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選べないメンバーで最強チームを作るには

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/08/17 07:00
選べないメンバーで最強チームを作るには: 【その他の画像】 © ITmedia エンタープライズ 提供 【その他の画像】

 「抵抗勢力との向き合い方」を解説する連載も、ついに今回が最終回。最後は「メンバーを選べない状況で強い変革チームを立ち上げる」コツについて解説したい。

 前回は、抵抗に強いチームの“集め方”を解説した。しかし、チームメンバーは自由に選べないことも多い。よくあるのは、プロジェクトのメンバーも期間も、おおむね上層部が決めた状態で、プロジェクトリーダーやメンバーに話が降りてくるケースだ。

 こうなるとメンバーは選べない。決められたメンバーをいかに1つにし、強いチームをつくっていくかが重要になるが、それに失敗するとチーム内に抵抗勢力が現れ、空中分解する恐れもある。そんな事態に陥らないための手法を2つ、紹介しよう。

●『抵抗勢力との向き合い方』からエッセンスを紹介

1. 抵抗勢力との向き合い方 〜予告編〜

2. 抵抗とは何か? 〜抵抗は悪ではない、むしろ歓迎せよ〜

3. 隠れた抵抗を見逃すな 〜隠れた抵抗こそ全てのカギ〜

4. 表に出た抵抗に対処する 〜2つのズレを解消せよ〜

5. 頑固な抵抗に対処する 〜7つの常とう手段を総動員〜

6. 誰を巻き込むべきか 〜チーム編成の極意〜

7. 強い変革チームを立ち上げる 〜対症療法ではなく、根治治療で抵抗と戦う〜

●1. ノーミングセッション

 私たちがコンサルティングチームを組むときや、クライアントのメンバーと1つのチームをつくるときに必ず行うのが「ノーミングセッション」だ。

 一般に、新しく組織されたチームは、単なる人の集まりにすぎない。最初は互いに手探り状態が続き、組織として機能するようになるには時間がかかるものだ。

 チームがつくられていく過程を示したものに「タックマンモデル」というものがある。

1. フォーミングステージ……人が集まっただけの段階。互いを知らず、共通の目的などを模索している段階

2. ストーミングステージ……互いの理解が進んで、考え方の違いや意見の衝突が表出する段階

3. ノーミングステージ……価値観などが統一され、役割分担がしっくりとしてくる段階

4. パフォーミングステージ……メンバーが互いに補完しあって、「1+1」が「3」にも「4」にもなるような状態

 このモデルのポイントは、“どんなチームも必ずこのステージを経る”ということ。少しでも早く「フォーミング」や「ストーミング」の段階を抜けることが成果につながるため、素早く「ノーミング」にたどり着くためのセッションを行う。それが「ノーミングセッション」である。

 ノーミングセッションではまず、

・なぜこのプロジェクトをやる必要があるのか

・何を達成するためのプロジェクトなのか

・どう進めるのか

・なぜこのメンバーが選ばれているのか

 などを共有する。ここまでは実施している方も多いだろう。

 しかし、これだけではあまりに当たり障りのない内容で、ストーミングステージを抜けるには足りない。そこで、ケンブリッジではさらに、

・自分の強み/弱み

・好きなこと/嫌いなこと

・パフォーマンスが上がること/やる気になれないこと

・懸念(プロジェクトに対する懸念や不安)

・抱負(どんなプロジェクトにしたいか)

・チームメンバーに期待すること

・モヤモヤしていること

などをぶっちゃけて話し合う。これがいい。ここまで踏み込んで話すからこそ、自分の強みを最大に生かすために、または弱みを補完してもらうために、チームが協力しやすい状態がつくれるのだ。

 それに、このセッションはけっこう場が盛り上がる。

・「実は私、気が短くて、結論が見えない報告は嫌いなんです」

・「なるほど、怒られないように結論から話すようにしますね!」

・「まずいなー。僕、話が冗長ってよく言われるんです。遠慮なく指摘してくださいね」

といった具合だ。これで互いの心理的な壁もだいぶ壊れる。

 また、プロジェクトに対する懸念や不安が、この時点で明らかになるのも利点だ。

・「そもそも取り組みの目的がよく分からない」

・「進め方がよくないと思っている」

・「XXさんがこのチームに入ってないのはマズイと思う」

などという会話が出てくる。

 このタイミングで本音で話しておくと、その後が全然違う。スムーズなコミュニケーションがとれるようになり、何より「言いたいことは言っていいんだ」というマインドがセットされる。

●2. ゴールコンセプトを考える集中討議

 チームを1つにするには、「集中討議」というやり方もお勧めだ。

 集中討議とは、要するに合宿のこと。泊まるのが理想だが、1日缶詰で討議するのでもいい。本音で議論し、「このプロジェクトで本当に目指すべきゴールは何か?」「どんなコンセプトを大事にするのか?」を徹底的に話し合う。議論自体は2日程度の短い期間だが、これがあるのとないのでは、天と地ほどの開きが出る。

 私たちが集中討議をリードするときは、大きく次の2つのパターンに分類される。

パターン1:「課題ぶちまけ型」の集中討議

 プロジェクトとしてやりたいことが全く定まっていないケースや、メンバー間の立ち位置がバラバラで課題認識が大きくズレているケースなどは、まずメンバーが課題をぶちまけるように仕向けることが多い。1つ事例を紹介しよう。

 ある精密機器メーカーの全社改革プロジェクトは、さまざまな部署から均等にメンバーを出してもらってプロジェクトを進めていた。ただ、このメーカーは数社が合併してできた会社だったことから、20人近いメンバーは他の部署の業務や問題をほとんど知らなかった。

