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虫よけ、どれを選ぶべき?誤ると炎症も 海外旅行ではアースノーマットとバポナを

サイゾー のロゴ サイゾー 2014/05/12 Cyzo
Photo © Cyzo 提供

 これからの季節、キャンプにバーベキューと屋外での活動が増えてくる人も多いでしょう。そうなると、虫よけや虫さされ薬が必須になってきます。

 ところで、虫よけは農薬、虫さされ薬は医薬なので、併せて解説されている記事はほとんど見かけません。薬店にいる薬剤師でも、虫さされ薬には詳しくても、虫よけと殺虫剤の区別はつかないという人が多いようです。

 薬店には虫対策コーナーに大量の製品が並び、一体どれを選べば良いのか判断が難しいところですが、上手に虫よけを選べば、害虫に余計な気を取られずに屋外でも快適に過ごせます。

 そんなわけで今回は、虫よけの選び方をご紹介します。

 虫よけは、場面に合わせて使用することが大切です。山の中などで、むやみに薬剤を使用すれば、虫よけ効果を十分に得られないだけでなく、環境に悪影響を及ぼす可能性もあります。

●虫よけの歴史

 その昔、藁葺きの家に暮らしていた時代から、ショウブに虫が寄りつかないことに目をつけ、寝具の下にショウブでつくったゴザを敷いたりして活用していました。また、乾燥させたヨモギや柑橘類の皮を燃やし、その煙で害虫を寄せ付けないようにしていました。

 明治18年、地中海に面するセルビアから除虫菊(シロバナムシヨケギク)が日本に持ち込まれ、虫よけの研究が始まりました。明治38年、日本除蟲菊貿易合資會社が設立され、同社が発売した蚊取り線香が大ヒットしました。この会社が、現在「金鳥」で知られる大日本除虫菊株式会社です。

 除虫菊には、殺虫効果のあるピレスロイド(ピレトリン等の複数の有効成分の総称)という有効成分が含まれ、多くの殺虫剤は、このピレスロイドを発展させたものや、成分を模したものからつくられています。

 ピレスロイド系薬剤は、哺乳類や鳥類にはほとんど無害な神経毒であり、昆虫の生理メカニズムに一致する毒です。ただし、昆虫全般に効くため、例えば、蚊を退治するつもりで蚊取り線香をスズムシやカブトムシの入ったケースの横で焚くと、これらも死んでしまうので注意が必要です。また、熱帯魚やエビ、ヘビやトカゲなどの爬虫類も感受性が高いことが多く、スプレータイプの虫よけをはじめ電気式の据え置き型蚊よけでも悪影響が出ることがあるので注意が必要です。

●塗り薬タイプの虫よけの主成分はたった1種類

 玄関に吊すタイプや網戸や床に塗るタイプについては当連載の記事『キンチョールだけでは全然ダメ! 絶対ゴキブリを出さない害虫駆除』で説明済みなので、省略します。家の中に害虫を入れないという点では、日本にはかなり優秀な商品が出揃っており、数種類併用すると、かなりの効果が期待できます。

 これらは、屋外のキャンプ拠点などで使用しても効果的で、特に網戸用の虫よけをテントなどにスプレーすると、害虫をほとんど寄せつけません。

 さて、今回のメインテーマである、人体に塗るまたはスプレーする虫よけについて言及してまいります。

 実は、肌に塗る虫よけは、ほぼすべての商品の主成分がディート(ジエチルトルアミド)という化合物です。ディートを使用した虫よけの市場規模は、国内の売上高が年間55億円(商品数1400万本)という、一大虫よけ成分です。

 ほかにも、ピレスロイド系なども使えないわけではないのですが、それらは皮膚刺激性が強く、現在はディートに代わる成分はないといえるでしょう。  国内では、ディートを12%配合している商品を医薬品、それ以下の含有量の商品を医薬部外品として分類しています。当然、濃度が高ければ忌避能力も高いのですが、注意も必要です。

 まず、ディート12%の商品としては「サラテクトFA」(アース製薬)、「ムヒ ムシペールパウダースプレー」(池田模範堂)等があります。高濃度商品は屋外での活動時間が長い場合に使用するにとどめることをお勧めします。日本の蚊は、数%程度のディートでも十分に忌避するので、低濃度の商品を低価格で購入し、普段使いすると良いでしょう。

 例えば、屋外に長時間いる場合には12%、短時間の外出時には6%程度の虫よけなどと使い分けることで、肌にかかる負担を減らすことができます。大手薬店がプライベートブランドとして安価な商品を販売していることもありますので、チェックしてみてください。

