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菅野美穂と松嶋菜々子、女優として成熟期へ 『砂の塔』『べっぴんさん』それぞれの魅力

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/04 株式会社サイゾー
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 堺雅人との結婚後、妊娠・出産のために女優業を控えていた菅野美穂が二本のドラマに出演して注目されている。一本は連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『べっぴんさん』(NHK)。彼女が演じるのはヒロインの母親役。第一週で病死してその後は娘を見守る形でナレーションでのみの登場となるのだが、今までとは違うしっとりとした関西弁となっており、女優として新しい顔を見せている。  もう一本はTBS系で金曜夜10時から放送されている『砂の塔~知り過ぎた隣人』。菅野は高級タワーマンションに引っ越してきた母親・高野亜紀を好演している。彼女が暮らすタワーマンションは年収に応じて階の高さが決まるという暗黙の了解がありマンション自体が格差社会の縮図となっている。  亜紀はタワーマンションのママ友同士の人間関係に翻弄されながら、何とか子育てに奮闘する。そこに松嶋菜々子が演じる怪しい住人・佐々木弓子や、岩田剛典(三代目 J Soul Brothers)が演じる亜紀の幼なじみの体操教室のコーチを務める青年・生方航平、男と蒸発して行方不明だった亜紀の母親の久美子(鳥丸せつこ)など、一癖も二癖もある人々が物語に絡んでいく。その一方で、グリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」になぞられた子どもの失踪事件(ハーメルン事件)が多発しており、最終的には亜紀の家族を中心としたゴタゴタとハーメルン事件が絡むことになるのだろうが、どこに着地するのかわからない緊張感に満ちている。  本作が放送されている金曜ドラマ枠は山田太一の『ふぞろいの林檎たち』、野島伸司の『高校教師』、宮藤官九郎の『木更津キャッツアイ』といった作家性の強い脚本家のオリジナル作品を放送することでテレビドラマの最先端を走ってきた。近年は湊かなえの『夜行観覧車』や『Nのために』といったミステリー小説を原作とするドラマが多く、時代を代表するような作家性の強いドラマは生まれにくくなっている。そんな中で、本作は原作のないオリジナル作品なので応援したいのだが、湊かなえや桐野夏生の小説や幼稚園のママ友同士の人間関係を辛辣にえがいた『名前をなくした女神』(フジテレビ系)から切り貼りしたかのような既視感はあり、残念ながらオリジナリティは乏しい。  とはいえ、それでも続きが気になるのは、松嶋菜々子が演じる弓子の存在が気になるからだろう。前クールの『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系)の、仕事のできるカッコいい上司役は手垢が付きすぎていてイマイチだったが、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)のようなミステリアスで影のある美人を演じさせたら松島は唯一無二の存在感を発揮する。  今作でも、亜紀の唯一の理解者として振る舞いながら、タワーマンションのすべての部屋を盗聴しており亜紀をどんどん陥れていく姿が不気味でいい。次週予告では、早くも彼女の正体が明らかになるため、松嶋がハーメルン事件の犯人ということはないとは思うのだが、この展開の早さも含めて見逃せない展開となっている。  菅野も松嶋も、90年代後半から数々のドラマで活躍してきた人気女優だ。おそらく現在アラフォーの視聴者にとってはいっしょに年をとってきたという感慨が強いのではないかと思う。筆者は76年生まれで77年生まれの菅野とは年齢が近く、彼女が学生役を演じていた10代の頃からテレビドラマに出ているのを見てきた。そのため、同世代のクラスメイトのように感じていて、いっしょに年をとってきたという気持ちがどこかにある。  女優としての菅野の面白さは、隠しきれない過剰な内面が演技ににじみ出ているところだ。『イグアナの娘』(テレビ朝日系)等の初期の代表作は繊細な美少女としての魅力がアイドル的な人気へとつながっていたが、20歳でヘアヌード写真集を出版したあたりから、過剰な自意識を持て余した大人の女性を演じることが上手い女優へと脱皮していく。朝ドラの『ちゅらさん』(NHK)で演じたヒロインに説教しながらも温かく見守る絵本作家の城ノ内真理亜は、そんな彼女の代表作だが、『べっぴんさん』の落ち着いた語りを見ていると、真理亜ちゃんも大人になったんだなぁと思う。  奇しくも、『べっぴんさん』の主題歌がMr.Childrenの「ヒカリノアトリエ」、『砂の塔』がTHE YELLOW MONKEYの「砂の塔」と、菅野と同じ90年代後半に頭角を現したベテランミュージシャンが主題歌を担当している。 特に「ヒカリノアトリエ」は「CROSS ROAD」や「innocent world」といった初期ミスチルの代表曲のテイストのためか、どこか懐かしく、OPの作り込んだ映像といっしょに毎日見ていると、母親になった菅野が娘に読み聞かせている絵本のような物語に見えてくる。『砂の塔』の亜紀も、母親としての強さが滲み出ており、女優としての成熟を感じさせる。  菅野や松嶋のように、いつの間にか母親役を演じるようになった同世代の女優たちを見ていると、ドラマでは描かれない亜紀や弓子の若い頃が頭に浮かんでくる。こういった見方ができるのもテレビドラマの面白さだろう。(成馬零一)

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