 同じ部署の20人でもバラバラなことを言い出すのが常なのに、このときは、全く違う部署からの20人。しかも、自分のやってきたことに自負のある偉い人たちばかりだ。

 全社プロジェクトに関わったことのある方はイメージできると思うが、この状態でチームを1つにして、方向性をそろえるのは至難の技である。

 このときは、2日間かけて集中討議を実施した。20人のメンバーを2つのグループに分けて、半日かけて課題のブレインストーミングをしたのだ。付箋に課題を書き出しては、発表して壁に貼っていく、

・「ウチの部署でも、まったく同じ課題があるよ」

・「そんなことに困っていたのか?」

・「だいぶひどい状況になっているんだな……」

・「それは、少し見方が偏っていると思うなぁ、ウチの部署からみるとむしろ逆で……」

などというやりとりが自然と出てくる。互いの所属部署の事情や、どんなことを考えているのかを知らないのだから当然だ。この作業が、互いを理解し、立場を理解し、困っていることを理解することにつながる。

 議論されていることが事実なのかはよく分からない。裏付けデータがあるわけではないが、むしろそれでいい。メンバーが今、この瞬間に感じている課題がぶちまけられることに価値がある。

 このときは、そうやって出た課題を2チーム間で共有し、壁一面にマッピングした。写真のように、まさに“壁一面の”課題群となった。

 この後さらに、各自が「解決すべき重要な課題だ!」と思うものにシールを貼り、なぜその課題を選んだのかを話してもらった。ここまでやると、見解の違いが明確になってくる。

 当然、1つの統一見解にたどり着くわけではない。それでも、考えていることがそろってくるのだ。実際、3つほどの大きな課題がピックアップされ、その後のプロジェクトの柱となっていった。

 このときの集中討議後の参加者のコメントを紹介すると……

「それぞれの部署はミッションが全く違うが、互いに悩んでいること、困っていることがよく見えた」

「これまでコミュニケーションは多くなかったが、思った以上に同じ課題で困っていることが分かった」

「合宿を2日間やると聞いたときは「無理だ」と思ったが、今は、本当にやってよかったと思う」

 20人のバラバラだったチームは、こうして見事にまとまっていったのだ。

パターン2:「そもそも論討型」の集中討議

 一方、やりたいことや検討のテーマがだいたい見えてきている場合、そのテーマに沿った“そもそも論”を戦わせるがお勧めだ。

・「グローバル対応は何ができればよしとするのか」

・「真の顧客は誰なのか」

・「事業の柔軟性とは何か」

 これらは皆、いろいろな変革を始めたときに議論した“そもそも論”だ。このレベルの抽象的な話は、プロジェクトが進展するとなかなか議論している余裕はない。どれだけ議論しても、具体的な解決策にたどり着けないからだ。

 しかし、何も決まっていないプロジェクトの初期段階でこういう話をしていると、互いが大事にしている価値観が理解できたり、目指すべき方向や制約が整理できたりしてくる。

 これが変革のゴールやコンセプトの芽になる。“そもそも論”に戻るのは、一見遠回りに見えるが、いつかは通らなければならない道なのだ。

ゴールと主要成功要因を設定する

 どちらのパターンでも、集中討議の最後には、ゴールについて話し合う。

 近年、ゴールが全くないプロジェクトは少なくなったが、「取りあえずゴールはつくったけど、つくったっきり全然使ってません」というひどい扱いを受けているプロジェクトゴールはまだまだ多い。

 ゴールをつくるのは、チームの価値基準を一致させるためだ。悩んだときのよりどころとするために、ゴールはある。

 ところが、ゴールだけだと、どうも抽象度が高い表現になりがちだ。

・「201X年までに新基幹システムをリリースする」

・「事務業務生産性を30%向上させる」

といったゴールは分かりやすく、明確なゴールだが、価値判断のよりどころとするには、ちょっと弱い。

 これを補完するため、ケンブリッジでは、ゴールとセットで「主要成功要因」を設定している。

 主要成功要因とは、ゴールを達成する上で絶対に外せない要素のことである。言い換えると、主要成功要因が実現できなければ、ゴールを達成したといえないものだ。

 主要成功要因は、3〜5つ程度に絞って設定するのがいい。

 先ほどの精密機器メーカーの事例に戻ろう。このときは、集中討議を通して、「いくら基幹システムができても、データがぶつ切れのままだったら何の意味もない」「顧客ニーズに答えられなくなってしまっては、元も子もない。ニーズに柔軟に応えるのは当社の大事な差別化要素だ」といった議論を重ね、大事にすべきことを主要成功要因に落としていった。

 そして作られたのが、こんなゴールと主要成功要因だ。

ゴール: 「201X年までに新基幹システムをリリースする」

主要成功要因:

・上流から下流までデータが一気通貫で流れること

・2重入力転記作業が撤廃されていること

・顧客ニーズに対応できる自由度があること

 重要なのは、主要成功要因がゴールより一段、具体的な状態で書かれていること。これをつくるのは価値観を合わせる作業に等しい。時間もかかるし、難しい作業であるが、一体感のあるチームを作るためには、絶対に必要なことである。手を抜かずに、しっかり議論しよう。

●まとめ

 チームの立ち上げ期には、腹を割って話す時間が必要だ。今回紹介したノーミングセッションも、集中討議による議論も、主要成功要因作りも、全て互いに腹を割って議論するための工夫でもある。

 「ただでさえ忙しいのに。そんなことを悠長にやっている時間はない」と思う人もいるだろう。だが、意思決定や合意形成が難しいプロジェクトであればあるほど、最初に時間をかけてチームを1つにしたいところだ。後に内部から抵抗が生まれて、空中分解することになるのを避けるためにも。

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