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米国スタイルで“チャイニーズ・ドリーム”をつかんだ百度

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/05/27 ITMedia
米国スタイルで“チャイニーズ・ドリーム”をつかんだ百度: 中国・北京にある百度本社。最近の北京でこうした青空は珍しい © ITMedia 提供 中国・北京にある百度本社。最近の北京でこうした青空は珍しい

 「米国を抜いて中国が世界最大の経済大国に」――。今年4月に世界銀行が発表した2011年時点の購買力平価(PPP)推計によると、2014年に中国の国内総生産(GDP)がPPP換算で世界一になる見通しとなった。中国の経済成長ぶりは改めて説明するまでもない。鈍化傾向にあるとはいえ、2000年〜2013年にかけて毎年平均で10%近くGDPを伸ばしているのは驚異的である。

 「城市、让生活更美好」(より良い都市、より良い生活)とは2010年に開催された上海万博のテーマだが、今でも中国の各地で「生活更美好(より良い生活を)」といった言葉を目にする。貪欲なまでの上昇志向と、それに対するエネルギーの大きさはとどまるところを知らない。PM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染や格差拡大のひずみなど、急激な発展がさまざまな問題をもたらせているが、今後も巨大なマーケットとしての地位は揺るぎないだろう。

 その中国にあって、特に飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けているのが、インターネット産業である。中国の研究機関である中国互聯網信息中心(CNNIC)によると、中国のインターネット人口は、2000年にわずか2250万人だったが、2013年には6億1758万人にまで増加している。中でもスマートフォンやタブレット端末などモバイルデバイスを活用したインターネットユーザーが急増。2007年の5040万人から2013年には5億6万人となった。インターネット全人口のうち約81%がモバイル経由でのアクセスという割合だ。

 このように消費者の規模や市場の大きさも然ることながら、米国帰りの若者が創業し、欧米流のマネジメントスタイルでビジネスを拡大していく、そうした企業が多いのが、中国におけるインターネット産業の特徴と言えよう。その先駆者として産業をけん引してきたのが、インターネット検索サービスなどを提供する百度(Baidu)だ。

●“チャイニーズ・ドリーム”の象徴

 百度は、李彦宏CEOが2000年1月1日に設立。本社は中国・北京で、海外では日本(東京)を含め9拠点に展開している。社員数は3万4600人。2013年の売上高は319億4400万元(約5356億2100万円)、純利益は105億1900万元(約1763億7700万円)で、現在の株式時価総額は約554億ドル(約5兆6386億円)に上る。

 李CEOは北京大学を卒業後、米ニューヨーク州立大学に留学。その後、現地で就職し、米Dow Jonesや米Infoseekなどに勤務する。1997年には百度テクノロジーの土台となる検索アルゴリズムに関する特許を取得したほか、Infoseekでは、検索エンジンの設計や画像サーチエンジンの開発などに従事した。1999年、ベンチャーキャピタル(VC)から120万ドルの資金調達に成功し、帰国。6人の仲間とともに創業した。当初は北京大学隣のホテルの会議室を間借りしたオフィスだったという。

 百度という社名は、宋時代の詩人である辛棄疾が書いた「青玉案・元夕」の一節にある「千百度」という言葉に由来する。換言すれば、「探し求め、見つかったときの喜び、感動」という意味を表わすそうだ。

 2001年にインターネット検索サービス「Baidu.com」を正式リリースした百度は、2003年に画像検索とニュース検索を機能追加するとともに、コミュニケーションプラットフォーム「百度贴口巴(Tieba)」を立ち上げる。百度贴口巴とは、例えば、「音楽」や「ワールドカップ」、「餃子」など検索キーワードごとにコミュニティーを作成。同じキーワードに関心を持つユーザーが集まり、掲示板形式で対話することができるというもの。中国ではこうしたコミュニティーサービスが人気で、同じく中国のインターネット企業・Tencent(腾讯)のインスタントメッセンジャーツール「QQ」が持つコミュニティー機能も高い支持を得ている。

