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複雑過ぎるスマホ「実質0円」 問題点をあらためて考える

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2016/11/02
複雑過ぎるスマホ「実質0円」 問題点をあらためて考える: 実質0円と一括0円それぞれの月々の支払料金のイメージ © ITmedia Mobile 提供 実質0円と一括0円それぞれの月々の支払料金のイメージ

 2016年4月から、総務省が各携帯キャリアに対して要請している「スマートフォンの端末購入補助の適正化」。中でも特に言及されているのが各キャリアの実質0円販売だ。

 つい先日の11月1日にも、総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」に違反したとして3キャリアに10月7日付けで行政指導したことに対し、3キャリアが再発防止策を提出した。クーポンの組み合わせによっては端末価格が実質数百円になる場合があったとして、それが過剰な値引きであるからやめなさい、というのが大まかな指導内容だ。

 今や総務省の目の敵となってしまった「実質0円」だが、そもそも実質0円とは何のことなのか、その仕組みはどれほど周知されているだろうか。その仕組みを図で解説していく。

●実質0円の端末代金は全然0円ではない

 「実質0円」と類似した言葉として「一括0円」がある。これら2つを比較するとそれぞれの特徴が分かりやすい。次の図は、実質0円と一括0円それぞれの月々の支払料金のイメージだ。

 左側が実質0円で契約した時、右側が一括0円で契約した時の月々の支払料金だ。

 まず単純な一括0円から見ていこう。一括0円の場合、毎月支払うものは通信料金だけだ。端末代金は0円のため、月々の割賦も発生しない。

 一方、実質0円ではどうか。まず下の「端末割賦額」を見てほしいのだが、実質0円での契約の場合、端末代金は(多くは)定価を一括または24回の分割払いで購入する形となり、分割の場合は毎月その割賦額が発生する。

 にもかかわらず「実質」0円というのは、月々の端末割賦額と同額が通信料金から割り引かれるからだ。ドコモは「月々サポート」、auは「毎月割」、ソフトバンクは「月月割」という名前で割引が適用されている。

 これらの割引を24回分合わせると端末の一括価格と同額となり、端末代金が0円に見えることからこれを「実質0円」と呼んでいる、ということだ。つまり、割引は通信料金に対して行われるので端末代金に対して直接値引きとなっているわけではなく、あくまで端末代金は支払っているのだ。

●実質0円は2年以内の解約時にコスト大

 月々の支払い総額が同じならどちらでもいいじゃないか、と一瞬思ってしまうところだが、2年以内の解約時に支払う額が変わってくる。

 真ん中のカラムはひとまず置いておいて、「実質0円」と「一括0円(端末購入サポートなし)」の下側、「契約から2年以内の解約時の支払い総額」を見てほしい。

 一括0円で契約した場合、2年以内の解約では契約解除料(いわゆる2年縛りの違約金)が発生するだけだが、実質0円の契約では契約解除料に加え、(一括で支払った場合を除き)端末代金の割賦残額を支払わなくてはならない。

 つまり実質0円で契約した場合は、2年間の利用を前提としないと十分に割り引きを受けられず、途中での解約は一括0円からの解約よりコストが大きくなるということだ。

●一括0円でも短期解約で追加違約金が発生する「端末購入サポート」

 真ん中のカラム、「一括0円(端末購入サポートあり)」にも言及しよう。

 端末購入サポートなしの一括0円と見比べると、端末代金は同じく0円だ。しかし、12カ月以内の解約での支払い総額がこの2つは異なる。

 端末購入サポートありの一括0円では、12カ月以内に解約すると契約解除料の他に、端末購入サポートの解除料が上乗せされる。

 これは契約者の短期解約を防ぎたいが、端末代金を安くすることで成約率を上げたいキャリア側の思惑から生まれた割引サービスで、これを利用して最近話題になったのがNTTドコモ2016年冬モデルの「MONO MO-01J」だ。

 MONOは販売開始時から機種変更でも一括648円(税込、以下同様)という安さに加え、上質感のあるデザインや最新のミドルレンジ端末と同様のスペックを持ち合わせている。その価格とスペックのアンバランスさから話題になっているAndroidスマートフォンだ。

(関連記事:一括648円の驚安スマホ「MONO」は買いなのか?)

 MONOの場合だと、契約時に648円を支払うことで端末の購入は完了する。ただし、648円という額は端末購入サポートに入った場合の割引価格なので、12カ月以内に機種変更するか、回線自体を解約すると、端末購入サポート解除料として1万5876円が発生する。

 端末購入サポートに入らない場合だと端末代金は3万2400円となるため、割引額と解除料をてんびんにかけるとMONOの場合なら端末購入サポートに入るのが賢明な選択だ。

●実質0円はそんなに安くない

 繰り返しとなるが、実質0円は

・端末代金は分割払い

・2年以内の解約でコストが大きい

 一括0円は

・端末代金が本当に0円

・2年以内の解約時のコストが比較的少ない

・端末購入サポートありの場合は12カ月以内の解約で追加の違約金が発生

 と、それぞれ特徴がある。なんとなく契約時に「0円だから」と思って実質0円で契約してしまうと、2年以内にキャリアを乗り換える、あるいは機種変更をするのが難しくなってしまうのだ(途中で機種変更をすると、本来受けられた残りの月々サポートなどの割引が消えてしまう)。

●総務省は実質0円に「値上げ」で対処

 なるほど、確かに実質0円というのはそんなに安くないし複雑で面倒くさい、これで契約したくはない、というのが消費者として当然考えるところ。総務省の「スマートフォンの端末購入補助の適正化」はここを改善してくれるのだろう、と総務省で検討が始まった当時私は期待していたのだが、ふたを開けてみればその指導内容は「割引額を減らして、実質0円を潜らない価格設定にしなさい」という事実上の値上げだった。

 総務省は、「公平性の観点」や「MVNOの新規参入の阻害」を理由に高額な割引をやめなさいとキャリアに要請しているが、一方でこのガイドラインの趣旨である「利用者にとって現在の契約形態の正確な理解が困難」という問題点に対し、現在までに有効なアプローチは見受けられない。

 このガイドラインは、廉価端末や発売から時間がたった端末の在庫処分に関しては値引きを許してはいるものの、基本的な方針として一括0円はもちろん実質0円も認めないものとしている。

 確かに、値上げをすることで実質2万円や実質3万円といった表記に変わり、実質「0円」ではなくなっている。しかし、そもそも「実質」という表記自体をなくさなければこの複雑さは改善されまい。また、「公平性の観点」から長期利用者向けの割引も新設されたが、消費者側からすればこれもまた契約形態がややこしくなったという印象のほうが大きい。

 値段は上がる、複雑さは変わらない(あるいはもっと複雑に)、という現状に不満を持つ消費者は私だけではないだろう。このガイドラインの本来の目的であるはずの「利用者の料金負担の軽減」と、実質0円など正確な理解が困難な契約形態の解決を迅速に実現してほしいと願うばかりだ。

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