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話題に事欠かなかったMicrosoftとWindowsの2016年

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2016/12/30
話題に事欠かなかったMicrosoftとWindowsの2016年: Windows 10の無料アップグレードキャンペーンは7月29日に終了。Windows 7/8.1ユーザーを強引にWindows 10へ誘導するアップグレード施策は問題となった(写真は8月2日配信の大型アップデート「Anniversary Update」) © ITmedia PC USER 提供 Windows 10の無料アップグレードキャンペーンは7月29日に終了。Windows 7/8.1ユーザーを強引にWindows 10へ誘導するアップグレード施策は問題となった(写真は8月2日配信の大型アップデート「Anniversary Update」)

 2016年も残りあとわずか。本連載はWindowsを中心として、Microsoftの最新動向を追い続けてきたが、年末らしくこの1年をいくつかのトピックに分けて振り返ってみよう。

 振り返りにあたっては、1月3日に掲載した記事「2016年のMicrosoftで注目したい5大トピック」(以下、年始記事)をもとに、そこでの予想が当たったのかどうかも合わせてチェックしていく。

●(1)Windows 10の強引なアップグレード施策でシェアは伸びた?

 MicrosoftとWindowsの1年で最も大きなトピックは、「Windows 10アップグレード狂想曲」だった。

 Windows 10の一般公開から1年が経過した2016年7月29日に、Windows 7/8.1からの無料アップグレードキャンペーンが終了するのに合わせ、巻き取りを図ったMicrosoftがこれらのユーザーに対して半強制的なアップデートをあの手この手で仕掛け、トラブルを巻き起こしたことは記憶に新しい。

 年始記事では「2016年を通してWindows 10のシェアを20〜25%まで引き上げられれば上出来かもしれない」と予想していたが、当時はもちろん強引な無料アップグレード推進策が繰り広げられているわけではなかった。それでは、なりふり構わずWindows 10へユーザーを誘導したことで、そのシェアはどこまで伸びたのだろうか。

 NetMarketShareが公表している11月時点でのデスクトップOSシェアを見ると、トップはWindows 7で47.17%、次点がWindows 10で23.72%、次がWindows XPで8.63%となっている。

 NetMarketShareの正確性については過去記事で触れているが、目安の1つにはなるだろう。同じくNetMarketShareで過去のデータと比べてみると、Windows 10のシェアは1年前の2015年11月時点で9%、無料アップグレードキャンペーン終了前の2016年7月時点で21.13%だった。

 そこから11月までの4カ月で2.6%ほどシェアは伸びており、恐らくMicrosoft内部でのデスクトップOSシェアの目標値には到達していることだろう。筆者としても悪くない水準と言える。

 さて、本当の問題はここからだ。本連載でも度々触れているが、Windowsには「2020年問題」が存在する。その意味は「Windows 7の延長サポート終了が2020年1月」にやって来るということだ。つまり、Microsoftは現時点でなおWindowsのシェアの半数近くを占めるWindows 7を今後3年、いや実際にはより短い期間で、Windows 10へと巻き取っていかなければいけない。

 コンシューマー市場については無料アップグレードキャンペーンが終了し、今後大きく数字が動く可能性は低いため、Windows 10プリインストールの新製品をユーザーが購入することで徐々に移行が進むことに期待するしかない。2016年後半にWindows 10のシェアが若干伸びたのも、こうした新規ユーザー(実際にはPC買い換えユーザー)が増えたことに起因すると考える。

 今後、年率3〜4%程度のペースでこうしたユーザーがWindows 10に移行すると、2020年1月時点では33〜35%程度に達する。筆者の予想値ではあるが、いわゆるコンシューマー的な用途でPCを利用するユーザーは全体の4割強程度と考えているので、8割以上はこの時点でWindows 10に移行済みという状況になるのではないだろうか。残りは、純粋に企業用途のいわゆるエンタープライズ市場でのシェアであり、今後順次移行に向けた施策を続けていく必要がある。

 それでは、PC市場全体でWindows 7とWindows 10のシェアが逆転するタイミングはいつ到来するのだろうか。同じくNetMarketShareのグラフの傾きだけから算出すれば「2年以内」となる。しかし、既にWindows 10の無料アップグレードキャンペーンは終了しており、これ以上の起爆剤は期待できない。

 Microsoftは2016年1月に、Skylake搭載PCでの旧OSサポートに有効期限を設け、それより後の世代のプロセッサではWindows 10のみサポートすることを発表したが、ユーザーだけでなくOEMメーカーからも大きな反発を受けたことで、これを撤回したという経緯がある。

