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関西唯一の「原生林」 遭難の危険性もある奥地へ行ってきた

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2017/08/06 かるめら

京都府北部にある関西唯一の原生林「芦生研究林」をご存じでしょうか。京都大学フィールド科学教育研究センター等が研究のために管理しているこの場所には、人の手が入っていない2000ヘクタールもの原生林が存在しており、そこには貴重な動植物が多数棲息すると言われています。

以前も私は芦生へと赴き、その環境に関する記事を執筆しました。木々にさえぎられたほのかな日差しの中、自然そのままの森林を歩いていくという体験は、非常に価値のあるものであったと思います。

しかし、その際探索を行ったのはごく一部の場所のみ。原生林のさらに奥にある「ブナの木峠」と呼ばれる場所から先は遭難の危険性が高いため、あらかじめ入林が認められている団体の許可がない限り入ることはできないとされています。しかしこのたび、認定団体のひとつである研究林付近の宿泊施設「芦生山の家」のご主人が拙記事に興味をお持ちになられたことで、ガイド同伴での入林が実現! 原生林の奥深くへと赴くチャンスが、実に意外な形でめぐってきたのです。

というわけで今回は、豊かな自然が残る芦生研究林の風景や状態に関する詳細なレポートです。関西最後の原生林に息づく動植物たちを、しっかり写真に収めてきました。

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芦生山の家で一泊し、朝8時30分に出発。写真の撮影会に来たというグループと一緒に行くこととなりました。天気は快晴、絶妙のトレッキングびよりです。前回は京都大学の研究棟を経由して徒歩で行きましたが、今回はある程度先のところまでバスを使用。

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欅峠(けやきとうげ)で下車し、ガイドさんの案内に従って進んでいきます。あたりにはブナやトチ、スギなどが覆い茂っており「こりゃあすごいところに来たぞ」という気分。ちなみに携帯電話も通じませんでした。

芦生の良さはなんといっても、その豊富な自然。歩けば歩くほど、それに比例したたくさんの動植物に出会うことができます。

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たとえばこれは「ヤマウルシ」。金沢輪島の特産品である漆器の材料となることで知られる植物なのですが、刺激物ゆえ触れると手がかぶれてしまいます。

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ツタ状の「ツタウルシ」も棲息していました。刺激物の強さはヤマウルシより上だそうです。そのような毒性を持つ植物であるとは外見上判断しづらいため、うっかりさわってしまう人も多いのだとか。

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ガイドさんに「面白いものがある」と見せられた不思議な形の葉っぱ。よくよく見れば「オトシブミ」という昆虫のゆりかごでした。この虫は葉っぱを信じられないぐらい巧妙な技術によって加工してゆりかごを作り、中に卵を産みつけるのです。卵からふ化した幼虫は周りの葉を食べて成長するので、エサ探しのリスクを負わずに成虫へと羽化することが可能となります。

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このモミジのような植物は「モミジチャルメルソウ」。なんとも変わった名前ですが、モミジの他に楽器の「チャルメラ」にも形が似ていることから名付けられたのだとか。その独特なニオイによってキノコバエという虫を引き寄せ、花粉を運ばせるといった習性も持っています。しかし残念ながらキノコバエは見当たらず。

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淡いピンク色をしたラッパ型の花は「タニウツギ」。主に山地などに分布しているスイカズラ科の植物で、鑑賞用としても人気がありますが、その色が火や血の色を彷彿させるとして、忌み嫌う地方もあるのだとか。

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黄色く縦長な花びらの植物は「ハナニガナ」。「ニガナ」という名前の由来は、茎などに強烈な苦味成分を含んでいるから。遭難してお腹が空いていたとしても、食べられそうにはないですね。

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そして白く平たいこの花は「ツルアジサイ」。見た目は大きく異なりますが、これでもアジサイと同種の植物です。比較的栽培が容易で、ツタよりも華やかなので、レンガや塀に這わせて観賞用とする方も多くおられるようですね。

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途中、「長治谷作業所」と呼ばれている京都大学の施設に到着。簡単な炊事や宿泊が可能となっており、研究者はこの場所を中心に気象観測や動植物の生態調査を行っているようです。

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そばの小川では「アカハライモリ」が気持ち良さそうに泳いでいました。かつては日本のあらゆる場所で見ることができたこの生き物も徐々にその個体を減らし続け、環境省の指定するレッドリストにも「準絶滅危惧種」として登録。今ではこの芦生のような自然豊かな場所でしか姿を確認できなくなってしまいました。

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山菜のたっぷり入った、「芦生山の家」の御主人手作りお弁当を食べて休憩です。疲れたカラダのエネルギーを回復!

