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部下がついてこない上司には別の役割を ヤフーが語る「働き方改革の前にすべきこと」

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/08/14
部下がついてこない上司には別の役割を ヤフーが語る「働き方改革の前にすべきこと」: ヤフー コーポレートPD本部 本部長を務める湯川高康氏 © ITmedia エンタープライズ 提供 ヤフー コーポレートPD本部 本部長を務める湯川高康氏

 2016年、週休3日制の導入を目指すことが報道され、話題になったヤフー。最新技術を駆使したサービスを次々と生み出している点などが評価され、経産省と東証による「攻めのIT経営銘柄 2017」にも選ばれた同社は、働き方改革とイノベーション創出の両立に本気で取り組む企業の1社だ。

 しかし、今でこそ爆速で次々と新サービスを生み出しているヤフーだが、同社には大企業病に陥り、スピード感が停滞してしまった過去がある。

 停滞という病から立ち直り、再び攻めの姿勢に転じたヤフーの社内ではどんな改革がなされていたのか――。コクヨ主催のワークスタイル改革セミナーで語られた、同社の取り組みを紹介する。

●本社移転を機に新しい働き方を促進

 セミナーの基調講演に登壇したヤフー コーポレートPD本部 本部長の湯川高康氏は、14年前に同社に転職し、人事を担当している。“働く環境は生産性に大きく影響する”ということから、オフィスファシリティ部門も湯川氏の配下にある。

 湯川氏の最近の大仕事は、2016年10月のオフィス移転だ。移転の3年ほど前から新オフィスのコンセプト作りに着手していたという。

 これからの働き方はどう変わっていくのか――。社員が社外の有識者とセッションを繰り返しながら案を練り、経営陣に向けてプレゼンを行った後、「グッド・コンディション」「オープン・コラボレーション」「ハッカブル」という3つのコンセプトが決まり、それぞれ次のような形でオフィス環境に反映された。

グッド・コンディション

 同社の競争力の源泉は人と情報であることから、社員のコンディションを環境面からサポート。空調は各エリアで調整でき、畳やマッサージチェアが置かれた休憩スペースの他、入居するビル内にクリニックも設置している。

オープン・コラボレーション

 社内外とのコラボレーションのきっかけとなるよう、「LODGE」というコワーキングスペースを、現在、無料で開放している。また、社員同士の接点を増やすために、執務エリアを全館フリーアドレスとし、デスクをジグザグに配置する、オープンなミーティングスペースを豊富に用意する、役員フロアは上層階ではなく最下層に位置し、普段は役員もオープンスペースで執務するなど、さまざまなしかけを施している。

ハッカブル

 常に“挑戦者”の気持ちでいるために、オフィスも完成形ではなく、進化し続ける場と位置付けている。

●働き方の自由化を進め、社員のパフォーマンスを最大化する

 座席のフリーアドレス化など、ヤフーが社員の自由度を高める背景には、働き方の選択肢を増やし、社員の才能と情熱を解き放つ」という人事のコンセプト、そして「会社と社員はイコールパートナー」という考え方がある。会社は社員を支配したり管理したりするのではなく、活躍できる舞台を作る。一方、社員はその舞台を生かし、会社への貢献という責任を果たすという関係だ。

 どれだけ忙しくても、プライベートで遊びを楽しむ気力や余裕があれば大丈夫。そうでないときは、心や体が疲れている兆候――。そんな実体験も交え、「いきいきと働くためには、“充実した生活を送れている”ことを実感できるかどうかが、とても大事な指標の1つ」と湯川氏は話す。仕事の内容だけでなく、心身の健康や生活の充実、人間としての成長といった、「社員それぞれの幸せを左右する要素にまで目配りしよう」という意思が感じられる。

 しかし、単に自由な働き方をできるようにすれば生産性が上がるというものではない。湯川氏も、「形だけのフリーアドレス制や働き方の多様化ではうまくいかない」と指摘する。同氏によれば、働き方の自由度が増しても組織としての機能が損なわれず、成長し続けていられるのは、5年前から続けている「1on1ミーティング」(以下1on1)があるからだという。

●社員をやる気にさせるポイントは“正しく見る”こと

 1on1とは、上司と部下が定期的に1対1で話をする制度だ。現在ヤフーの管理職は、部下1人につき週に1回30分程度、その時間を取ることになっている。上司と部下がきちんと話す時間を設けることで、上司は部下のコンディションやモチベーションを把握でき、部下は仕事の成果やうまくいっていない点について、“自分の言葉で”振り返ることができる。

