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2017年内にクラウド版Windows 10が登場する?

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/01/30
2017年内にクラウド版Windows 10が登場する?: Windows 10では、継続的なアップデートでOSそのものを定期的に強化していく。Microsoftはこれを「Windows as a Service」と表現している © ITmedia NEWS 提供 Windows 10では、継続的なアップデートでOSそのものを定期的に強化していく。Microsoftはこれを「Windows as a Service」と表現している

【連載】鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:

 MicrosoftがWindows 10をリリースする際に打ち出したスローガンとして、「WaaS(Windows as a Service)」がある。「Windows 10は常に最新の機能が提供される単一のプラットフォーム」ということをアピールするものだ。

 WaaSの念頭には、Webでアプリケーションサービスを提供する「SaaS(Software as a Service)」があると思われる。

 SaaSは、かつて「ASP(Application Service Provider)」と呼ばれていた事業者らが2000年以降に使い始めたマーケティング用語だ。「オンプレミス(On-premise)」の形態で企業ユーザーが手元にハードウェアとソフトウェアの両方を用意して常時メンテナンスを行う必要があった従来のアプリケーション利用形態に対し、Web技術を使ったSaaSではクラウド経由で最新のアプリケーションが提供される。

 システムの保守からセキュリティ管理、アプリケーションの更新まで、全てクラウド側で処理されるため、ユーザーはネットワーク環境さえあれば常に最新のサービスを利用できるわけだ。実際、こうしたクラウドの利用は次第に広がっており、保守的といわれる大手企業においてもアプリケーションや業務部門によっては徐々にシステムのクラウドへの置き換えが進んでいる。

 一度導入されてしまえば、セキュリティパッチや一部機能アップデートを除いて数年間はそのままの環境での利用が続くPCハードウェアやソフトウェアの世界だが、そこに「WaaSの発想をもって新風を巻き起こしたい」というのが、Microsoftの願いなのかもしれない。

 そして今回、新しいうわさとして出てきたのが、この発想を突き詰めたかのような「クラウドWindows」だ。

●軽量版Windowsの「Cloud Shell」とは?

 Windowsの最新動向に詳しいブラッド・サムス氏がPetriで報告した内容によると、Microsoftが「Cloud Shell」と呼ばれる新しいWindows向けのシェルを開発しているという。

 詳細は不明としながらも、同件について触れた文章の中に「lightweight iteration of Windows designed for the modern computing world(モダンなコンピューティング世界向けにデザインされたWindowsの軽量化サイクル)」のような記述がみられたとのこと。具体的な時期にも触れていないが、登場は2017年中としている。

 同氏の説明では、以前にWindows Centralが報じていたMicrosoftが開発中のプラットフォーム横断型統合シェルの「CShell(Composable Shell)」とは異なるもので、2017年5月に米ワシントン州シアトルでの開催が予定されている開発者向けイベント「Build 2017」で詳細が発表される可能性が高いと予測している。

 この情報だけだとあまりにも漠然としているので、もう少し周辺情報を整理していく。まずシェルとは何かだ。コンピュータの世界におけるシェルとは「コンピュータとの対話インタフェース」を提供する仕組みを示す。

 OSにはその中心部にカーネルがあり、シェルはユーザーがカーネルと対話してさまざまな機能を利用するためのインタフェースとなる。UNIXやLinuxの世界では「Bash」などのシェルが存在して、ユーザーが適切なコマンドを入力することで作業をコンピュータ上で行えるようになっている。シェル自体がカーネルとは別のプログラムとして動作するため、その存在を意識しやすい。

 一方で、Windowsは標準で提供されているGUI(Graphical User Interface)がOS本体とほぼ一体化しており、シェルを意識することはほとんどない。一応、「エクスプローラ」がUNIXの世界でのシェルに該当する存在ではあるのだが、Windows Serverの「Server Core」のようにGUIを省いた形でWindows OSがマシンにインストールされない限りは、「Windows OS=シェル」といっても差し支えないだろう。

 なぜこの話をしたのかと言えば、Microsoftが開発中という新しい「Windowsの派生版」が、わざわざCloud Shellというシェルを意識させる名前で呼ばれているからだ。本来のシェルの仕組みを考えれば、このCloud ShellにはカーネルのようなOSのコアに値する存在がなく、あくまでインタフェースのみが提供されるということを意味する。

 これだけ聞くと「クラウド上でWindowsを動かして、手元のマシンに接続されたディスプレイ、キーボード、マウスを使ってデスクトップ環境を利用する、リモートデスクトップみたいなものじゃないの?」と思われるかもしれない。

