリーミング限定で発表された、評価の高い作品です。これまで正規のアルバムを出していない新人が7部門にノミネートされることはありませんでしたが、今回はストリーミング限定の無料作品も受賞対象にすると、グラミーの委員会もルールを改変しました」  また、近年では、同性愛や人種差別といった社会的テーマに向き合ったパフォーマンスも話題となっている。 「たとえば2014年にアメリカで世論の論点となっていたトピックのひとつが同性愛者同士の結婚です。その年の授賞式では、マックルモア&ライアン・ルイスが、同性婚がテーマの『Same Love』を披露しました。また去年はケンドリック・ラマーが、黒人の人種差別をプロテストしたパフォーマンスを見せてくれました。ケンドリックが自ら手錠をつけ、黒人男性が囚人服を着て檻の中に閉じ込められるというシーンには、グラミー賞もこれだけ社会的なパフォーマンスを良しとしているんだと気付かされました。さらにその直前に行われた『スーバーボウル』のハーフタイムショーでビヨンセは『Formation』を披露し、全米を巻き込んで人種問題を訴えています。昨年の同時期に二者のパフォーマンスを立て続けに見たことで、衝撃を受けた視聴者は多かったはず。今年も少なからずそういったテーマを踏まえ、授賞式が行われるのではないでしょうか」  今年度、アメリカをはじめ世界中に大きな衝撃を与えたのは、ドナルド・トランプのアメリカ大統領就任だ。大統領選が行われる前から、多くのアーティストが楽曲を通してメッセージを発していた。同氏は、このことも受賞結果に影響を与えるのではないかと考える。 「見所のひとつは『ビヨンセ対アデル』ですが、今年はオバマが退任し、トランプ政権に突入した直後にグラミー賞が決まります。そういった情勢を考えると、最優秀レコード賞は今のアメリカの民衆の声としてビヨンセが選ばれる可能性が高いのではないでしょうか。さらに彼女が授賞式でこれまで以上のパフォーマンスを見せてくれるとしたら、アメリカのエンターテインメントの持つ力をグラミーが提示するという、意義深いステージになるはずです。とはいえアデルの『Hello』も強力な求心力を持つ曲ですから、最後までどうなるか分かりませんね」  昨年度は、テイラー・スウィフトが最優秀アルバム賞を受賞し、全体的にもポップなラインナップとなったが、今年はまた違った展開になりそうだ。また、テイラー・スウィフト関連では、カニエ・ウエストのある楽曲にも注目したいという。 「最優秀ラップ・ソングには、カニエ・ウエストの『Famous』がノミネートされています。この曲は、テイラーを“ビッチ”と呼んで炎上し、テイラー側も抗議に出ました。しかし、その後カニエの妻キム・カーダシアンが、実はテイラーには許可を得ていると暴露したことで、今テイラーへの風当たりが強くなっている。昨年テイラーを支持したグラミー賞が、今年はこの曲を選ぶとなると面白いことになりそうです(笑)。また、去年の秋頃にカニエは精神的な問題もあって入院しました。それ以来公の場には出ていないため、復活後初ステージとしてグラミーでお騒がせなことをしてほしいという期待もあります」  近年のアメリカのポップミュージック・シーンでは、傑出した作品性とプライベートに直結した話題性でリスナーを楽しませる作品が数多く生まれている。主要4部門に限らず、カニエ・ウエストの「Famous」の行方を追うのも、楽しみ方のひとつかもしれない。最後に、同氏は授賞式でのパフォーマンスについて、こう期待を述べた。 「ビヨンセとアデルは、ユーモアのわかる女性同士、この対決をどうネタにしてくるのか気になりますし、リアーナも話題になるようなぶっとんだ格好をしてほしいですね(笑)。アーティスト同士のコラボレーションやハプニングもグラミー賞の醍醐味です。また、司会者のジェームス・コーデンは、テレビ番組内の企画『カープール・カラオケ』で一躍有名になりました。彼がタクシーの運転手になり、助手席にアーティストを乗せカラオケをするのですが、アーティストの素の表情が出ていると評判が高いんです。授賞式でも、ジョークや風刺を利かせながら巧みなおしゃべりを聞かせてくれるはず。といったように、様々な見所がありますが、今回はやはりトランプ政権がはじまって世界中が不安に思う中でのグラミー賞。今だからこそ、音楽のエンパワメントを示し、ポジティブな何かをもたらすパフォーマンスを見せてほしいと思います」  グラミー賞授賞式は、世界中で何千万人が同時に視聴する音楽界最大のショーだからこそ、そのステージには大きな期待が寄せられる。アメリカをはじめ世界の近年の潮流や情勢を考えると、今年はさらに、音楽というエンターテインメントがその力を発揮し、大きなインパクトと感動を残すパフォーマンスを見ることができそうだ。(取材・文=若田悠希)

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