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8億人が利用するサービスはここから生まれた 中国ネット最大手・Tencentの素顔

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/06/11 ITMedia
8億人が利用するサ���ビスはここから生まれた 中国ネット最大手・Tencentの素顔: ペンギンがTencentのシンボルキャラクターだ © ITMedia 提供 ペンギンがTencentのシンボルキャラクターだ

 「ただ今、当機は北京国際空港に到着しました」

 ある日の正午過ぎ、飛行機が空港に着陸するや否や、堰を切ったかのように機内で一斉に同じ着信音が鳴り響く。隣の席に座る女性の手元をのぞくと「機内モード」の解除から最初にタップしたのはペンギンのイラストが描かれたアプリ。メッセージ画面を開くと、「ようやく着いた。早く家に帰りたいわ」と文字を打ち、送信する。

 彼らが使っているのは、中国のインターネットサービス大手、Tencent(腾讯)が提供するインスタントメッセージングツール「Tencent QQ」および「WeChat(微信)」だ。

 日本ではあまり馴染みのない同社だが、中国のハイテク関連では、ECサービスのAlibaba(阿里巴巴)、検索エンジンサービスの百度(Baidu)と並びトップを走る企業だ。中国ではこのビッグスリーの頭文字を取って「BAT」などと称される。

●時価総額は1200億ドルを超える

 Tencentの主力となるサービスは、上述したQQとWeChat。QQは月間のアクティブアカウント数が8億4800万人で、同時オンラインユーザー数は2億人を超えている。一方のWeChatも新興のサービスながら、アクティブアカウント数は月間で3億9600万人となっている。なお、WeChatは、日本発の無料通話・無料メールアプリ「LINE」と競合する形で、アジア地域を中心とする市場シェア拡大でしのぎを削っている。

 そのほか、PCおよびモバイル向けゲーム「QQ Game」や、ソーシャルネットワーキングサービス「Qzone」、国内の主要銀行と提携し、現在までに2億アカウントを所有するモバイル決済サービス「財付通」(同様のサービスにAlibabaの「アリペイ」がある)など、提供するサービスは多岐にわたる。

 Tencentの株式時価総額は約1200億ドル(約12兆3152億円)を超え、百度(約554億ドル)の倍以上の差をつける(Alibabaは今年8月に米国で上場予定)。日本企業と比較すると、トヨタ自動車(約20兆2811億円)とソフトバンク(約9兆2991億円)の間に位置する企業規模である。

 2013年通期の売上高は604億3700万元(約9669億9200万円)、純利益は155億6300万元(約2490億800万円)に上る。この10年間で売り上げは約82倍と大きく伸ばしている。

 このように急成長を続けるTencent。その要因に迫るべく、中国・広東省深センにある本社を取材した。

●深センの発展とともに成長

 Tencentは1998年11月に創業。創業者であり現在もCEOを務める馬化騰(Pony Ma)氏は、1971年生まれの広東省汕頭市出身である。1993年に深セン大学コンピュータサイエンス学部を卒業し、China Motion Telecomでインターネットのページングシステム開発に従事した後、Tencentを設立した。

 創業間もない1999年2月にQQをリリースし、その後の事業の基盤を築き上げると、2004年6月に香港証券取引所に上場した。2012年にはKDDIと協業し、QQチャットアプリのローカライズ版をauのスマートフォン向けに提供した。

 創業以来、Tencentが本社を構えるのが深センだ。香港の北部に位置する深センは、かつて中国の指導者・トウ小平氏が推進した改革開放政策によって、1980年に経済特区として指定されると、今日に至るまで急速な発展を遂げていく。1980年にはわずか33万人だった人口が、2012年末には1054万人に達したほか、2008年には一人当たりのGDPで中国の都市として初めて1万ドル台を超えた。この30数年間で巨大都市へと変貌した深センに歩調を合わせるかのように、Tencentも成長してきたといって過言ではない。

 なお、IT産業の優遇政策に積極的な深センには、Tencentのほか、通信機器メーカー大手のHUAWEI(華為技術)などの本社がある。

●エリート学生でも入社は困難

 現在、Tencentの本社には4000人以上の社員が働く。周辺のオフィスビルに入居する社員をすべて合わせると約2万人に上るという。社員寮などからオフィスまでは通勤用のシャトルバスが運行しており、早朝にはバスが連なっている光景を目にすることができる。地上39階、地下3階から成る自社保有の本社ビルは、2009年8月に完成。しかしながら、早くも既に手狭になりつつあり、2016年に開業予定の新たなオフィスビルを近隣に建設中だ。

 本社ビルのエントランスをくぐると、内部は3階までが吹き抜けとなっており、開放的な空間が広がっている。1階にある受付カウンターの前に設置されている大型スクリーンには、QQの同時オンライン数とユーザーの位置がリアルタイムで表示されている。

 執務エリアは、欧米企業のようにひとりひとりの区分けされたスペースがあり、社員は広々と働いている。ユニークなのは、ほとんどの社員が簡易ベッドと寝袋を小脇に置いていることだ。中国の南方の企業は昼休みが2時間もあることが多く、これはTencentも同様。ランチの後に頭と身体をリフレッシュしたい社員は、ベッドにもぐり込み、昼寝をするそうである。

 また、各フロアには、リラックススペースを設置。ドリンクや軽食のほか、筋肉トレーニング器具、さらにはテーブル・フットボールやビリヤードなどもある。

 社員食堂は3フロアに分かれ、それぞれのフロアで提供される食事メニューはすべて異なる。社員はモバイル端末や社員カードにチャージした電子マネーで支払う。この決済システムはもちろん同社のモバイル決済サービスである財付通だ。食堂は夜間も営業しており、残業の多い社員に対しては食事手当として月に数回、無料で提供される。

 前々回の記事で紹介した百度と同様、Tencentの本社も若い社員で溢れている。平均年齢は27〜28歳で、男女比は5:5。半数の社員がエンジニア職だという。毎年500〜1000人が新卒入社するが、中国トップレベルの北京大学や清華大学の学生でも入社できるのは一握りと、とにかく競争倍率が高い。

 その理由として、一般的な国内企業と比べて給料の高さもさることながら、これだけの巨大なユーザーを抱えるサービス事業にかかわれるという点に多くの学生が魅力に感じ、同社の門をたたくのだという。

 次回は、経営幹部の一人、ソーシャルネットワークグループ統括責任者の湯道生(Dowson Tong)氏に対するインタビューを基に、Tencentがサービス開発において核とする哲学や、これほどまでにユーザーに支持される秘けつを明らかにしていく。

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