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自社ブランドスマホで売り上げ増を狙う、中国の大手家電量販店

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/05/03
自社ブランドスマホで売り上げ増を狙う、中国の大手家電量販店: 低価格ながらも虹彩認証機能を備える「U1」 © ITmedia Mobile 提供 低価格ながらも虹彩認証機能を備える「U1」

 中国の大手の家電量販店、国美電器はスマートフォン「U1」「K1」を発表した。家電量販店のスマートフォン市場への参入として、中国では今大きな注目を浴びている。

●手ごろなミッドレンジモデルで消費者にアピール

 国美電器(GOME Electronics、国美)の「U1」と「K1」はそれぞれミッドレンジクラスのスマートフォン。まずはスペックを見ていこう。U1はMediaTekの「Helio P10(MT6755M)」8コアプロセッサを搭載、メインメモリ/ストレージの構成は3GB+32GBまたは4GB+64GBの2モデル。5.5型HD(720×1280ピクセル)ディスプレイに、アウト1300万画素+イン800万画素カメラを備える。バッテリー容量は3050mAhで、ここまで見ると特徴のない製品にも見える。

 しかしU1は指紋認証センサーに加え、インカメラ横に虹彩認証センサーを内蔵している。スマートフォンのロック解除は今や指紋を使うのが当たり前だが、指先をセンサーに乗せるのですら面倒な時もある。虹彩認証であればスマートフォンの画面を一瞬見るだけでロックが解除される。国美は国内各地にある店舗でこの「かんたんロック解除」をデモしながら製品を売り込もうと考えているのだろう。価格も3GBモデルで1699元(約2万6700円)、4GBモデルで1999元(約3万2400円)だ。

 一方、K1はMediaTekの8コア2.3GHzに4GB+64GB、5.2型フルHD(1080×1920ピクセル)ディスプレイ、アウト1600万画素+イン800万画素カメラを搭載した上位モデル。2017年のIFデザインアワードを受賞した美しい本体デザインも自慢の製品である。価格は2699元(約4万3800円)。U1と同じく虹彩認証を備えている。

 どちらも家電量販店が売り出す製品としては、虹彩認証に特徴がある以外は可もなく不可もなく、といった無難な製品といえるだろう。販売の際の強みはやはり国内に多数の実店舗を持ち、そこで製品を説明しながら販売できる点にもある。しかしXiaomi(シャオミ、小米科技)のSnapdragon 835搭載スマートフォン「Mi 6」が2499元(約4万500円)なので、国美のスマートフォンは割高感がある。勝算はあるのだろうか?

 中国信息通信研究院(CAICT)によると、2016年の中国国内の携帯電話全出荷数は前年比8%増加の5億6000万台だった。スマートフォンの出荷数はここ数年伸び数が落ち込んでいるものの、買い替え需要も多くまだまだ市場への参入の余地のある状況といえるだろう。また国産メーカーの比率は88.9%、10台中9台が国産品なのである。つまり中国の消費者は、もはや「海外メーカーだから買う」という状況にはなっていないのだ。

 しかし消費者の購入先を見てみると、全体の4分の1がオンラインとなっている。もちろん残りの4分の3の消費者は通信事業者の店舗や家電量販店で買ってはいるものの、JD.com(京東商場)など大手ECサイトやシャオミなどメーカーのオンラインストアからスマートフォンを買う消費者も年々増えている。

 国美もこの動きを先取りして、家電以外も扱うECサイトを解説している。しかしシェア上位のTmall(天猫商店)やJD.comに売り上げで大きく引き離されている。またライバルの家電量販店、Suning.com(蘇寧易購)の後じんを拝している状況だ。

 国美の2016年の決算によると、営業収入は伸びたものの純利益は前年比73.1%減と、大幅なマイナスとなった。これはVR体験コーナーを設置するなど既存店舗の大規模な更新を行い経費が増えたことが主因ではあるものの、今後も定期的な店舗のリノベーションは必要だ。店舗維持の経費は今以上にかかっていくだろう。そして何よりも、他の量販店にはない、国美ならではの魅力を消費者に伝えていくことが必要だ。

 国美の自社ブランドスマートフォンは、同社ECサイトでの独自セール対象製品としての集客効果を狙える。たとえ自社端末があまり売れなくても、他社製品への呼び水になってくれる効果があれば十分だろう。そう考えると若干割高に感じられる価格設定も、あらかじめ割引販売を前提としたものかもしれない。また店舗では「スマートフォンも手掛ける量販店」という先進性や安心感を消費者に与えることができる。価格以外の面で他社とどう競争していくのか、U1とK1にかけられた期待は大きい。

●MVNO事業で挫折の過去も

 家電量販店にとってスマートフォンは集客効果の期待できる重要な製品だ。店舗の入り口には各社の最新モデルを並べ、その奥に陳列する家電へと導線をつなげる。スマートフォンの販売数はそのまま店舗の売り上げを大きく左右するのである。

 家電量販店が大きく期待したのは、MVNO事業への参入だった。中国では2013年から段階的にMVNO市場が開放され、多くの企業が参入を図った。JD.comは携帯電話の利用料金をポイント換算し買い物にも使えるようにするなど、各社が新たな収益源としてMVNO事業に期待したのだ。国美も早い時期に「極信通信」の名称で参入した。

 量販店のMVNO事業のメリットは、スマートフォンとのバンドル販売だ。中国の携帯電話はほぼプリペイド方式であり、スマートフォン購入時にプリペイドの1回線をついでに契約することも簡単だ。極信通信は安価な通信料を武器にスマートフォンとセット販売し、端末販売数の増加を狙ったのだ。

 しかし中国のMVNO事業は行き詰まりを見せている。2017年2月時点での全MVNO事業者42社の総加入者数は4600万人。100万人を超える加入者を有する事業者は11社のみだ。中国全体の携帯電話契約数は13億3785万で、最大手のMNO、China Mobileだけでも8億5370万人だ。MVNOの利用者はChina Mobile1社と比較しても、わずか5%にとどまっている。

 これはChina Mobile(中国移動)、China Unicom(中国聯通)、China Telecom(中国電信)の3大MNOが大幅な値下げを繰り返した結果である。今や毎月数十元、数百円程度から大手事業者のサービスを受けることもできる。例えばChina Mobileは最低18元(約290円)/月のプランも提供している。MVNOはそれよりも安い料金を掲げており、極信通信の基本料金は8元(約130円)/月だ。

 しかし中国には長年使ってきた携帯電話番号を引き継ぐ番号ポータビリティーは提供されていない。国美の店でスマートフォンを買って極信通信のSIMカードを無料でもらったとしても、使い続けるのは料金差のないChina MobileなどMNOの回線になるだろう。そしてMVNO側も、MNOより安い毎月100円程度の料金では、ビジネスとしてのうまみもない。

 国美の店内には極信通信の契約コーナーもあるが、来客の数はまばらな状況で事業は実質的に失敗した状態だ。スマートフォンの販売コーナーでも以前なら極信通信回線とのセットを勧められたが、最近ではむしろ中国移動などの回線オファーが増えている。

 果たして国美が販売する自社ブランドスマートフォンは国美全体の売り上げにどれくらい貢献できるのか? これが成功すれば、いずれはECサイトも含め自社端末販売の動きが広がるかもしれない。家電量販店が作るスマートフォンの動きに業界が大きく注目している。

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