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脱Accessで作業速度が5倍――ネット専業「じぶん銀行」のデータ活用法とは?

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/06/12
脱Accessで作業速度が5倍――ネット専業「じぶん銀行」のデータ活用法とは?: 「じぶん銀行」はKDDIと三菱東京UFJ銀行の共同出資で設立したネット専業銀行だ © ITmedia エンタープライズ 提供 「じぶん銀行」はKDDIと三菱東京UFJ銀行の共同出資で設立したネット専業銀行だ

 手のひらに銀行を――。「スマホ銀行」というコンセプトを掲げ、銀行の各種サービスをスマートフォンアプリ上で行えるようにしてきた「じぶん銀行」。他のメガバンクやインターネット銀行と異なり、オンラインバンキングへのアクセスのうち、スマートフォン経由の比率が約8割と高いのが大きな特徴だ。

 最近では、キャッシュカードではなく、スマートフォンでATMを利用できるようにしたり、住宅ローンを契約できるようにしたりするなど、モバイル利用を前提としたサービスを展開しており、これらのサービスでしっかりとした収益を上げるビジネスモデルを確立するのが、同行の大きな課題だという。

 どうすれば、より多くのユーザーに、スマートフォンアプリのさまざまなサービスを使ってもらえるか。じぶん銀行が今注力しているのが、アプリを通じたCRMだ。サービスの利用履歴やアクセス履歴、季節性や為替変動といった、さまざまな要因を分析し、ユーザー一人一人のニーズをつかもうとしている。

●商品の増加とともにデータがバラバラに

 しかし、顧客の行動を分析するにも大きな課題があった。商品が増えるに従って、データが社内に散在するようになってしまったのだ。

 「お客さまに最適な提案をするには、さまざまな角度からお客さまを知ることが重要です。しかし、カードローンならカードローン、FXだったらFX、銀行系だったら銀行系という形で、データが基幹システムごとにバラバラに存在していました。サービスをまたがるような分析をするには、毎回CSVでデータを吐き出して、1つにつなげてAccessで回す必要がありました」(じぶん銀行 マーケティングユニット マーケティング部長 井上直樹さん)

 データを一元管理しようと、DWHの導入を考えたのは2014年ごろ。マーケティング部とシステム開発部の両者でプロジェクトを進めたが、基本的にはマーケティング部が主導していたそうだ。IBM NetezzaやOracle Exadataなど、さまざまな製品を検討したが、処理速度やアプリケーションのUIなどが決め手となり、テラデータの「Teradata Data Warehouse Appliance」を採用した。

 システムの構築期間は、要件定義なども含めて9カ月程度だったというが、最も苦労したのは利用するデータの精査や、必要なキー情報の定義といった“仕組み作り”であり、「気が遠くなるような途方もない作業」だったという。

 「まず、行内にどんなデータがあるのかを洗い出すところから始まりました。今回のシステムで何を達成したいのかを考え、必要最低限のデータを検討、議論していきました。銀行内にあるデータは膨大です。単純に全部を放り込むと、情報量だけが増えて扱いにくくなってしまいます。

 一つひとつのテーブルについて、情報システム部門に意味を聞きながら、形式や項目といったデータ格納の仕組みを定めていきました。業務の目線とシステムの目線、この両方をつなげるのに苦労しました。本当に細かい作業でしたね」(井上さん)

 もともと井上さんは前職のヤフーでDWHチームとともに仕事をしていた経験もあり、DWHに関する知識があったという。さらに、システム構築を担当していた情シスが非常に協力的であったのも、プロジェクトがスムーズに進んだ要因だと井上さんは話す。データの説明に加え、よりよいデータ格納に向けて積極的なフィードバックがあったそうだ。

●分析作業は5倍速く、利用者は3倍に

 DWHを導入して、まず効果があったのは分析にかかる時間の短縮だ。Accessで分析していたころよりも4〜5倍速くなったという。

 「DWHを導入してから、作業内容が広がったので単純な比較はできませんが、体感では5倍くらい早くなったと思います。これまでは、昨日と今日の取引や残高を比べたり、1カ月前と比べたりする作業が本当に憂鬱だったんですよ。データ量が増えるとPCがフリーズするし、データサイズの上限もあります。Accessはリソースを食うので他の作業もできませんでしたし。

 分析の途中で追加で必要な情報が出てくれば、またデータの取り込みから始めなければならない。DWHであれば変数をもう1つ加えればいいだけなので、導入してからは、そういったストレスがなくなりました」(じぶん銀行 マーケティングユニット マーケティング部 調査役 冨加見大晃さん)

 自らデータ分析を行うユーザー部門の人間が増えたのも、DWH導入の大きな効果だという。社員約220人のうち、現在は30人程度がDWHを利用してデータを分析しているそうだ。その数は導入前と比べておよそ3倍。特に派遣社員に任せていた分析作業を自ら行うようになった人が多いという。

 「実際に自分たちで手を動かして数字を見て、何か意志決定するという動きは、以前よりも飛躍的に増えているように思います。データ分析を行うときは、個人情報を扱う専用のPCで作業するのですが、DWH導入後は端末の台数が3倍に増えました。それも今は空きが全然ありません」(冨加見さん)

●ユーザーの“相棒”を目指して

 こうしたデータ統合により、2017年3月にCRM基盤が整ったという。その先にあるのは、ユーザーの利用形態に合わせたサービスやメッセージの最適なタイミングでの提供だ。

 じぶん銀行は2016年6月から、ユーザーエクスペリエンスの向上施策「じぶん仕様プロジェクト」を始めており、アプリケーションのリニューアルなどを行っている。お金の動きや予定を知らせるタイムライン機能やアンケート機能を付加し、よりユーザーの生活に寄り添うツールを目指しているという。

 「ようやく仕組みが整ったので、本格的なデータ活用はこれからです。各商品を扱う部署とも連携しながら、ユーザーに最適なタイミングで情報やサービスのオススメができればと思っています。どのレベルでパーソナライズさせるかといったところもこれからですね」(井上さん)

 各商品の担当者とは異なり、井上さんと冨加見さんのミッションは、サービス利用というよりも、アプリも含めたじぶん銀行全体の利用率を高める点にある。どうすれば、各ユーザーにじぶん銀行をより身近に思ってもらえるのか。スケールが大きい話だけに、難しいPDCAが待っているだろう。

 「銀行側からレコメンドをするだけではなく、ユーザーにどうしたら興味を持ってもらえるか、ユーザー側から当行に対して何かアクションを起こしてもらえないかということを考えています。アンケートなどの機能もその一環です。『意外に面白いことやってる』だとか『便利だよね』と思ってもらえて、ゆくゆくはユーザーの“相棒”のような存在になる。それが他行との差別化につながるのではないでしょうか」(井上さん)

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