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高齢化・労働力不足の農業をヤンマーのロボットトラクターは救えるか?

ザテレビジョン のロゴ ザテレビジョン 2017/06/21
高齢化・労働力不足の農業をヤンマーのロボットトラクターは救えるか? © KADOKAWA CORPORATION 提供 高齢化・労働力不足の農業をヤンマーのロボットトラクターは救えるか?

AWS Summit 2017の事例セッションに登壇したヤンマーは、高齢化・労働力不足に陥る日本の農業をテクノロジーで支えるロボットトラクターについて講演。AWSを用いた認証とデータ同期のシステムについても言及し、デジタルビジネスにおけるクラウドの重要性をアピールした。 高齢化・労働力不足に陥る日本の農業を救えるか?  創業105年を迎えるヤンマーは、全体4割を占めるアグリ事業を中心に7つの事業を手がけている。ヤンマーと言えばトラクターが有名だが、食料生産技術とエネルギー変換技術をコアに小型・大型エンジン、建設機械、エネルギーシステムなどを幅広く手がけている。「ヤン坊マー坊で知られているが、天気予報の会社ではない(笑)」とはセッションを担当した横山氏の弁だ。 ヤンマー アグリ事業本部 開発統括部 農業研究センター 先行開発グループ 課長 横山 和寿氏 ヤンマー アグリ事業本部 開発統括部 農業研究センター 先行開発グループ 課長 横山 和寿氏  ヤンマーのアグリ事業はドイツから輸入した1933年ディーゼルエンジンの小型化からスタートしており、この小型ディーゼルエンジンを作業機に搭載。1966年にディーゼル耕うん機、1967年に田植え機と種まき機、そして1968年にトラクターを立て続けに製品化し、農作業を大幅に省力化してきた。最新機種ではキャビンやエアコンも付いており、快適に農作業が行なえますという。そんなヤンマーが現在開発しているのが、農作業の省力化・自動化まで可能にするロボットトラクターとICTの活用だ。  農業を取り巻く環境の変化は激しい。2050年、世界の人口は今より20%増えるが、耕地面積は3%しか増えない。もっとも大きいのは農業人口の減少で、少ない農業従事者が、増え続ける食料需要をまかなわなければならない時代に突入する。「現在、日本の農業従事者の平均寿命は66歳で、高齢化が進んでいます。これはあくまで平均なので、実際は70歳代の方も多い」と横山氏は警鐘を鳴らす。これに対してヤンマーは「持続可能な農業」を掲げ、製品とサービスを組み合わせ、農業従事者をトータルでサポートしていくという。 農業を取り巻く環境の変化 農業を取り巻く環境の変化  担い手が少なく、労働力不足に陥る日本で持続可能な農業を実現するには、やはり農業の省力化と作業時間の短縮を進め、労働力を節約する必要がある。また、経験や勘に頼らない匠の技術を科学的に明らかにし、誰でも利用可能にし、さらに3K(きつい、汚い、くさい)といったイメージを払拭し、新規就農を増やしていかなければならない。こうしたことを実現する施策の1つとして、ヤンマーが開発したのがロボットトラクターである。 日本の農業を「持続可能な農業」へ 日本の農業を「持続可能な農業」へ 人間との協調動作するヤンマーのロボットトラクター  では、ヤンマーの考えるロボットトラクターとはなにか? 現時点でのロボットトラクターは、人とロボットが協調することで、「誰でも」「正確に」「効率よく」農作業を行なえるトラクターを指すという。  実はロボットトラクターと言っても、いくつかのレベルがある。ヤンマーが農水省とともに考える農機の自動化レベルは、使用者の操舵を補助するレベル1、使用者の監視下で無人自律走行を行なうレベル2、そして完全無人で自律走行を行なうレベル3の段階に分けられる。つまり、ガイドライン上は一足飛びに完全無人のトラクターまで行けないというわけだ。 農水省のロボット農機自動化レベル 農水省のロボット農機自動化レベル  レベル1はすでに実用化しており、GPSのガイダンスシステムを元に電動モーターが自動操舵してくれるため、事実上手放しでの作業が可能。「手動で300mをまっすぐ走るのは実は難しい。でも、自動操舵であれば、まっすぐ進めるので無駄なく作業が行なえる」(横山氏)。同社の最新トラクターではすでに標準搭載されており、農家にも喜ばれているという。  レベル1の自動操舵では、作業は楽になるし、正確性も増すが、効率性にはつながらない。そこでレベル2では有人と無人のトラクターを2台用いて協調動作させる。「ほ場は公道ではなく、あくまで私有地なので、ある程度自由に動かしてもよいのではないかと提案し、農水省から許可を得た」ということで、実験にこぎつけたという。 人間とロボットを協調動作させるレベル2 人間とロボットを協調動作させるレベル2  具体的にはタブレットで作業工程を設定しておき、無人トラクターに作業をインプット。衛星で位置をトラッキングしながら、有人トラクターが無人トラクターを監視しながら、2台で作業を進めるというやり方になる。これが実現すると、1人のオペレーターで2台のトラクターを同時に動かして、作業効率を向上させることができる。さらに有人トラクターで砕土作業、無人トラクターで施肥・播種といった具合に2つの異なる作業を1人で行なうことも可能になる。