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米HP上級副社長が明かす、「IT投資が少なすぎ」た米HPのIT部門大改革

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/04/27 ITMedia

 ジョン・ヒンショー氏は、米Hewlett-Packard(HP)で2011年から技術部門と総務部門の責任者を務めている。

 ヒンショー氏は両部門を担当する上級副社長として、全社的な組織改革の一環である経営効率の向上を推進している。同氏の目標は、極度に合理化されていたITインフラを全面的に見直して、各業務部門との連携を強化しつつ、これまでと同様にITの一括管理によって得られるスケールメリットも享受する新たなモデルに作り替えることだ。

 HPは現在、暫定的な臨時会長職に就任したラルフ・ウィットワース氏が2013年4月に「至難の黒字転換策」と呼んだ、収益性を回復するための5カ年計画に取り組んで2年がたったところだ。

 CEOであるメグ・ホイットマン氏は、2012年にこの社内戦略の概要を明らかにした際、営業部門が業務支援システムやCRMシステムを活用できていないことが全社的な問題の一因となっていると指摘していた。ホイットマン氏によると、サービス部門では労務管理のシステムも満足に運用していなかったという。

 ヒンショー氏ならびに同氏が率いるIT部門が解決に当たっているのが、このような社内システムの問題である。

●HPの少なすぎるIT投資への対処

 ヒンショー氏には、航空機メーカーの米Boeingや通信事業者の米VerizonでCIOを務めた前歴がある。HPに移籍した同氏は、IT部門への投資が十分ではないことに気づいた。「これに関しては入社時にまず気になった」と同氏は話す。

 ヒンショー氏の前任者は、ランディ・モット氏だった。モット氏が率いるIT部門は、HPが他社を買収統合したことを受けて、データセンターの統合やアプリケーションの合理化などの整理統合を実施して組織のスリム化を図り、最小限の業務を何とかこなすせる体制となっていた。組織再編の影響を受けて、モット氏は2011年に同社を離れた。

 ホイットマン氏が、現在に至るHPの新体制づくりを任されて、最初に同社に迎え入れたのがヒンショー氏だった。「私が2011年にIT部門を引き受けた当時、このチームは予算が少なすぎて、(要求される業務を全てこなすために必要な)組織力が足りなかった。まともな組織にすることもできないというのが課題だった」とヒンショー氏は語る。

 同氏によると、当時のHPの社内ITシステムは、各部門の業務を効率よく進められるモデルにはなっていなかったという。「ものすごく集中管理が進んだシステムだった」と同氏は当時を振り返る。

●業務を中心としたITモデルの構築

 Verizon勤務時代、ヒンショー氏はグローバルCIOとなる前に実務部門内のCIOを経験していた。「VerizonとBoeingで勤務した経験から、CIOはIT部門と実務部門の両方に立てる必要がある」というのが同氏の持論だ。

 HPの以前の組織は、能率が上がりにくい構造だったにもかかわらず、組織を変えたいというヒンショー氏の要望はなかなか受け入れられなかった。IT部門の業務の性質上、他部署とのつながりが薄かったからだ。

 「私が入社する前のIT部門の組織構造は、まず中心的なチームが財務アプリケーションを担当していた。他には、サプライチェーンのアプリケーションを担当するチーム、製造部門のアプリケーションを担当するチーム、全社システムの運用を担当するチームもあった。しかし実務部門との連携は誰もやっていなかった」とヒンショー氏は語る。「業務の重要度によって優先順位を付けようとしても、順位付けの基準に必要な、社内業務全体を見渡して状況を把握できる組織ではなかった」(ヒンショー氏)

 現在のEnterprise Services(ES: 大企業向けサービス)部門(以前はEDSという名称だった)で発生した問題は、そんな組織のアンバランスが原因となった一例だ。HPは2008年に130億ドルでEDSを買収したが、その際EDSのシステムを既存の中小企業向けサービス部門のシステムに統合した。

 「この統合を実行したことによって、部門のシステムからこぼれた機能が幾つかある。その1つが、需要と供給の観点からの労務管理だった。この労務管理の機能は、サービス部門ではとても重要だと誰もが考えるものなのだが」とヒンショー氏は語る。