 湯川氏はこれを、「社員を正しく見る仕組み」だと説明する。やる気があって一生懸命働いている人でも、「上長が正しく見てくれない」と思うと、頑張る意味を感じられず無気力になってしまう。

 「人事を担当していると、人事制度や評価制度で社員のモチベーションを上げたいと思ってしまうところがあります。でも、『この会社、もしくは自分の上司は、ちゃんと正しく見て評価してくれているんだ』ということが前提にあった上での仕組みでないと、いくら優れた制度を入れても、絶対に機能しないんです」(湯川氏)

 1on1をスタートした5年前、ヤフーは自社サービスのスマートデバイスシフトが遅れて優秀な社員が辞めていき、社員のモチベーションが下がっている状態だったという。その状況を打破するために取られた策が、「リーダーシップからフォロワーシップへの転換」だった。

 それまで同社は、強烈なリーダーシップを持つ個人が会社の成長をけん引してきた面が強かったが、変化の激しいネットの世界でさらに事業を成長させるためには、個の力だけに頼るのは限界だったという。そこで、チームの力でパフォーマンスを上げていく方向に舵を切った。

 フォロワーシップ重視の方針を伝えるため、人事が最初にやったことは、全メンバーに対する「あなたは今の上司についていきたいですか?」という、シンプルなアンケート。その結果、「ついていきたい」と思われていなかった上司には役割を変わってもらったのだという。上司の側からすると相当キツイだろうが、ヤフーでは“役職はあくまで配役で、それだけが目指すべきキャリアではない”ということは、よく伝えたという。この施策は会社の本気度を伝えることになり、社員にはとても好評だったそうだ。

 こうして新たな体制でスタートを切ることになったとき、フォロワーシップを根付かせるために取り入れられたのが1on1だ。

●働き方改革の推進は、まず人事から

 部下一人ひとりと1週間に1回30分、必ず話をしてください――。そう、マネジャーたちに話すと、最初は「そんなことやってる暇はない」と反発する人も多かったという。それでも人事部は「やってください」と言い続け、部下の側には、その内容を問うアンケート調査をした。

 「質問は4つ。

・上司は毎週あなたのために、ちゃんと1on1をやってくれていますか?

・そのときに上長は、あなたの話をちゃんと聞いてくれていますか?

・その時間は、あなたのキャリアにとって有用な時間になっていますか?

・今期のパフォーマンスのために、ちゃんと上長は支援してくれていますか?

 それだけを聞きました」(湯川氏)

 調査の結果は、すぐ上司側にフィードバックし、成績の悪いマネジャーには1on1がうまくできるようになるためのコーチングの研修も行った。また、「コミュニケーションは長さより頻度」という考えから、週に1度の1on1だけでなく、「できれば5秒でもいいから、毎日、部下に話しかけてほしい」とも伝えた。その結果、今では「部下と向き合い、正しく見ることの重要性」が認識されるようになったという。

 ほかにもヤフーでは、第三者のファシリテーターを媒介に、部下が上司に対して改善してほしいことを挙げ、上司がそれを受けて改善行動を宣言する「ななめ会議」、メンバーのキャリアプランを直接の上司だけでなく他部署のリーダーにも参加してもらって検討し、本人にフィードバックする「人財開発会議」など、“組織や人の成長を正しく公正な目で評価する”ための取り組みを続けている。もちろんこれらの制度は、“1on1でちゃんと見る”ことができているというベースの上に成り立つものだという。

 最後に湯川氏は、働き方は「時間、場所、人」の3つの観点で大きく変わりつつあるという認識を語った。いつでもどこでも仕事ができるようになって、時間も場所も、仕事とプライベートとの境界がなくなりつつあり、「社外での経験の比重が高まる中、社員が会社を出たり入ったりするようなキャリアもあり得る」と見ている。

 そんな時代にありながら、人事部はルールを盾に、変化を止めるような存在になることが多い。湯川氏は、「人事は間違ったことをやっちゃいけないと考えがちです。でも、『トライ・アンド・エラーでやっていこう』と、社員に宣言してやればいいんです。まずは人事が一番変わらなければいけない」と話して講演を締めくくった。

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