 2017年以降もOSの移行を巡るMicrosoftとユーザーの駆け引きは続くことになりそうだ。Windows XPのとき(いわゆる2014年問題)ほどではないものの、Windows 7のサポート終了においても似たような問題は再現される可能性が高い。

●(2)計画が縮小されたWindows 10 Mobileと今後

 年始記事では「Windows 10 Mobileの状況は厳しいながらも、エンタープライズ市場とSIMロックフリー市場での躍進に期待」と書いていた。

 Microsoft自身はスマートフォン戦略における焦点をAndroidやiOSに絞りつつあり、エンタープライズ市場に注力する一方でコンシューマー市場からは距離を置きつつある。

 純正スマートフォン「Lumia」の事業を一気に縮小したことは、決断の素早さに驚いた反面、取り残されるサードパーティーやユーザーの今後が心配になった。しかし逆に、今後Windows 10 Mobileを導入するユーザーはこうした情勢を踏まえてなお導入を決断したということだ。Microsoftからのメッセージが早めに出たことは、これらユーザーの判断材料につながるという点で評価している。

 1つ予想を外したのは「SIMロックフリー端末」の市場に関する考察だ。日本国内外ともに、サードパーティーのWindows 10 Mobile端末市場への参入はSIMロックフリーが大きな目玉になると考えていたが、これは特に「ミドルレンジ以下の比較的安価な端末」でシェアの躍進が期待されるという部分に由来する。

 しかし実際には、国内外ともにWindows 10 Mobileの新製品投入は先細っており、直近のトピックはハイエンドクラスの「HP Elite x3」が投入されたことくらいだ。SIMロックフリー端末市場そのものは主に中国系メーカーが良質なAndroidのミドルレンジモデルを逐次投入することで2016年に大きく盛り上がったが、Windows 10 Mobileの場合は逆にミドルレンジ以下が下火になりつつあり、逆にハイエンドが目立つ。

 携帯キャリアの販売ルートを持たないハイエンド端末の流通は日本国内では非常に厳しく、これが大きなマイナス要因として作用していると考える。その意味で、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンは今後もあまりシェアを伸ばすことは期待できない。

●(3)Surface Bookに続く新ハードウェアが登場

 年始記事では「Surface 3、Surface Pro 4、Surface Bookの新モデルは2016年には登場しないか、内容的に比較的小幅なアップデートにとどまるのではないだろうか」と予想していたが、実際にその通りとなった。PC系の製品については、Intelの最新プロセッサ投入の端境期にあたり、他と差異化した製品を打ち出しにくい事情がある。

 また、「Surface mini」のような新しい小型デバイスや、最新SoC(System on a Chip)を搭載した「ハイエンド版Lumia」が投入されないというのも予想通りだった。モバイル向け製品については、Microsoftの戦略変更による影響が大きい。Microsoftに新型のモバイル向けデバイスを期待していた人々は、2017年春以降のOSアップデートとともに登場する新製品群を待つ必要がある。

 一方、予想外だったこともある。ハードウェアに関してMicrosoftを称賛したいのは、「PCにはまだ可能性がある」ということを自らの新製品で示してくれた点だ。長らくうわさとなっていた「デスクトップ版Surface」こと「Surface Studio」と新しい入力デバイス「Surface Dial」の登場は、多くの人々に驚きをもって迎えられた。

 米国でこの発表イベントが開催された10月26日(現地時間)、筆者はちょうどラスベガスに出張中だった。ホテルの回線事情が非常に悪いことから、取材先のイベント会場のプレスルームに夜明け前からこもってストリーミング中継を視聴していたが、苦労して見たかいがあった発表内容で興奮した記憶がある。

 同日、2017年春の一般向け提供が見込まれる「Redstone 2(RS2)」ことWindows 10の次期大型アップデートが「Creators Update」であることも発表され、翌週に米カリフォルニア州サンディエゴで開催されたAdobe Systemsのクリエイター向けイベント「Adobe MAX」での発表内容と合わせて、クリエイター向けツール市場でもWindowsがその中心であることを誇示するかのようなものとなった。

 ハードウェアそのものにも魅力があるが、真に称賛すべきは「WindowsやPCが(クリエイターにとって)まだまだ魅了的なプラットフォームである」というメッセージを出すことに成功した点だ。

●(4)HoloLensとWindows Holographicの可能性

 Windows 10のCreators Updateは、単なる大きめのOSアップデートではなく、それ自体がMicrosoftのMR(複合現実)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)における戦略を担う最初の一手であることにも注目したい。

