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2016年の格安SIMを振り返る&2017年への期待

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/01/16
2016年の格安SIMを振り返る&2017年への期待: 1年間限定だが、月1980円という料金をアピールしている「Y!mobile」 © ITmedia Mobile 提供 1年間限定だが、月1980円という料金をアピールしている「Y!mobile」

 2016年は「格安SIM」のサービスが伸びた1年だった。MM総研の調査によると、MVNOが提供している独自サービス型SIM(WiMAXやAXGPなどを除く)の回線数は、2016年9月末で657.5万となり、2015年9月末の405.8万回線から62%増加した。今回は2016年に特に目立ったトピックと、2017年への期待をまとめたい。記事での価格は全て税別。

●イオンやLINEのMVNO参入、楽天の攻勢

 大手企業がMVNOでも存在感を示し始めている。イオンは、当初は店頭で他社MVNOのサービスを扱っていたが、2016年2月に、自らがMVNOとなって「イオンモバイル」を開始。取り扱い店舗数の多さ、音声プランでも解約金なし、サポートの充実などで差別化に努めた。

 9月には、かねてサービスインを予告していた「LINEモバイル」がスタート。月500円でLINEが使い放題になる「LINEフリー」や、Twitter、FacebookなどのSNSが使い放題になるプランも用意して話題を集めた。

 「楽天モバイル」を提供する楽天も、さまざまな手を打ってきた。楽天スーパーポイントとの連携、VoIPアプリ「Viber」が無料で使える「050データSIM」、基本料金+端末代+5分かけ放題込みで月1880円からの「コミコミプラン」の提供など、攻めの姿勢が目立った。他社がなかなか踏み込めないテレビCMまで展開できるのも、体力のある楽天ならではだ。

 イオン、LINE、楽天といった企業が格安SIMを展開することで、格安SIMの認知度が上がり、ユーザーの裾野を広げられたといえる。

●Y!mobileとUQ mobileの勢力拡大

 Y!mobileはソフトバンクが運営しているのでMVNOではないが、格安SIMの領域に進出し、存在感を出している。ドコモやauと違い、ソフトバンクの回線を使ったMVNOがほぼ存在しないため、Y!mobileがその受け皿になっているのが現状だ。

 月500円前後ほどの格安料金ではないが、ソフトバンクと同じ回線、10分かけ放題+2GBで月1980円からというプランは、MVNOと遜色ないか、それ以上の内容だ。3月に「iPhone 5s」を扱い始めたことも話題を呼び、Android Oneの「507SH」(シャープ製)も好調に売れている。何より全国に展開するY!mobileショップの影響力が大きい。スマホに詳しくない層が気軽に立ち寄って相談、契約できるのは、大手キャリアならではの強みだ。

 そんなY!mobileに対抗心を燃やしているのが、KDDIグループのUQコミュニケーションズだ。「UQ mobile」で無料通話90分+2GBで月1980円からというプランを提供したほか、7月にはiPhone 5sの販売も開始。au VoLTE対応機の拡大の伴い、Androidの対応機種も増加した。10月から「UQモバイル、だぞっ」のフレーズでおなじみのテレビCMを全国でオンエアし、認知拡大にも努めている。

 一方で、総務省の「モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン」についての意見募集では、MNO(大手キャリア)の子会社やサブブランドが、他のMVNOではなしえない料金やサービスを提供していることが、MVNO市場の寡占につながるといった意見が挙がっている。2017年はY!mobileやUQ mobileの施策に対し、総務省から「待った」がかかる可能性もゼロではなく、注視する必要がある。

●3分/5分かけ放題の増加

 MVNOの音声通話は、30秒あたり20円の従量課金が主流で、大手キャリアが提供しているかけ放題プランはほとんど見られない。しかし2016年は「3分」や「5分」といった時間と回数限定ではあるが、準かけ放題のオプションを提供するMVNOが増えた。