 そして2005年8月、NASDAQに上場を果たす。公開初日に公募価格27ドルでスタートした取引は122.54ドルにまで高騰。米国証券市場のIPO初日に最多利益を上げた株式の1つに数えられている(2014年5月22日現在、約163.97ドル)。アメリカン・ドリームならぬ“チャイニーズ・ドリーム”の象徴的な存在として、今でも百度は君臨しているのである。

●モバイル志向の強い中国のユーザー

 元々はPC向けにサービスを提供してきたが、上述したように中国ユーザーの“モバイル熱”の高まりを受け、百度も2011年ごろからサービスのモバイル化に本腰を入れ始めた。

 ブラウザで利用する各種サービスのスマートフォン/タブレット端末対応を進めたほか、現在、iOS向けとAndroid向けに数十種類のアプリを用意。検索や地図、オンラインストレージ(百度云)など主要なサービスが中心となっており、ダウンロード数1億を超えてアプリは14個ある。

 現在、モバイルで検索のアクティブユーザーは1日当たり1億6000万人で、中国のAndroidデバイスの85%は百度の検索エンジンをデフォルト設定しているという。収益面では、検索サービスの利益全体のうち約2割以上がモバイルだという。ユーザー数、収益性ともに、今後モバイルの比率が高まっていくのは間違いなく、特にユーザー数については、「2014年中にモバイルがPCを追い抜く」と百度のある幹部は鼻息が荒い。

●本社オフィスの雰囲気はまるで米国企業のよう

 創業以来、百度は北京大学や清華大学の近隣地区である、北京市北西部の中関村に本社を構える。この地区は古くから東京・秋葉原のような電気街として知られているが、それに加えて、今ではIT企業や研究所、ソフトウェアパークなどが集積するハイテク産業特区としての役割を持つ。百度のほか、Lenovo(聯想)、Alibaba(阿里巴巴)、Neusoft、米Intel、米Microsoft、米IBMなど国内外合わせて約2万社のIT関連企業の拠点がある。「中国のシリコンバレー」と言われるゆえんだ。

 現在の百度の本社オフィス棟は2009年11月に完成。地上5万9000平方メートル、地下3万2500平方メートルの土地に高さ30メートルの社屋を建設した。ちなみに、新本社の設計は、北京オリンピックのメイン会場となったスタジアム「鳥の巣」の設計者の所属会社によるものだ。現在、ここに5000人の社員が働く。内部はゆとりある空間設計になっており、オープンエリアには広々とした打ち合わせスペースが点在している。

 エントランスから1フロア上がると、モンゴルの移動式住居であるゲルを連想させる建物が目に飛び込んでくる。これは社員用の休息施設で、ここで仮眠をとったり、更衣室として利用したりする。また社内にはトレーニングジムを完備しており、就業後に社員たちが身体を動かしてリフレッシュするそうだ。

 オフィス棟内を回ると、Tシャツやポロシャツにジーンズ姿の、大学生さながらの若者たちを多数見掛けることができる。社員の平均年齢は26歳前後。一昔前の中国企業のイメージとは程遠い、自由闊達な雰囲気が感じられる。李CEOをはじめとする経営幹部には米国への留学経験者が多く、これも彼らが築き上げた文化の表れだと言えるだろう。

 百度のコアバリューは、「简单可依赖」。シンプルで信頼性が高いという意味だ。サービスのコンセプトとしてもこの点を重視しているが、企業組織もできる限りシンプルにすることを心掛けているそうだ。「末端の社員でも経営層と容易にコミュニケーションを取ることができる。上下関係はない」と同社の広報担当者は力を込めた。

 次回は、百度の“ナンバー2”である李Xin晢CFO(最高財務責任者)へのインタビューから、同社のビジネスにおけるストロングポイントや成長戦略、さらには企業として目指すべき姿などをお伝えしていく。

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