 しかし筆者は、いわゆるターミナルサービスやCitrixの製品などとは異なる仕組みなのではないかと想像している。

 クラウド上でWindowsを動かしてリモートデスクトップで利用する「シンクライアント」のような仕組みを利用するメリットは、管理の煩雑なデスクトップPCのハードウェアを必要としないために管理者やユーザーの負担が少なく、かつアプリケーションによって実行パフォーマンスを確保するのに高価なPCハードウェアを必要としない点にある。

 その代わり、サーバとネットワークにはある程度のパフォーマンスが必要とされるのだが、クラウド側にデスクトップ環境を置けば、ユーザー企業は据え置きのハードウェアに過大な投資を行う必要はない。恐らく、この仕組みをさらに気軽に利用するための新技術がCloud Shellというわけだ。

 一般に、ターミナルサービスのような仕組みでは手元のマシン専用のエージェントアプリをインストールすることで、サーバとなっている側で実行されているデスクトップ環境の画面情報を適時取得し、ネットワーク回線を通じて圧縮転送された画像を手元のマシン上に表示している。そして手元のマシンに接続されたキーボードやマウスでの入力情報をサーバ側へとフィードバックすることで、離れた場所にあるマシンがあたかも手元にあるかのように操作できるようになる。

 この仕組みの場合、手元のマシンには必要最低限のパフォーマンスさえあればいいので、古いPCのほか、それこそARM SoC(System on a Chip)上で動作しているAndroid OSのような全く異なるプラットフォームにおいてもWindowsデスクトップの最新環境が利用できる。

 ただ、MicrosoftがあえてこのタイミングでCloud Shellのような仕組みを新たに用意するというのは、それなりの理由があると推察する。

●クラウド版Windowsの姿を想像する

 前出のサムス氏をはじめ、同件を報じているメディアの多くは「ARM版Windows 10 for PC」との関係性を指摘する。これは2016年12月初旬に中国の深センで開催された開発者向けイベント「WinHEC Shenzhen 2016」で発表されたものだ。

 ARMプロセッサであるQualcommのSnapdragon SoCが搭載されたデバイス上で、Windows RTやWindows 10 Mobileではないフル規格のWindows 10 for PCが動作可能になる。

 詳細については不明なものの、バイナリ変換やエミュレーションの仕組みを使って既存のx86向けWin32アプリケーションもARMプロセッサ上で動作させられるとみられる。ただ、ARMプロセッサがもともと想定している利用環境のほか、変換作業を仲介することでパフォーマンス上の問題も懸念されており、こればかりは実際に実物が広く提供されて利用してみない限りは分からない状態だ。

 ARM版Windows 10 for PCの提供時期は2017年後半が見込まれている。恐らくは次々回のWindows 10大型アップデート「Redstone 3(RS3)」が提供される9〜10月ごろか、さらにその1〜2カ月後くらいが対応製品の提供開始時期とみられる。5月上旬のBuild 2017で詳細情報を一般公開し、製品の提供はその半年後というわけだ。このパフォーマンス上の不安を抱える新製品を補完すべく提供されるのがCloud Shellではないか、というのがサムス氏の予想となる。

 正直なところ、単にシンクライアントの仕組みを導入するのであれば、現在の最新のARMプロセッサほどの性能は必要としない。最近のCortex-AシリーズはIntelの省電力PC向けプロセッサと比較してもパフォーマンス的にそれほど遜色なく、より多くのタスクをこなすことが可能だ。

 また、シンクライアントの問題として画面描画のために常にネットワーク帯域を消費する問題があり、回線事情の悪い場所では画面のリフレッシュもままならない。

 2017年の念頭記事でMicrosoftがWindows 10の方向性の1つとして「常時接続」を目指していることを紹介したが、現時点ではまだまだシンクライアントと携帯電話回線との組み合わせは早いと筆者は考える。

 Cloud Shellの可能性の一つとして考えているのは、この「回線事情」と「ローカルPCのパフォーマンス不足」の両方を補完すべく「作業内容によってクラウドとローカルでアプリの実行を使い分けることが可能」なハイブリッドな仕組みだ。

 エンタープライズ向けにはクラウド経由での各種管理サービスやセキュリティ対策も包含した月額課金タイプの「Windows 10 Enterprise E3/E5」というWindows 10が提供されているが、コンシューマー向けも含め、ユーザーがより多くの作業をクラウド側で実行すべく提案を行っていくのがCloud Shellなのだと筆者は予想する。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

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