 3分かけ放題は「U-mobile」「BIGLOBE SIM」「b-mobile」で提供。5分かけ放題は「DTI SIM」「OCN モバイル ONE」「楽天モバイル」「FREETEL」「UQ mobile」「mineo」「J:COM MOBILE」で提供している。

 IIJmioでは、5分かけ放題なら家族とは30分かけ放題、3分かけ放題なら家族とは10分かけ放題になるといった独自のプランを提供しており、差別化を図った。

 なおUQ mobileとDTI SIMのかけ放題は、大手キャリアの音声回線をそのまま使っている。その他は中継回線を使ったもので、楽天モバイルなら「楽天でんわ」、IIJmioなら「みおふぉん」といった専用アプリを使い、プレフィックス番号を付加して電話をかける必要がある。

 数は少ないが、IP電話のかけ放題サービスもある。イオンモバイルは月1500円、「NifMo」は月1300円でIP電話がかけ放題になるオプション、「トーンモバイル」は月700(キャンペーン期間は月500円)円で10分間のIP電話がかけ放題になるオプションを提供している。

 制約は多いものの、通話サービスの選択肢が増えたことで、「通話料金が高い」という格安SIMへの障壁が減りつつある。

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●カウントフリーの開始

 特定サービスの通信量をカウントせず、データ通信の定額料だけで使い放題になる「カウントフリー(ゼロ・レーティング)」が増えたのも、2016年の特徴だった。特にLINEモバイルのLINE、Twitter、Facebookなどを対象としたカウントフリーは注目を集めた。他にFREETELも主要SNSのカウントフリーを進めている。

 またb-mobile、DTI SIM、FREETELで「Pokemon GO」の通信量をカウントしない施策も話題を集めた。

 11月には、BIGLOBE SIMでAbema TV、YouTube、Google Play Music、Apple Musicの通信量をカウントしない月480円の「エンタメ・フリーオプション」を提供。今後はSNSだけでなく、こうした動画、音楽サービスのカウントフリーも増えていきそうだ。

 一方で問題視されているのが、カウントフリーは「通信の秘密」と「ネットワーク公平性」に反するのでは、という点。特に通信の秘密は憲法や電気通信事業法でも言及されているセンシティブな問題だ。

 カウントフリーに対するスタンスが、MVNOによって異なるのは興味深い。例えばLINEモバイルは、カウントフリーを提供するにあたり、ユーザーから個別に同意を取ることを前提としている。一方、FREETELのカウントフリーは全ユーザーに自動で適用されるが、「どのアプリを使っているかを見ているだけで中身を見ていない。中立性も秘匿性も問題ない」(プラスワン・マーケティング増田薫社長※関連記事)との認識だ。

 IIJは「通信を見るのはプライバシーの観点から適当ではないため、今のところ予定していない」(IIJ勝栄二郎社長※関連記事)、UQは「通信の中身を見るというのはあまり感心できない」(UQコミュニケーションズ野坂章雄社長※関連記事)としており、カウントフリーとは距離を置いている。

 議論の余地が残されているカウントフリーだが、「安さ」とは違った差別化ポイントが生まれたことは、注目に値する。

●大容量プランが登場

 2016年は、ソフトバンクの「ギガモンスター」をきっかけに、大手キャリアが20GB〜30GBの大容量プランの提供を始めたが、一部のMVNOもこの動きに追随した。

 エキサイトモバイルでは20GB、30GB、40GB、50GB、DMM mobileでは10GB、15GB、20GB、イオンモバイルでは20GB、30GB、40GB、50GB、楽天モバイルでは10GB、20GB、30GB、U-mobile MAXとb-mobileでは25GBの大容量プランを提供している。

 大手キャリアは20GB+音声込みで月6300円だが、格安SIM(通話SIM)の場合、20GBの音声SIMは月4000円台のところが多い。U-mobile MAXの25GB音声SIMは月2880円でさらに安く、b-mobileの25GBプランも音声が月3180円と安い。

