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電子レシートやIoTショッピングカート――トライアルCIOが語る、スーパーマーケットの未来とは?

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/04/23
電子レシートやIoTショッピングカート――トライアルCIOが語る、スーパーマーケットの未来とは?: 店内の様子。ショッピングカートにタブレットがついている © ITmedia エンタープライズ 提供 店内の様子。ショッピングカートにタブレットがついている

 昨今はさまざまな業種でビッグデータ活用が進んでいるが、中でも大きな可能性があるのが流通、小売業界といわれている。消費者との接点が多く、他産業に比べて多様かつ大量のデータを保有しているためだ。その施策もビジネスに直結するものが多く、気温データと組み合わせて需要予測をしたり、Webの行動履歴からレコメンドを行ったりとさまざまだ。

 米ウォルマートに学び、日本型のスーパーセンター(食料品スーパーとディスカウントストアを一体化した店舗)「トライアル」を展開するトライアルホールディングスも、データ活用に取り組む企業の1つ。全国199店舗を展開する同社の年商は計3510億円。徹底したROI経営で急速に成長し、今後5年で年商1兆円を目指している。

 経済産業省からの委託事業で「電子レシート」の実証実験を行うなど、先進的なIT活用に取り組む同社で今何が起きているのか。日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)のユーザー会で講演を行った、トライアルホールディングス グループCIO、西川晋二氏の話をお届けしよう。

●商品戦略の要は「カテゴリーマネジメント」

 トライアルがIT活用に積極的な理由の1つに、同社の出自がある。創業期はソフトウェア開発や流通業向けのシステムを開発していたIT企業だったのだ。そのため、社員がITに対して理解があり、「ITの力で流通を変える」ことを目指しているという。

 業務アプリが入った従業員専用のモバイル端末を用意したり、メンバーズカードを発行して顧客データを収集したりと、IT関連の施策は多岐にわたるが、データ活用基盤は自社で開発している。顧客ID付きPOSデータを約100億件保存するデータベース「SMART」だ。

 同社の商品戦略は、商品カテゴリーをSBU(Strategic Business Unit=戦略的事業単位)としてマネジメントしていくことにある。「MD-Link」という、POSデータを基に製品の売り上げや分析を行えるサービスを、カテゴリーキャプテン(カテゴリー全体の成長を相談できるメーカー)に向けて公開し、両者でユーザーがより“求める”品ぞろえを実現し、売上と収益の改善を行うという。

 「トライアルは販売の専門家として売り場を確保できる。一方のカテゴリーキャプテンは、商品力の専門家として豊富な品ぞろえやお得な商品を供給できることが強みです。『MD-Link』の契約をしているのは230社にのぼり、当社のさまざまなデータをオープンにすることで、併売分析などを実施して、売上高とお客さまの満足の両立を図ります」(西川氏)

●売り場の「中」で、顧客とどうつながるか

 トライアルが強化しているのはメーカーとのつながりだけではない。ユーザーとのつながりを強化するための施策も数多く展開している。特に店舗の中でどうユーザーにアプローチできるかに重点を置いているという。

 「トライアルは店舗の売り場でお客さまとつながる新たな“リテールメディア”を展開しようと考えています。これは新たなお客さまとのコミュニケーション手段や、新たな商品のプロモーション手段であり、マス広告の代替になり得るでしょう」(西川氏)

 店舗外でテレビやタブレット、スマートフォンなどを通じてトライアルの情報を集めて来店したユーザーに、店舗内ではKIOSK端末、タブレット付きカート、レシートクーポンといった仕掛けでさまざまな情報を与えていく。特にレシートクーポンでは分かりやすい成功事例が出たという。

 レシートクーポンは、レシートに次回来店時に使える特定商品の割引情報などを印刷して来店頻度を高める試みだ。これは顧客全員を対象とした値引きやポイント付与を行う従来の方法とは異なり、特定の顧客にコストの効率の良いクーポンを配布する「ピンポイントマーケティング」と呼ばれる手法を用いている。