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河原に下りてみると、周囲のひやりとした空気がなんともさわやか。天然のクーラーといったところでしょうか。

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水も澄み切っており、水中を泳ぐ魚が肉眼で確認できるほどです。ちなみにこの魚は「タカハヤ」の一種。「ヤマメ」や「アマゴ」ほど知られた種ではありませんが、渓流などに多く生息しており、釣り人にも人気があります。

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コケの間に隠れているのが「タゴガエル」。渓流などにのみ生息している、都会では見られない珍しい種類です。このカエルは擬態能力が高く、鳴き声が聞こえていてもどこにいるかを見極めるのは困難で、この写真が撮れたのもガイドさんいわく「運がよかった」とのこと。

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初夏の芦生を飛び回っているのはカワトンボの一種。細身でツヤのあるカラダに透き通った羽を持つ、その名の通り清流のみに生息する種です。生息地の微妙な違いによってカラダや羽の色が変化するようで、実際探索中はこれと異なる色の種も見られました。あまり警戒心がないのか、時折人間の肩に止まることもあります。でも、捕まえないようにしましょう。この森の中にいる動植物は、いっさいの捕獲採集が禁止されているのです。

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河原にはさまざまな巨木が。その大きな木陰に入れば暑さもなんのその。

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密林の中には倒木も。苔むした樹皮からはまた新たな植物の芽やコケが生えています。こうした生と死のライフサイクルの繰り返しで、森は今日まで存在してきたのですね。

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この大きなカツラの木は、いわゆる保存木。樹齢は300年を優に超えており、その大きさはなんと40m。目の前にそびえたつそのたたずまいは圧倒的で、芦生という場所の自然史を感じさせてくれます。

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このように、豊かな自然が息づいている芦生原生林ですが、さまざまな問題を抱えています。たとえばシカの食害。増えすぎたシカが特定の植物を選り分けて食べ続けてしまった結果、生態系に大きな偏りが発生するといった問題です。

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このユニークな形をした「マムシソウ」や、推理小説のネタによく用いられる「トリカブト」などは中毒性があるためシカは食べません。

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それ以外、先述した「タニウツギ」や「モミジチャルメルソウ」、そして「イタドリ」などは逆に好んで食べてしまうため、その数に極端な差が出てしまうのです。そうなると、森の生態系も崩れてしまいます。

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また、かつてはこの森を切り開き、ダムを作るという計画が持ち上がったこともありました。住民の方々の猛反対もあり計画は中断となりましたが、人々の芦生への関心が薄くなれば、いつまたそのような危機が起こらないとも限りません。そして最悪の場合、この記事で取り上げた動植物たちの生息地は、またたく間に失われてしまうのです。

実を言うと、この芦生研究林は京都大学が所有しているものではなく、旧知井村(現:南丹市)から借地しているにすぎません。1921年に結ばれたその契約の有効期間は99年であり、2020年に終了となります。京大側が契約更新を行う可能性は高いと思われますが、もし万が一それが行われなければ、それだけで保護の取り組みが大きく後退してしまうほど、この森林は危うい立場に立たされています。

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「自然は自然のままに」という意見もありますが、たとえ自然であっても対処しきれない問題が発生することもあります。そのようなときのために、芦生に住まう人々だけでなく、インターネットで情報をキャッチできる我々が常に関心を持ち、問題への対処、協力ができるよう注目しておくべきではないでしょうか。

現在京都大学のホームページでは、芦生研究林の保護および研究発展を目的とした寄付を受け付けています。税制上の優遇措置も受けられるとのことです。

(かるめら)

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