 使い放題プランは、Fon対応公衆Wi-Fiサービスと3Mbpsの無制限通信をセットにしたワイヤレスゲートの「WirelessGate SIM Fon プレミアム Wi-Fi」、IIJをMVNEに据えたU-NEXTの「U-mobile PREMIUM」が目立ったが、大容量プランの影に隠れてしまった感もある。

●コミコミプランの広がり

 データ通信料+音声通話料+端末の割賦代金込みで月1000円台〜3000円台というセットプランが増えたことも印象的だった。楽天モバイルは月1880円〜、FREETELは月1590円〜、Y!mobileとUQ mobileは月1980円〜という価格で提供。ただしこれらの料金は最安値で、選択する端末によっては高くなる。

 MVNOのSIMと端末は、もともとは別々に販売されることが多かったが、大手キャリアのように、端末とセットで契約したいというニーズもある。セット端末が購入しやすくなったことは歓迎したい。

 UQ mobileでは端末の割賦代金を割り引く「マンスリー割」、Y!mobileでは毎月の利用料金から割り引く「月額割引」を提供しており、例えば2社のiPhone 5sは頭金を除けば実質0円で運用でき、データ通信料+音声通話料+割賦代金込みで月1980円となる。端末代金をここまで割り引いているMVNOはなく、コミコミの分野でも2社が大きな強みを発揮している。

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●2017年への期待

 格安SIMの料金競争は一段落し、料金プランは横並びになりつつある。これ以上の値下げは望めないだろう。MVNOにはぜひ、大手キャリアでは実現できないような、多様なプランを提供してほしい。例えばFREETELやエキサイトモバイルの、使った分だけ支払う段階制の従量課金はその1つだ(KDDIとソフトバンクも学割で段階制プランを打ち出したが)。

 他には、料金をより安くする代わりに特定の時間帯のみ高速通信を提供するプラン、動画配信などに役立つ、上りの通信のみ使い放題のプランなどが増えてもいいだろう。お昼を中心とした混雑する時間帯でなかなか速度が出ないMVNOは依然として多く、mineoで実施している、通信品質を保証する「プレミアムコース」のような施策も求められる。

 総務省が1月10日に発表した「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」では、MVNO向けのSIMロックが廃止される。これまでau VoLTE対応のMVNO SIMを使うには、端末のSIMロック解除が必要だったが、2017年8月1日以降に発売される端末なら、SIMロックを解除が不要になる。

 auユーザーにとっては朗報だが、“格安SIM難民”といえるソフトバンクユーザーの選択肢は依然として少ないまま。2015年5月以前に発売された機種は(一部を除き)SIMロックを解除できず、ソフトバンクユーザーが格安SIMに移行するには、端末を買い替えないといけない。特にユーザーの多いiPhoneは、「6」以前はSIMロックを解除できず、Y!mobileのSIMも使えない。「Hitスマホ」「ANAスマホ」といったソフトバンクのMVNOサービスも増えているが、万人向けではない。いっそのことソフトバンクとY!mobileのSIMを相互に使えようにしてほしいが……。余計なコストをかけず(端末を別途購入せず)、誰もが格安SIMを選択肢に入れられるような状況を望みたい。

 MVNO SIMの利用にSIMロック解除が不要になったとはいえ、例えばau系のMVNO SIMではUQ mobileのみiPhoneでテザリングが可能だが、mineoやIIJmio(タイプA)など他のau系MVNO SIMでは、依然としてiPhoneでテザリングが使えないという事態になっている。せっかくのSIMロックフリーなのだから、不可解な制約は解消してほしいところだ。

 UQ mobileやFREETELが販売店を強化するなど、2017年は販路の拡大もさらに進みそう。郵便局でIIJmioを案内しているIIJのように、格安SIMになじみのない層にアプローチする施策も有効だろう。より多くのユーザーが格安SIMを手に取れる環境が広がってほしいと思う。

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