 ディートの濃度は、パッケージ裏面のラベルに記載されています。しかし、残念なことに、医薬品として販売されている12%の商品以外は、ディートの配合量が不明瞭な商品も多く、医薬部外品の中には数%から11%までさまざまな商品が売られているので、値段が安いというだけで選んではいけません。表示の無い商品は避けたほうがよいでしょう。

 また、日焼け止めと併用する場合は、日焼け止めを先に塗ってから、スプレータイプの虫よけを塗布するのが良いそうです。

 さて、広く使われている有効成分ディートは、大半の人には無害ですが、敏感肌の人には炎症が出ることもあります。また、1歳未満の子供には使わないようにと勧告されていますので、ご注意ください。

●フィトンチットを応用した商品も

 最近は、「ペットにも優しい」とのうたい文句で、天然の植物成分を模した虫よけがじわじわと広がっています。虫よけらしくない「アロマタイプ」とか「バラの香り」などと書かれている商品です。

「殺虫成分だけでなく、さらに余計なモノが入っているのか」と思う人もいるかもしれませんが、これらに使用されているのは、大半の動物や人間の肌にも悪影響を及ぼしにくく、虫に忌避させる効果が高いことから、近年評価されている成分です。フィトンチッドと呼ばれる樹木が放出する香り成分で、人間の中枢神経に作用し、落ち着かせる効果があるといわれています。

 また、コアラの食べ物として有名なオーストラリアの灌木、ユーカリの葉に含まれる成分が極めて高い蚊の忌避効果を持つことがわかっています。特にレモンユーカリの精油は効果が高いことから、商品開発研究が進められています。

 中にはディートと同等、もしくはそれ以上の成分も見つかっており、今後の研究によっては、虫よけの市場も大きく変わっていくでしょう。そうした研究の断片から、それらの精油の成分を化学的に模した商品が売られているわけです。ただし、まだピレスロイド系に比べると、かなり効果が弱いのが実情です。

●海外では役に立たないこともあるので要注意

 ところで、旅行などで海外に出かける際に虫よけを持っていく人は要注意です。熱帯地方では、日本の虫よけでは効果をなさないことがあります。虫よけは、その国の害虫に合わせて有効成分が配合されています。

 特に、西ナイル熱をはじめ、マラリア、デング熱など凶悪な病気を媒介する熱帯の蚊に対しては、日本の虫よけはほとんど効果がありません。主成分は同じディートであることが多いのですが、濃度が違います。日本の蚊は、少量でもディートが肌についているだけで、別のターゲットへと移動しますが、熱帯の蚊は獲物を狙ったら執念で食いついてきます。また数も圧倒的に多いので、日本製の虫よけを塗った程度では多数の蚊にさされるでしょう。

 日本の薬事法では、ディート自体が肌荒れや衣類を溶かしたりする恐れがあることから、12%を超える配合を禁止しており、12%配合の商品すらわずかです。

「なんだ、日本製の虫よけは役に立たないのか」と言うなかれ。海外でも効果のある商品があります。むしろ国外に持っていくべきともいえるアイテムがあるのです。

 まずは、「アースノーマット」(アース製薬)をはじめとする電気式液体蚊取り。タイマーなどの電子回路のないタイプであれば、変換コネクタを使用すれば動作しますが、最近は電池式のものが売られているので、携帯しておくと旅行先の思わぬ環境(ハエの多い台所や不衛生なトイレなど)で役立つことがあります。

 ただし、飛行機内は可燃液体の持ち込みが禁止されているため、手荷物に入れていると没収されてしまいますので、トランクなどに入れて預け荷物として持っていきましょう。吊り下げタイプの殺虫剤、「バポナ」(同)も有効な地域が多いので持っていくと安心です。ちなみに、日本伝統の蚊取り線香は煙が出る分効果が高く、ほとんどの害虫を寄せ付けないことから、海外でも愛用者が多いそうです。

●海外の虫よけ

 ちなみに国内では12%以上のディート配合商品はないのですが、個人輸入で入手は可能です。特に高濃度ディート配合の虫よけは、蚊やダニだけでなくヒルにも高い効果が得られるので、山奥に行くなど、日本製の虫よけにパワー不足を感じている人にお勧めです。

 特に有名な商品は、ウルトラソン社の「ウルトラソン(Ultrathon)」で、アメリカ軍の正規採用装備品であることからも、その性能の高さが伺えます。持続時間も極めて長く、また衣類や靴に塗っておくことでダニやヒルの被害を防ぐ効果もかなり高いと評価の高い薬剤です。

 ただし、これらのディート高濃度製品の使用後は、せっけんなどできっちり洗い落とさないと薬品かぶれを起こしやすいので注意が必要です。(文=へるどくたークラレ/サイエンスライター)

※画像は「Thinkstock」より

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