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量販店のアクセサリー棚はさながら売れ筋ランキング?

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/04/20
量販店のアクセサリー棚はさながら売れ筋ランキング?: 画像:ITmedia © ITmedia PC USER 提供 画像:ITmedia

連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC周辺機器やアクセサリー業界の裏話をお届けします)

 PCやスマートフォンなどの製品がトータルでどれだけ売れているかは、基本的にメーカーにしか分からない。

 もちろん個別の販売店での売れ行きは、その販売店が把握しているし、それらのデータは調査会社に渡って各種ランキングとして開示されているが、それはメーカーが販売している数量のほんの一部でしかない。ランキングにデータを提供していない販売店や通販サイト、メーカーの直販ストア、さらに法人ルートなどを含めたトータルの販売数は、メーカー自身でないと分からない。

 もっとも、本来メーカーしか知り得ないはずの販売数のデータを、全くの第三者でありながら、かなり正確に把握している人達がいる。それら製品のアクセサリーを作っている、俗にサードパーティーと呼ばれるメーカーだ。

 さすがに実数まで正確に把握、とまではいかないが、製品AとBではAの方が1.5倍売れている、といった相対的なデータは、他の誰よりも把握している。今回はなぜそれらアクセサリーメーカーが、本体製品の売れ筋を正確に把握できるのか、その仕組みを見ていくことにしよう。

●アクセサリーのラインアップは本体製品の販売数をほぼ正確に反映

 IT業界では、本体製品が発売されると、サードパーティーメーカーがそのアクセサリーを発売するのが常だ。例えばスマホが発売されると、サードパーティーメーカーからは保護ケースやフィルムが発売される。PCの場合もキーボードカバーなど、その本体に適合するアクセサリーが、サードパーティーメーカーによって企画され、店頭に並ぶ。

 これらアクセサリーは、過去の販売傾向に基づいて、今回も一定数が売れると判断されて初めて企画される。もちろん実際には予想よりも売れずに早期に終息したり、予想よりも売れて途中からバリエーションが増えたりといったことも皆無ではないが、全く裏付けがない中で製品が企画されることはなく、また生産数もそうしたデータに基づいて決められる。

 つまりこれらアクセサリーのラインアップは、本体製品の販売数をほぼ正確に反映しているのだ。中には複数の製品に対応することから、単品ごとの販売状況を類推するには向かないアクセサリーもあるが、特定の本体製品にしか対応しないアクセサリー類は、本体製品そのものの販売数と比例していることから、そのアクセサリーが量販店の売場で占める面積を見れば、本体製品のシェアが一目瞭然になる。

 「ほぼ特定の製品でしか使えないアクセサリー類」の代表例として挙げられるのは、今ならスマホケースだろう。量販店のスマホケースのコーナーに足を運ぶと、現在であればiPhoneに対応したケースの割合が圧倒的に多いが、それはそのまま日本市場におけるiPhoneのシェアと一致しており、割合もかなり正確に反映されているはずだ。次に多いのはこのスマホのケース、その次はあのスマホのケース……といった具合に、売場の面積を見ていくことで、スマホ本体のおおよそのシェアが類推できるというわけだ。

●売場を見ればニッチな製品の販売動向や規格の浸透状況が分かる

 もっともスマホに限れば、機種別の販売ランキングは情報としてある程度開示されているし、日本国内ではiPhoneが圧倒的なシェアを誇っていることは周知の事実なので、わざわざ量販店のアクセサリー売場に足を運ぶ必要はない。上記の知識が役立つのは、そうしたシェア上位の製品よりも、むしろもっとニッチなところだ。

 例えば海外製の格安SIMフリー端末では、対応のスマホケースが多少なりとも陳列されている場合もあれば、全く陳列されていない場合もある。これらを見ると、たとえ本体の販売数が開示されていない場合でも、ある程度の量が売れているかどうかといった程度までは判断がつく。

 特にこれらの海外製品は、ネット上では海外メーカー発のアクセサリーが多数流通しており、本体の販売台数がそれほど多くない割には、アクセサリーの種類だけはおそろしく豊富なことがある。こうした場合、ネットだけを見ていては、国内での流通事情と、実態のズレが生じてしまう。

 その点、国内アクセサリー業者の製品を中心に取り扱う量販店の店頭であれば、国内の販売動向をかなり正確にトレースしている。Amazon.co.jpなどネット中心に買い物をしているとなかなか実感しにくいが、こうしたアクセサリーは通販を使わずに量販店で買うというユーザーはかなりの数なので、量販店の売場を見れば、かなり正確な割合が反映されているというわけだ。自分が使っている(あるいは検討している)格安スマホは実際に国内でどれくらい人気があるのか、といった疑問にある程度答えてくれるだろう。

