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篠原涼子から石原さとみへ 『地味スゴ!』が作った、新しいアラサー女性像

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/12/06 株式会社サイゾー
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 いよいよ、『地味にすごい!校閲ガール・河野悦子』が最終回を迎える。石原さとみ演じる河野悦子のキャラクターは、従来の「アラサー女性のお仕事ドラマ」というジャンルを大きく更新した全く新しいアラサー女性像だったと言える。 参考:石原さとみ、『地味スゴ!』悦子が“当たり役”である理由ーードラマの魅力を改めて検証  『校閲ガール』の面白さの理由のひとつに、小田玲奈プロデューサーの存在があるだろう。初めてドラマプロデューサーをつとめたドラマ『家売るオンナ』では、第5回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」作品賞を受賞するなど、2作続けてのヒットで手腕の確かさを示したといえる。  脚本は石原さとみ主演の『ディア・シスター』(2014年フジテレビ)や篠原涼子主演の『ラストシンデレラ』(2013年フジテレビ)を手がけた中谷まゆみ、演出は篠原涼子主演『ハケンの品格』(日本テレビ2007)など数々の日テレドラマを手がけてきた佐藤東弥である。小田はいくつかの取材で、「『ハケンの品格』は日テレで一番好きなドラマ」だと語っている。  この3人の共通点である篠原涼子と石原さとみがテレビドラマにおいてどのような役割を担っているかを考えることで、最終回を迎えるにあたって『校閲ガール』とはなんだったのかを振り返ってみたい。 『ハケンの品格』は完璧に仕事をこなすスーパー派遣社員である春子が会社のピンチを救うバリバリのお仕事ドラマだ。篠原は『ハケンの品格』の他にも『anego【アネゴ】』(2005年日本テレビ)、『アンフェア』(2006年関西テレビ)など、恋に仕事に生きる数々のかっこいいアラサー女性(32~33歳設定)を演じ続けてきた。それは、『ラストシンデレラ』のようにアラフォー世代にシフトした現在も変わらない。ドラマの中で彼女が着こなすファッションや、ライフスタイルは常に同世代の女性たちの憧れであり、指針だったのではないだろうか。  一方、石原さとみもまた、同世代の女性たちからの「石原さとみのようになりたい」という羨望の眼差しを一心に受けている女優の1人である。恐らく、篠原涼子の次を担う存在になりうるのではないか。そしてそれは、彼女がここ数年で演じてきたテレビドラマが要因であると言える。  石原は、2014年の『失恋ショコラティエ』(フジテレビ)以降、『ディア・シスター』、『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ)、そして『校閲ガール』の4作品でどれも27、28歳を演じている。石原は、篠原涼子とはまた違った魅力のアラサー女性像を打ち出した。確かに、アラサー世代の入り口である27、28歳とバリバリのアラサー世代である32、33歳の女性像には大きな違いがあるだろう。32、33歳になった石原さとみは、これまでと違った篠原涼子のような女性像を打ち出すのかもしれないが、ここでは、その女性像の変化を取り上げる。  主人公・河野悦子は、必ずしも完璧じゃない。抜群のファッションセンスと人並みはずれた行動力。仕事ができる女であり、意外と家庭的な一面も見せる。そして、誰に対しても物怖じせずぶつかっていくことや、さりげない気遣いを忘れないことで、なんでも器用にできるかっこいい女性像を打ち出している。  一方で、彼女は時に弱みを見せる。「本当にやりたいことはこの仕事じゃないのに」という思いを持ち続けていることや、時に失敗すること、大好きな幸人(菅田将暉)のことになると不器用なぐらいジタバタすること。その隙が、彼女の最大の魅力である。  11月30日の放送回で、親友の森尾(本田翼)が幸人のことを好きなのではないかと思ったショックと憧れのファッション誌校閲でミスをしたことによるショックが重なって、周囲が心配するほど地味なファッションで打ちひしがれている彼女は、無性に可愛かった。  彼女を見守る校閲部のメンバーたちやおでん屋のメンバー、女子会メンバーや悦子の良き相棒である編集部の貝塚(青木崇高)や幸人と一緒にみんなの“えっちゃん”を応援しようという気持ちになるのは、彼女の真っ直ぐさゆえなのである。  河野悦子は、アネゴっぽさに加え、同時に子どもっぽさも持っている。その両面性が次世代の理想のアラサー女性像と言えるのではないだろうか。  また、アラサー女性が活躍するドラマの構造自体に大きな変化が生まれている。今シーズンの女性主演の主要ドラマは、2つに分けることができる。敵の出てこないアラサー女性ドラマと周囲は敵だらけのアラフォー女性ドラマである。  前者は、『校閲ガール』や、『逃げるは恥だが役に立つ』(新垣結衣演じるヒロインみくりはアラサーというには少し若いが)。後者は、米倉涼子主演の『ドクターX』、天海祐希主演の『Chef~三ツ星の給食』、菅野美穂主演の『砂の塔~知りすぎた隣人』だ。  あの手この手で潰そうとしてくる敵に対し、プロフェッショナルの技術を持つ主人公がひとりで立ち向かい、周囲を巻き込んでいく『ドクターX』と『Chef』の構造は、『anego』以降の篠原涼子が演じ続けている女性像と同じである。『砂の塔』の菅野美穂もまた、子育てに迷う主婦ではあるが、周囲は敵だらけの状況で、あの手この手で潰そうとしてくる敵に対し、必死に立ち向かう。  一方、『校閲ガール』、『逃げ恥』には敵がいない。それぞれの個性やコンプレックスを持つ登場人物たちは、互いを認め合い、誰かが困った時は手を差し伸べ、支えあっているのである。  ここから、アラサー世代に対する社会の変化を読み取ることができる。そしてこれは、ゆとり世代がアラサーになりつつあるということが大きいだろう。勝負の少ない環境で育ってきた世代は、人を敵とみなす前に理解しようとする。互いのコンプレックスを認め合おうとする。その傾向が、『校閲ガール』と『逃げ恥』の雰囲気に繋がっているのではないだろうか。  最終回では、悦子に念願のファッション誌「Lassy」異動のチャンスが舞い込んでくる。幸人の父親でもある作家・本郷大作(鹿賀丈史)が3度メインキャラクターとして登場するのは、初回から悦子に校閲が天職だと言い続け、「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」というタイトルそのままのネーミングを、最初の仕事を終えた彼女に与えた存在だからだろうか。  悦子は本当にやりたい職業につけるのか、それとも天職は校閲ガールなのか。彼女はどんな人生の選択をするのだろう。(藤原奈緒)

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