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3つの「ち」を意識する

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/04/30 11:00 ITMedia
(出典:年収ラボ) (出典:年収ラボ)

 会社や仕事などの「戦う土俵」を決めるとき、私たちは取り巻く環境の変化を見据え、それらを参考にしています。そのとき、3つの「ち(血、地、知)」を意識してみましょう。

●「戦う土俵」は3つの「ち(血・地・知)」を意識して選ぶ

 まずはマクロな視点で、環境変化から見てみましょう。私たちの働く環境は、今までの10年間で大きく変化し、グローバル化とIT化の進展という2つの変化が顕著でした。

 グローバル化では、例えば、新興国人材の活用が進み、工場の多くが海外に移りました。これらの変化の中で先進国企業の資本を投下された新興国ではさまざまなチャンスが生まれ、中間層(年間所得が150〜350万円、1万5000〜3万5000ドルを1ドル=100円換算)と呼ばれる人たちが出現してきました。また、2010年には2億5000万人だった中間層は、2020年には6億4000万人になるというデータもあります(「経済産業省の新中間層獲得戦略 アジアを中心とした新興国とともに成長する日本」)。

 少し古いデータですが、「World Distribution of Income(世界の国別所得分布)」という、コロンビア大学の論文に掲載されたものによると、年間の所得分布は日本や米国などの先進国は100万〜1000万円の所得の範囲に、インドや中国は10万〜100万円の範囲にほとんどがいることが読み取れます。

 成長いちじるしい新興国にいる彼らは、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」に描かれているような、がんばればがんばるほど生活がよくなる環境にいるので、非常にモチベーションが高い人たちです。例えば、この図から年収100万円の人は世界中に日本の人口と同じ1億人以上いると分かります。海外にアウトソースできる仕事はどんどん海外に流出し、この新興国の人材がこれから私たちの仕事を奪いに来るのです。

 IT化では、モバイルインターネットの時代が到来し、世界中の人たちがつながり、情報を共有し、誰でもどこにいても必要な情報を入手できるようになりました。各種クラウドサービスの充実も大きな変化でしょう。

 マーク・ザッカーバーグ氏がハーバード大学の学生が交流を図るための「ザ・フェイスブック」のサービスを開始したのが2004年でした。iPhoneは米国で2007年6月29日に発売されました。ネットワークの通信環境も大幅に高速化しています。クラウドソーシングなどを活用すれば、個人でも世界中の人たちにプログラミングやロゴデザインの仕事の発注が可能になりました。

 これからの10年もこの流れは変わらず、さらに変化は進むと考えられます。つまり、新興国の優秀な人材との競争はますます激化するでしょう。このような環境変化を見据えた上で、私たちはどう仕事を選べばいいのでしょうか?

 勝負の定石は、勝てる場所を選び、得意なスキルを用いて有利に戦いを進めることです。日本人が有利に戦える仕事があるなら、それをかけ算しない理由はありません。これがグローバルな環境での過当競争を避けるコツです。

 戦う土俵(会社や仕事)は、日本人にとっての優位性の有無の度合いに応じて大きく3つの分類があります。それを3つの「ち」と呼びます。日本人に有利なものから順番に、「血」、「地」、「知」です。

 1つめの「血」はもっとも日本人であることが有利に働くため、グローバルな競争にそもそもさらされずに有利に戦える可能性が高い仕事です。究極は日本人であることが仕事を得る条件になっている場合です。

 2つめの「地」は、土地固有の事情にしばられる仕事で、その土地に長く住んでいる土地勘がある人や、その土地の独自のルールに習熟している人が有利になる仕事です。この2つの「血」と「地」の土俵は、日本人プレミアム(日本人特有の強み)をかけ算することで、グローバル化、IT化の影響をそれほど受けない仕事です。

 一方で、3つめの「知」は、日本人だからという優位性がない戦いになります。例えばグローバル企業で働くような場合です。

●日本人プレミアムのある土俵「血」での戦い方

 「血」で一番強いのが日本人であることが要件となる仕事です。例えば、国家公務員や政治家です。国家公務員の受験資格を調べてみると、国家公務員採用試験を受けられない者という項目の中に、日本の国籍を有しない者とはっきり書いてあります。政治家についても、被選挙権を持つのは、衆議院議員総選挙では、日本国民で年齢満25年以上の者(公職選挙法10条1項1号)とあり、参議院議員通常選挙では、日本国民で年齢満30年以上の者(公職選挙法10条1項2号)とあります。