 「8月から2カ月かけて、とある商品でレシートクーポンを実施したところ、約111万人のクーポン対象者のうち、62万人にクーポンを発行しました。そのうち1.4%の8574人がクーポンを利用しました。クーポンを利用した売上高は約1200万円です。たったの1.4%と思われるかもしれませんが、8574人のうち約4割はそのカテゴリーの商品を新たに購入したわけで、売上を考えれば非常にROIが高い施策と言えます」(西川氏)

●400万人の顧客を50のグループに

 トライアルがレシートクーポンのように、商品に興味を持ちそうなユーザーをピンポイントで探せるのは、クラスタ分析を使って約400万人の顧客を50のグループに分けているためだという。

 「店舗で効果的な活動をするには、年齢層やペルソナのようなイメージではなく、データによる顧客分析を行って反応率が高いターゲットグループを作る必要があります。それぞれ和洋バランス型、洋食スタイル、料理好きな堅実型、パートタイムの節約型、かんたん料理で晩酌型、健康意識のこだわり型、できあい品で晩酌型といった名前を付けています」(西川氏)

 例えば、「抜かりないしっかり者の主婦」というカテゴリーは、基本的に家でご飯を作り、総菜や冷凍食品をサブで利用する人たちで、お買い得な大容量の商品を好んで買う傾向がある超優良顧客、といった具合だ。クラスタによってクーポンの反応率が5倍、6倍と異なることもあるため、反応率によって次回施策のクーポン配布対象を変えるといったPDCAサイクルを細かく回しているそうだ。

●タブレット内臓型「IoTショッピングカート」の可能性

 同社が最近力を入れているのが、タブレット付きのショッピングカート「IoTショッピングカート」だ。消費者が店頭で買うものを決めるのは、来店前よりも店内にいるときのほうが多い。これは同社の調査で明らかになっているという。

 ユーザーが店内を回遊しているときに情報を与えるのが、より効果的――そこでトライアルはショッピングカートに目を付けた。タブレットをショッピングカートの前面につけて、ポイントカードでログインするとユーザーに合った商品情報やお買い得商品の情報を表示するほか、商品の棚へも誘導する。IoTショッピングカート利用者の買い上げ点数は昨対比で1.2倍、カート非利用者と比べて1.5倍になるなど、非常に高いことが分かっている。

 「今後は館内放送の代わりに、タイムセールなどのリアルタイムな案内を行ったり、個別のお客さまだけが得られる割引を表示したりすることで購買を促したいと考えています。POSレジ機能を追加し、買い物中にスキャンを完了して支払いを簡素化することも、2017年中に実現する予定です。これでレジ前の行列を軽減できるはずです」(西川氏)

 スマホアプリを使って入金し、POSレジ機能付きのIoTショッピングカートで商品をセルフスキャン、その後自動決済レーンを通過すれば、レシートはアプリを通じてスマートフォンに送られる……といった利用シナリオを西川氏は想定している。万引き防止のため、ユーザーの顔認証やカート内の重量チェックといった対処もする予定だという。

 また、このIoTショッピングカートにGPSを付けることで、ユーザーの移動履歴を取ることもできる。これはECサイトでCookieからクリックストリームを分析して、UX(顧客体験)を改善する活動を実店舗で行うイメージだ。頻繁に棚の変更をすることはできないが、タブレット上により適切な情報を表示できるという方向性で実装を考えているそうだ。

 「このような取り組みを持続的に続けられれば、当社は売り上げが向上し、販促コストやレジコストを下げることができますし、お客さまにとっては、利便性が向上し、レジに並ぶこと無くストレスフリーで買い物ができます。ITを活用することで、流通にまつわる情報に革命を起こしていく。これがトライアルの考えるリテールテクノロジーカンパニーの姿です」(西川氏)

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