「ロボットトラクターは直進できるので、その後を追えば正確に直進できる。晴れている日にまとめて作業を進めることができるので、天候に左右されにくい」(横山氏)など、いいことずくめだ。 レベル2のロボットトラクターでは農作業を大幅に効率化できる レベル2のロボットトラクターでは農作業を大幅に効率化できる  実際、1.5haあたりのロータリー作業で調べたところ、有人機単独で3時間7分かかった作業は、無人機・有人機の協調作業では1時間48分で完了。作業時間を約48%短縮でき、大幅な省力化が実現した。実際、昨年はロボットトラクターの先駆性が評価され、農水省から表彰を受けたという。今後は完全自動化に向けた取り組みを推進していくと説明し、横山氏のパートは終了した。 2台のトラクターにより作業時間の大幅な短縮を実現 2台のトラクターにより作業時間の大幅な短縮を実現 生産者をサポートする「スマートアシスタント」との連携をAWSで実現  後半はロボットトラクターと同社のデジタルサービス「スマートアシスト」との連携をAWSで実現した事例について、ヤンマー情報システムサービスの中村圭志氏が語った。 ヤンマー情報システムサービス ITソリューション部 デジタルビジネス技術推進G 中村圭志氏 ヤンマー情報システムサービス ITソリューション部 デジタルビジネス技術推進G 中村圭志氏  ヤンマーは生産者をトータルにサポートするソリューションとしてスマートアシストを展開してきた。これはGPSと通信端末を活用し、農機の稼働状態やコンディションをリアルタイムに収集するサービス。機器の状態を見える化するとともに、収穫量や作業状態を分析できるほか、紙のほ場を電子化したり、作業状態をPCやスマホから簡単に入力することが可能だ。「ベテランと若い人の機械の使い方を比較したり、成績のいいほ場、悪いほ場がわかるので、収量の改善につなげられます」(中村氏)。  ロボットトラクターの開発に際しては、データを有効活用したいという需要のほか、スマートアシスタントのマスタと連携したい、ログイン機能がない、SIMがないといった課題があった。 ロボットトラクターのデータ活用や課題 ロボットトラクターのデータ活用や課題  このうちSIM以外の課題に対しては、ヤンマー情報システムサービスでAWSを用いたPOCを実施した。Amazon Cognito ID Brokerを用いて、ロボットトラクターに搭載したAndroidタブレットにアプリとして認証機能を追加し、Amazon Cognito Sync Storeを使って、スマートアシストとのマスターデータとの統合を実現した。具体的には、自宅のWiFiにつながった段階で、Cognitoによる認証を経て、データを同期。変更データはKinesis Streamsを経由して、スマートアシストのマスターに取り込まれるという。また、トランザクションデータのアップロードはサーバレスを活用。API GatewayとLambda、Amazon SQSを経由し、スマートアシストのデータベースに取り込まれる。 認証とデータ同期の仕組みをAWSのサービスで解決 認証とデータ同期の仕組みをAWSのサービスで解決  中村氏は、AWS採用のメリットとして、MobileSDKとマネージドサービスを採用したことで開発工数を削減できたこと、サーバーレスアーキテクチャを採用したことで運用に負荷が下がったこと、さらに実績が高いためAWS技術者の確保が容易だったことなどを挙げた。加えて、「AWSの社員さんは技術的に尖っているので、見習うところが多い」ともコメントした。 持続可能な農業を実現する「AgTech」を今後も推進する  AWS導入のメリットを語った中村氏は最後マクロの視点に立ち、デジタルトランスフォーメーションの重要性を語った。  中村氏はIMFのGDPデータをひもとき、日本の成長率が約10%なのに対し、米国は約120%を実現しており、日本の生産性が悪さを指摘。中村氏は、「最近、授業参観に出てきたのですが、奈良の大仏はいつ誰が、なんのために作ったかという内容で45分消費していた。そんなのネットで調べればすぐわかるので、今だったらどういう素材で作るべきか、今病気が蔓延したらどうするか、といったクリエイティブな議論に時間を割いた方がよい」と持論を披露。システム開発においても、世の中にある優れたモノを組み合わせて、スピーディにビジネスに供給していくことが重要だと説いた。  今後は、人と機械がインターネットを介してつながることで、新しい収益を生み出すデジタルビジネスが加速する。この流れがまさにデジタルトランスフォーメーションだ。「ITの進化はこれまで人がやってきたことを機械が置き換えることでコスト削減をしてきた。これからはクラウドやIoT、人工知能の普及によって、人間にしかできないこと、人間ではできないことをできるようになる」と中村氏は語る。今回紹介したロボットトラクターも、その1つの成果物。持続可能な農業を標榜するヤンマーは、今後もロボットやICTを駆使した高品質な生産をサポートする「AgTech」を推進していくという。 ■関連サイト ヤンマー

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