 しかし当時のHPでは経費削減が最優先とされた。そのころの状況をヒンショー氏は次のように話す。「毎朝目覚めたときに『ES部門の状況はどうなっているのか』などと気に掛ける者が、IT部門内にはいなかった。チームのメンバー全員が毎日、費用削減のことしか考えていなかった」

 その結果、ESチームの労務管理は悲惨といえるほど不適切な運用が続いた。ヒンショー氏はその一例を挙げた。ある顧客向けのセキュリティシステムを担当していた50人のスタッフを解雇することになった。実は一方で、セキュリティに詳しいスタッフを50人必要としている別の顧客がいた。こちらは、それだけの人材を集めるめどが立たず途方に暮れていたという。「こんなふうに、重大な費用の損失、必要以上の従業員の入れ替わり、非効率な状況がよく発生していた」とヒンショー氏は話す。

 このような問題に取り組むために、ヒンショー氏はグローバルCIOとしてレイモン・ベイズ氏をHPに迎え入れた。ベイズ氏は米Kimberly-Clarkから移ってきた。

 「これで、各業務部門とIT部門の連携体制を確立することができた。各業務部門を担当するCIOを置いて、ベイズ氏はそのCIOたちをまとめる立場だ」とヒンショー氏は語る。

 現在同社には、印刷業界ならびに個人利用システム担当のCIO、大企業向けグループ担当のCIO、ソフトウェアグループ担当のCIO、大企業向けサービス担当のCIOと、4人の業務部門CIOがいる。

 大企業向けサービス担当のCIOは、労務管理で需要と供給のバランスに問題があることに気づいた。するとこのCIOはSaaS(Software as a Service)アプリケーションを利用して、労務管理のサポートに必要なシステムコンポーネントを自力で構築した。

 同社は労務管理のために米Compass Workforce Solutionsを展開していて、人事部(HR)はグローバルで米Workdayのサービスを採用している。「このシステムを採用した結果、ESチームの業務の効率が上がってきている」とヒンショー氏は語る。

 またヒンショー氏によると、HPで40億ドルの売り上げを稼ぐソフトウェアグループは、以前はハードウェア部門向けに設計された部門システムをそのまま運用していたが、その後システムに手を加えたという。「ソフトウェア部門を担当するCIOが、ソフトウェアのライセンス管理、コードの管理、従業員のスキルに関する情報の管理など、ソフトウェア部門で重視される要素を組み込む形でシステムを拡張した。ハードウェア部門で要求されるITアーキテクチャとは全く異なる部分だ」とヒンショー氏は語る。

●変化への迅速な対応

 IT部門の組織を再編成し、各業務部門を担当するCIOを設けたことによって、社内ITシステムに対する変更を以前より速く展開できるようになるとヒンショー氏は話す。例えば、HP社内に米Salesforce.comのシステムを導入したときは、5万人のユーザーを抱えるSalesforceシステムの展開を9カ月で完了した。現在は営業部門とITチームが同じグループに所属しているので、これが実現できた。

 営業部門の責任者はヒンショー氏の部下で、実装したシステム内の業務プロセスの要素を管理し、顧客のビューを統一した。「ある顧客についての情報を検索すると、その顧客との過去の取引情報を全て見ることができる。これは新しいシステムを導入して初めて実現したことだ。また、売り上げを計上した際のインセンティブの詳細を決定する機能や、セールスの担当者がインセンティブの情報を確認する機能も全てアプリケーションに実装した」と同氏は語る。

 しかし、CIOが各部門の核となるアプリケーションに責任を持つ場合、全社でグローバルに展開するシステムについてはどうするのか。HPでは現在も、全社共通のネットワーク、インフラストラクチャ、セキュリティを利用している。

 「各部門のCIOは部門内のアプリケーションを担当しながら、同時に社内共通で使用するアプリケーションの管理も手掛けている」とヒンショー氏は説明する。「例えば、大企業向けグループ担当のCIOは全社で展開しているSalesforceシステムを管理しているし、印刷業界ならびに個人利用システム担当のCIOは全社のサプライチェーンシステムを管理している。(HPの全社共通の業務システムは)その社内システムはどの部門の業務と関連が深いかを考慮して、CIO同士で分担して管理している」

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