 「日本人である」というかけ算なしには選べないこれらの仕事は、グローバルな市場で戦うという土俵からは切り離され、特権的に保護されている仕事です。定石通りに戦う場所を選んでいると言えます。

 一方で、そういった特権がない仕事はどうなっていくのでしょうか? 「『年収100万円も仕方ない』ユニクロ柳井会長に聞く」(朝日デジタル、2013年4月23日付)という記事での、ユニクロの柳井さんの発言に目を向けてみましょう。

日本の店長やパートより欧米の店長のほうがよほど高い。日本で賃下げをするのは考えていない。(中略)10年前から社員にも言ってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値が付けられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない

 グローバル化が進展した将来は、相当がんばらないと給料は維持できないということです。

 このような視点で見ると最近の若者が、日本人限定採用の地方公務員となり、区役所の受付窓口業務をやったほうがよいと考えるのも仕方ないかもしれません。公務員を目指す若者は保守的ではなくて、グローバルな戦いという土俵に入ることがそもそもセンスがないと考え、孫子の兵法にもあるとおり、グローバルな戦いを戦わずして勝つを実践しているかしこい選択なのかもしれません。しかし、私個人としては、身につけられるスキルが限られ、自分でコントロールできることが少なく制約も多いこれらの仕事は、これからの時代のベストのキャリアとは思えません。

 「血」には、日本人であるがゆえに自然と身についている感覚やセンスを生かせる仕事も含まれます。

 日本人の人口は、1億2600万人(2011年)。国連の2011年版『世界人口白書』によると、2011年10月31日時点での推計では、世界人口が70億人に到達したとされています。これは、もしも日本人であること自体を強みとしてかけ算できるなら、これからのグローバル化時代での競争という土俵では、約70分の1のレア人材になり得るということです。

 日本人であるがゆえの強みである「日本人プレミアム」は、日本で生活していると当たり前すぎて意識することがありません。つまり、日本人の強みを意識的に考えたことがない人、または海外で生活をしたことがない人は、自分がすでに持っている日本人ならではの強みに気付くことができないのです。グローバルの厳しい競争に放り出されたときに、せっかくの70分の1になれる強みを使わない手はありません。

 あなたが世界の市場でいきなり70人に1人の人材、つまり上位1.4%の人材になれる仕事の1つとして、「美容師」を考えてみましょう。この職業には日本人の強みである「細部へのこだわり」が生きてきます。

 「年収ラボ」によると、美容師の平均年収は、男性292万円、女性平均262万円、時給1200円と出てきます。国内だけでの仕事や年収を考えると魅力的に映らないかもしれません。ところが海外に出れば事情が異なります。

 私が米国に留学していたときの話です。私は留学当初、とにかく英語の発音がひどくて、特に大学の外での日常生活には大変苦労していました。そのため、髪の毛も長い間切りに行けませんでした。それでも勇気を振り絞り、大学の前の通りにある美容院に行ったときに悲劇は起こりました。

 値段は7〜9ドル程度だったその美容院に入り、つたない英語でジェスチャーも交え、今の全体の印象を変えないようにカットをお願いしました。散髪が進み、女性の美容師に「サイドバーン(Sideburns)はどうする?」と聞かれたのですが、サイドバーンが何か分かりません。それにあたる場所を指差してくれればいいのですが、アメリカ人はそんな気を利かせることが苦手です。結局、「おまかせで」と答えた次の瞬間、揉み上げを耳の上のところで地面に対して直角にバッサリとバリカンでカットされてしまいました。全体的には坊ちゃん刈りで、揉み上げだけ直角ではまるで芸人です。この髪型はあまりにもひどいと思って坊主にしてもらい、11月の寒空の中、とぼとぼと寮に帰りました。

 その後、その美容院には二度と行かず、日本人がいる美容院を探して通うようになりました。1回4000〜5000円と、現地では割高でも同じ店に通いました。

 この美容師さんが、日本にいたときに切ってもらっていた美容師さんに比べて、特別うまいわけではありません。けれど、細部もおろそかにしない日本人の強みを買って私は通っていたのです。実際、その日本人の美容師さんも、ある程度英語が話せるようになれば、日本人がいる街ならどこでも仕事があると教えてくれました。

 「細かな違いに気を配る」という、日本人が当たり前にできることを生かせば、上位1.4%の人材になることは不可能ではないのです。(つづく)

[堀場英雄,Business Media 誠]

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