 また、製品単品のシェアを見る以外の使い方もある。例えばケーブルだ。最近はUSB 3.1が普及しつつあるが、店頭で見るUSB 3.1のケーブルやハブの種類はまだまだ限られている。これを見る限りでは、まだまだニーズとしては少ない、ということが判断できる。

 「いやそれは短絡的すぎる。もしかしたら販売店がラインアップを絞って集中的に売っているだけで、少ない在庫が速いスピードで入れ替わっているかもしれないじゃないか」と見る向きもあるかもしれない。しかし現実的には、きちんと売れている製品であればあるほど、長さ違いなどのバリエーションを用意して面を抑えるのが基本なので、これは常識的に考えにくい。

 さらにもう1つ、在庫の定数で見分ける方法もある。例えばほかのケーブルの在庫が3〜5本であるにもかかわらず、これらの製品の在庫が1〜2本しかなければ、それらは「毎週決まった数が売れるわけではないが、在庫が皆無だと機会損失につながる製品」として見なされていると判断してよい。決まった数がきちんと回転する状況にはないが、だからといって店頭に在庫が全くないと機会損失につながるので、量販店としては最低限の在庫を用意しているというわけだ。

 またこうした「売れ筋ではないが置いておくべき製品」は、売場での陳列も、棚の下段だったり隅だったりと、目立たない場所であることが多い。なぜなら目的を持って買いに来た客は棚の下段までくまなく探すし、店員さえ置き場所を把握していれば、客から尋ねられた際に案内すれば済むので、わざわざ目立つスペースを割く必要はないからだ。

 このように売場を見ていけば、どのケーブルがどのように扱われていて、結果として特定の規格が今どのくらいニーズがあるか、判断できるというわけだ。

●アクセサリーメーカーからは本体機器メーカーの販売動向が一目瞭然

 話がやや量販店寄りになったので元に戻すが、アクセサリーメーカーは時として、一般には全く開示されることのない、本体機器の販売動向を把握していたりもする。よくある例、とはさすがに言えないが、面白い事例を幾つか紹介しておこう。

 1つは社員販売だ。メーカーは社員やその家族などに対して、自社製品を安く卸している場合がある。例えば量販店ではせいぜい10%引がいいところの製品が、一律30%引といった具合に、市価に比べてはるかに安い価格で入手できる。またボーナス時に限って、現物支給に相当するシステムで、こうした自社製品が安く出回ることがある。

 こうした自社製品が販売されると、それに関連したサードパーティー製アクセサリーの販売数が、一気に増えるという事態が起こる。特に本社や関連工場が集中しているエリアでは、その従業員がまとまって居住していることから、近隣の量販店でそれらのアクセサリーが一気に品薄になることもある。PCメーカーであれば、従業員やその家族がPCを買うことにより、近隣の量販店でキーボードカバーが普段あり得ないペースで売れるようなことが起きる。

 こうした現象がボーナスシーズンに繰り返し発生すると、アクセサリーメーカーも量販店も、見えないところでまとまった台数が動いていることを、否が応でも察知できてしまう。そうなるとしめたもので、「そろそろ例の時期が来るはずですから在庫を増やしておきましょう」といった具合に、ボーナス時期には特定のアクセサリーの在庫が増えたりもする。

 上記のように量販店を通さず、アクセサリーメーカーだけが把握しているケースもある。例えば何らかのルートで出た大量のB級品を通販業者がさばくにあたり、アクセサリーを抱き合わせて売るといったケースでは、通販業者の主導によってアクセサリーとのセット製品が作られる。

 こうしたケースでは、実は売れているとされていたPCのあるモデルが実際には全く売れておらず、まとまった台数を通販業者に格安で流すことで在庫を減らさざるを得ない……といったPC本体メーカー側の事情が、アクセサリーメーカーからは一目瞭然になってしまう。

 またアクセサリーメーカーは、複数の本体機器メーカーのアクセサリーを並行して手掛けているのが常であるため、メーカー同士の販売動向を比較するのもたやすい。

 例えば、市場でトップシェアとされているメーカーよりも下位とされる別のメーカーの方が活発に製品が動いているとか、あるメーカーは量販店ではいまいち売れていないが別の販路でかなりの台数を売っていて侮れない……といった、本体機器メーカーからは見えない競合他社を含めた販売動向を、全くの第三者であるアクセサリーメーカーが手に取るように知っていたりするのだ。

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