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魔法少女アニメなぜ激増? 『魔法使いサリー』から『魔法少女育成計画』に至る系譜を読む

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/18 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 2016年10月放送の深夜アニメは、放送本数が非常に多いのだが、なかでもとりわけ目立つのが“魔法少女もの”の多さ。こんなにも放送時期が重なるのはおそらく初めてだろう。『終末のイゼッタ』、『ブレイブウィッチーズ』、『Vivid Strike!』、『魔法少女なんてもういいですから。セカンドシーズン』、『魔法少女育成計画』、『装神少女まとい』。ほとんど毎日魔法少女アニメが放送しているような状態だ。 参考:『映画 聲の形』から『響け!ユーフォニアム2』へ 京都アニメーション作品はなぜ優れている?  すでに長い歴史のある確立されたフォーマットとはいえ、ここまで一気に、しかも深夜アニメにおいて放送が重なるのは、それだけ分厚い受容があることの裏返しなのだろう。もはやブームと呼んでいいのかもしれない。元々は女の子のためのアニメのフォーマットだった“魔法少女もの”は、いかにして深夜アニメにおけるブームを作るまでにいたったのだろうか。 ■女の子の憧れとしての魔法少女  日本のアニメにおける最初の“魔法少女もの”と言われるのは、1966年放送の『魔法使いサリー』だ。魔法の国からやってきた女の子が人間界で人助けするのが主なストーリーだ。それ以降、様々な“魔法少女もの”アニメが作られるが、黎明期は特別な出自を持った女の子が魔法の力で大人に変身し、事件を解決するのが定番のストーリーだった。特別な出自、変身して大人になれるという設定には、当時の女の子たちの理想の姿が投影されていたのだろう。  後に、普通の女の子がひょんなことから魔法の力を手に入れるタイプの作品(『魔法の天使クリィミーマミ』や『ひみつのアッコちゃん』など)が登場。『魔法使いサリー』の時代と比べると、魔法を使う女の子がより等身大の存在となり、男の子との恋愛描写なども盛り込まれるようになった。(参照:『超読解まどかマギカ』(「魔法少女アニメの歴史と、『魔法少女まどか☆マギカ』)文:久保内信行」より) ■作劇の変化とともに男性ファンを獲得  ここまではいわゆる、日常の中に不思議な現象が起こるエブリデイ・マジックの手法が採用されていたが、90年代になると、“魔法少女もの”に大きな転機が訪れる。変身し特別な力を得る女の子という魔法少女のフォーマットと、少年向けヒーロー戦隊ものの要素をあわせた『美少女戦士セーラームーン』が一世を風靡する。『セーラームーン』シリーズの大きな特徴は、変身する女の子が複数いることにより、女の子同士の友情や葛藤、協力して敵を倒していくような少年漫画のようなメソッドが追加されたことにある。『セーラームーン』のアニメ放送開始は1992年であるが、当時の社会は女性の社会進出が叫ばれたり、女性の幸せに対する価値観も多様化していく時代にあった。女の子たちの夢も当然、素敵な人と結ばれるという旧来のステレオタイプなものばかりでなくなってきたことも、こうした作劇の変化の背景にある。  こうした女の子たちの嗜好を反映した作劇の変化は、同時に少女向けの作品が男性ファンを獲得するという状況を作り出した。『セーラームーン』も少なくない男性ファンを獲得したが、その流れを(意図していたがわからないが、結果として)さらに推し進めることになったのが1999年にNHKで放送開始された『カードキャプターさくら』だ。  普通の女の子がひょんなことから魔法の力を手に入れ、問題を解決していくという『カードキャプターさくら』のストーリーは、正統派の“魔法少女もの”に近いのだが、変身時の衣装は友達の自作だったり(コスプレ?)、主人公のさくらが憧れる月城雪兎とさくらの兄が同性愛的な関係を匂わせたり(BL?)、さくらの親友の知世はバレンタインにチョコを渡すほどにさくらのことを好きであり(百合?)