 年始記事では「Microsoftは2016年の1年を通して、この技術(HoloLens)をプッシュしていくだろう」と書いたが、実際にWindows 10搭載のMR対応ヘッドマウントディスプレイ(HMD)である「HoloLens」はその登場から注目を浴び、日本上陸が間近という現在まで主に特定用途向けでの活用が進んだ1年だった。日本でもいよいよ2017年1月18日より順次提供が始まる(税込33万3800円から)。

 しかし、HoloLensはコンテンツ的にもデバイス本体の価格的にも一般ユーザー向けではない。WindowsそのものをVRのプラットフォームへと昇華すべく進めているのが、HoloLensでも使われている「Windows Holographic」の仕組みだ。

 Windows Holographicは、Windows上でVRの世界を体験するための仕組みで、一定スペック以上のPCであればサードパーティー製の低価格なHMDを接続して誰でも気軽にこの世界を楽しめる。

 情報の一部は12月に開催されたイベント「WinHEC Shenzhen/Taipei」で公開されたほか、Windows Insider Program参加者にはPCが要求スペックを満たしているかをチェックし、実際にデモの一部を体験できる「Windows Holographic Shell」の提供が始まった。

 このように、VR/ARがWindowsの世界を中心に盛り上がりつつある。「Oculus Rift」や「PlayStation VR」、そしてGoogleやSamsungによるスマートフォン装着型HMDが先行しているこの市場だが、間口を広げるという意味ではWindowsの影響力にかなうプラットフォーマーはないだろう。

 これまで先行プラットフォームで培ってきたノウハウやコンテンツをあらためてWindowsに提供することで、VRへの新しい入口にする……という流れが2016年における大きなトピックだ。

 またWindows自身も変わりつつある。特徴的なのはHoloLensとWindows Holographicの登場に合わせて、Windowsの新しいUI(ユーザーインタフェース)の世界を模索している点で、「Project NEON」というキーワードが出てきている。

 このプロジェクトが形になるのはまだ先だろうが、2017年春のCreators Update、そして秋に提供されるとみられる「Redstone 3」という年2回の大型アップデートを経て、Windows 10とVRの世界がUI面で融合してくるのかもしれない。2017年はこの部分に引き続き注視したい。

●(5)Microsoftはクラウドカンパニーになれたのか

 年始記事では「Microsoft決算に注目」と書いていた。これが意図していたのは、MicrosoftがOEM経由のOSライセンス販売依存から脱却して、Office 365を含むクラウド事業へ2016年内にどれだけシフトできるのか、ということだ。

 Microsoftは10月に同社会計年度で2017年度第1四半期(2016年7〜9月期)の決算を発表しているが、事業区分別に前年同期比の売り上げを見ると、「Productivity and Business Processes」が6%増、「Intelligent Cloud」が8%増、「More Personal Computing」が2%減となっている。

 大まかに言うと、Officeを含むビジネスアプリケーション群がProductivity and Business Processes、Windows Serverを含むクラウドソリューションがIntelligent Cloud、それ以外のPC OSライセンスを含む個人向け事業がMore Personal Computingの内訳だ。つまり、クラウドとOffice事業の売り上げが伸びたことを示している。

 ドル高の影響による売り上げの減少は2017年度第1四半期にも影響を与えており、ドル高がより進むと予想される第2四半期ではさらに減少が見込まれる。しかし、Windowsからクラウドへのシフトが着実に進みつつあるのは確かだ。少しずつではあるものの、2020年ごろにはより顕著になって業績に現われているはずだ。

 先ほど「VR/ARが盛り上がった2016年のWindows」と紹介したが、筆者の視点では実際にこれらの分野が本当に盛り上がってくるのは2017年以降のことで、2016年は「エンタープライズとクラウドの年」だったと考えている。

 2016年にはWindows Server 2016が正式にリリースされたほか、Microsoftとしては過去最大規模となるプロフェッショナル向けソーシャルネットワーク「LinekedIn」の2.8兆円での買収が完了など、今後につながるいくつか重要なトピックが出てきている。

 この辺りの盛り上がりは、9月末に米ジョージア州アトランタで開催されたイベント「Ignite 2016」のレポートでも紹介した。クラウドを利用したAI Botの仕組みはビジネス事情も大きく変化させる可能性を秘めているなど、2017年以降に同社の中核となりそうな事業やサービスが2016年には多く発表されている。

 後で振り返ってみて「2016年はMicrosoftの方向性を決定づけた年」と言われるようになるかもしれない。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

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