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被災地で急増 宮城で7割増 細る下請け

毎日新聞 のロゴ 毎日新聞 2014/05/10 毎日新聞

 ◇夜通し作業、賃金不払い…

 建設業労働者の賃金不払いなどに関する労働相談が、東日本大震災の被災地で増えている。宮城県内では昨年、震災前比7割増の242件に上った。各地の労働局などによると、復興特需で利益率の高い工事に業者が集中し、多重下請けによる搾取の構造を生んでいることなどが背景にあるとみられる。膨大な公共投資は被災地に「富」を行き渡らせたのか−−。【加藤隆寛、狩野智彦】

 宮城県南三陸町に住む建設業の男性(61)は昨年末、心臓肥大と診断され緊急入院した。「昼夜を問わない作業が続いてぶっ倒れてしまった」。持病の肺疾患も悪化し、退院後も呼吸器を付けて寝ることを余儀なくされた。「しかも賃金がまともに支払われない。ふざけた話だ」

 男性が昨年9月から入院まで働いたのは、県発注の気仙沼市内の海岸復旧工事現場。昼に組み立てた構造物を潮が引いた夜に設置するため残業が多く、徹夜で朝7時に作業が終わる日もあった。現場経験の長い男性も「これだけ過酷な現場は初めて」と振り返る。

 元請けは震災後、関西から仙台市に本店を移した建設会社。その関連会社が1次、岩手県内の業者が2次、地元業者が3次下請けに入った。男性は10月まで地元業者に雇われていたが、11月からは個人事業主として4次下請けに入る形となった。だが、男性によると、約束通りの額が払われたのは9月分のみ。10月分は約3分の1しか払われず、11月分からは振り込みが途絶えたという。

 元請け会社は取材に「岩手の業者へはきちんと払った。そこから先は下請けに出していること自体知らない」と説明。岩手の業者は「虚偽の出勤簿を提出したため、元請けが勤務認定した分しか払わなかった」と、男性の非を強調した。

 毎日新聞が岩手の業者を取材した3日後の1月27日に11月分が、2月中旬に12月分が地元業者を経由して男性の口座に振り込まれた。男性はそれでも「申請の半分〜3分の2しか払われていない」と“ピンハネ”を疑う。

 被災地では資材や人材の不足が慢性化。特に県外業者は深刻といい、ある宮城県内の業者は「県外業者は競争力が弱く、地元が見向きもしない仕事を無競争で落札したりする。それでも利益を出そうとするから下請けにしわ寄せが行く」と話す。

 入札不調が相次ぐ原因となっている資材や人材の不足は、高い利益率が見込める工事に応札が集中する原因ともなり、これが不調に一層拍車をかけている。民間信用調査機関・帝国データバンク仙台支店の遠峰英利情報部長は「7〜8次下請け業者までおり、そこまで来ると利益を吸い尽くされた後。当初は『復興のため』と赤字覚悟で受注していた業者も、2〜3次下請けの『中抜き』がひどいため参入を回避するようになってきた」と分析した。

 ◇深刻な建設業

 宮城労働局によると、賃金不払いや解雇などに関する県全体の労働相談は2010年が740件だったのに対し、13年は699件と減少傾向にある。だが建設業に限ると、10年の140件(全体の19%)から13年は242件(35%)に急増している。

 福島労働局によると、福島県も同様の傾向にあり、全体の労働相談は10年の627件に対して13年は446件と減ったが、建設業では144件(23%)から194件(43%)に増えた。担当者は「福島には復興工事に加えて除染事業があり、これが数字の変化のベースの一つになっていることは確かだろう」と話す。

 一方、岩手県には特徴的な変化は見られない。全体の相談件数が10年の383件から13年は322件に減る中で、建設業も87件(23%)から57件(18%)に。岩手労働局の担当者は「宮城は復興工事が岩手より先行していて、爆発的に多かった。多重下請けによる同じ波が岩手に来ないか警戒は怠っていない」と言う。

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