、終盤の敵であるエリオルの従者、ルビー・ムーンは女子の制服を着ているが、別のキャラクターから男の服を着るべきと突っ込まれていたり(男の娘?)と、現在の萌え要素の源流が数多く詰め込まれており、少女マンガファン以外にも男性オタクのファンを数多く獲得した。 ■深夜アニメに進出する魔法少女  さらに2004年に入ると、アダルトゲームのサブキャラを主人公にしたスピンオフ『魔法少女リリカルなのは』が登場。『カードキャプターさくら』は夕方の放送枠だったが『魔法少女リリカルなのは』は深夜の放送時間帯であり、女の子の理想を描いてきた魔法少女アニメは、ここにきて男性アニメファン向けとしての可能性を広げていく。『リリカルなのは』シリーズは、2016年10月時点でもシリーズが展開されている(最新作は『Vivid Strike!』)人気シリーズであり、ライバルの魔法少女との壮絶なバトルとその果てに訪れる友情を描いた作品だった。女の子向けには同じ年に『ふたりはプリキュア』も放送が開始され、こちらも女児向けではあるが、バトル要素を数多く含む内容となっている。  そして、『なのは』シリーズ1作目を監督した新房昭之は、2011年に『魔法少女まどか☆マギカ』を完成させる。深夜アニメの枠を超え、大きな話題を呼んだ作品で、劇場版も大ヒットを記録した同作の特徴は、従来のメルヘンチックなキャラクターデザインと衣装のまま、魔法少女が次々と死んでいく展開と重厚な世界観が展開していくことだった。従来のお約束をあえて破る手法が、類型としての“魔法少女もの”を破壊し、再構築するかの内容だった。 ■残酷描写の極まった『魔法少女育成計画』  さて、話を2016年10月に戻すが、やはりこれだけ“魔法少女もの”の企画が乱立する要因となったのは、『まどマギ』の成功が大きいのだろう。同時に、メルヘンチックなペルソナを用いて、残酷な描写をしかける手法も大きく注目されることになった。『リリカルなのは』シリーズ最新作の『Vivid Strike!』では、格闘技の才能を持った少女がいじめっ子に復讐する姿が描かれたり、『ストライクウィッチーズ』シリーズの新作である『ブレイブウィッチーズ』は、苛烈な描写こそないものの、ウィッチたちはネウロイという未知の存在との戦争に駆り出されている。『終末のイゼッタ』も、リアルな戦争描写が話題となっている。  そして、今期の“魔法少女もの”で、とりわけ『まどマギ』以後の作品として、注目すべきなのは、『魔法少女育成計画』だろう。原作者、遠藤浅蜊の「魔法少女がぐちゃぐちゃになって死んでいくところを書きたい」という執筆動機からスタートしたこの作品では、「まどマギ」ですらやらなかった、魔法少女同士の血みどろのバトルロイヤルが描かれる。第7話では、魔法少女の一人が、別の魔法少女をショットガンで肉片にし、燃やしてからドラム缶にコンクリート詰めにして海に沈めるという描写まで飛び出した(しかも不死身だからそれでも死なない)。さらには、当初の魔法少女は女の子が大人に変身するパターンが多かったが、同作では少女だけでなく、大人の女性や少年までもが魔法少女に変身しており、みな一様に苦しい現実を生きている。魔法少女は、理想の姿というより、つらい現実からの退避場所となっているのも本作の特徴だ。 ■ジャンルの成熟後、原点回帰は起こるか  様々な表現が可能になること自体はジャンルの成熟であり、悪いことではない。深夜帯においても残酷描写ばかりが先行しているわけでもなく、現在放送中の各作品は実に多種多様だ。それに、残酷描写が行き着くところまでいけば、今度は原点回帰の道も模索されるかもしれない。そういう流れが起きているからなのかどうかは分からないが、2017年には、現在の深夜アニメにおける魔法少女の原点である『なのは』シリーズの新劇場版が公開される。さらに、『カードキャプターさくら』の劇場版のリバイバル上映と新作アニメプロジェクトの始動も発表された。現在の潮流を作った原点2作がどのような内容になるのか注目したい。(杉本穂高)

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