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au夏モデルの独自性/au WALLET提供の狙い/ソフトバンクが発表会を行わない理由

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/05/10 ITMedia
au夏モデルの独自性/au WALLET提供の狙い/ソフトバンクが発表会を行わない理由: au IDにひもづいたプリペイド型電子マネーの「au WALLET」。auユーザーが申し込めるサービスで、プラスチックカードが発行される。写真右のように、MasterCardに対応した通常のクレジットカードの読み取り機で決済できる © ITMedia 提供 au IDにひもづいたプリペイド型電子マネーの「au WALLET」。auユーザーが申し込めるサービスで、プラスチックカードが発行される。写真右のように、MasterCardに対応した通常のクレジットカードの読み取り機で決済できる

 夏商戦が本格的に幕を開けた。トップバッターとなったのがKDDI。同社は5月8日に発表会を開催し、大画面やバッテリーの持ちをテーマに据え、スマートフォン6機種とタブレット2機種を発表した。ほとんどのモデルが、先行公開していたキャリアアグリゲーションに対応するほか、TD-LTE方式のWiMAX 2+も利用できる。また、3月にコンセプトのお披露目をしていた「au WALLET」も5月21日に開始する。発表会ではau WALLETの詳細も紹介した。

 ネットワーク、端末、サービスと盛りだくさんだったKDDIに対し、ソフトバンクは夏の発表会を開催しない方針だ。端末は適宜発表していくとして、4月25日には「AQUOS Xx 304SH」を5月下旬に発売することを明らかにした。対照的な両社だが、背景はある程度共通している。裏にはスマートフォンが一般的になり、差別化がしにくくなったキャリアの事情も見え隠れする。今回の連載では、この2社の夏商戦に向けた戦略を解説していきたい。

●独自性にこだわったKDDIの夏モデル

 夏商戦に向けてKDDIが用意したのは、大画面やバッテリーの持ちにこだわったスマートフォン6機種に、タブレット2機種。「価格競争ではなく、価値訴求でauという会社(ブランド)を知ってもらいたいと考えている」(代表取締役社長 田中孝司氏)というように、春モデルに続き、差別化を意識したラインアップに仕上がった。

 「新しいauならではのモデル」(田中氏)として紹介されたのが、LGエレクトロニクスと共同開発した「isai FL」。秋冬モデルとして登場した「isai」の後継機で、フルHDを超える2K(ワイドQHD)のディスプレイを搭載した、異彩を放つモデルだ。両社のコラボレーションで生まれたUIには、新たに「isaiモーション」という機能が加わった。端末を振ることで壁紙を変えたり、現在地付近の情報を得られたりといった効果が得られる。

 もう1つの差別化の軸になりそうなのが、京セラ製の「TORQUE G01」。京セラは、北米市場にプリペイドやタフネススマートフォンを投入し、シェアを伸ばしていたが、そのブランドを“逆輸入”した格好だ。田中氏がTORQUEを紹介する際に、「かつてG'zという端末があった」と述べていたように、KDDIはNECカシオ製の「G'z One」をスマートフォンでも販売してきた経緯がある。万人受けはしないが、必要としている人には手放せない端末で、後継機を待ち望む声もあったという。

 一方で、ご存じのとおり、NECカシオはスマートフォンの開発から撤退してしまった。こうした中、後継機を開発でき、しかも海外で同様のモデルを販売しきた京セラに白羽の矢が立ったというわけだ。スペック的にはほかのモデルよりやや見劣りして、キャリアアグリゲーションやWiMAX 2+にも対応しないが、MIL規格対応の頑丈さで一定の需要はつかめそうだ。

 これら2機種のスマートフォンに加えて、タブレットではASUSの「MeMO Pad 8」を導入する。8インチのディスプレイを採用し、ほかの製品とは異なり「国内初のIntelチップを搭載したモデル」(田中氏)となる。日本でもASUSなどのメーカーが独自の販路でIntelのチップを搭載した端末を発売していたが、キャリアとして導入するのは初。省電力性能に定評があり、価格面でも有利なことから、2台持ち用の「シェアプラン」を普及させるきっかけになるかもしれない。

 他社と差別化を図れるモデルを用意した一方で、人気のブランドをきっちり押さえているのは、秋冬春と同じ戦略だ。「GALAXY S4」は導入しなかったが、「GALAXY S5 SCL23」は他社に先駆けて発表できた。Xperiaは、「Xperia Z2」こそ発表されなかったが、機能の近い「Xperia ZL2 SOL25」をラインアップに取りそろえている。「AQUOS SERIE SHL25」は3辺狭額縁のディスプレイを採用したフラッグシップモデルで、こちらも今までのauには欠けていた5インチ超、3辺狭額縁のAQUOSだ。Xperiaのタブレットラインも初めて採用しており、「Xperia Z2 Tablet SOT21」が発売される。

 すべて5インチ以上で、他社にあるコンパクトモデルが手薄だが、これについて田中氏は「小さい画面がいいお客様もいる」と認めつつ、「(大画面モデルを)提案していきたいという思いが少し強い」とコメント。グローバルではハイエンドモデルに5インチ以上のディスプレイを搭載するのが当たり前になっている現状を踏まえ、国内でもこうしたトレンドは根付くと考えているようだ。

 これらに加えて、「HTCのJシリーズも、新しいものを出す予定。少し時期はずれるが、乞うご期待」(田中氏)というように、HTCの新機種も準備している。

●リアルな決済市場をターゲットにした「au WALLET」

 田中氏が「本日一番のWOW」と語っていたように、端末の発表以上に力が入っていたのが、3月にコンセプトを先行して披露していた「au WALLET」だ。以前の連載でも解説したように、このサービスはauユーザー向けにプリペイド型の電子マネーを発行するもの。MasterCardと提携したことで、同ブランドのクレジットカードが読み取れるリーダー/ライターであれば、au WALLETも読み取れる仕様になっている。そのため、開始当初から世界中の3810万加盟店で利用できる。

 KDDIが子会社化したWebMoneyの技術も入れ、スマートフォンで残高を確認したり、auのキャリア決済を使ってチャージしたりといったことも可能だ。田中氏が「バリューチェーンを拡大したい」と述べているのは、こうした仕組みがあることに加えて、リアルな店舗での決済にもポイントが付くため。

 通信料の支払いや、オンラインでのショッピングに加えて、生活に密着した毎日の買い物もauのポイントプログラムに組み込んでいるのがこのサービスの特徴だ。仕組み的にはクレジットカードに近いため、決済とポイント加算も同時に行える。電子マネーとポイントカードのいいとこ取りをしたサービスともいえるだろう。

 田中氏が「ユーザーへの還元だと思っている」と話すように、キャンペーンも充実させた。チャージについては、初回チャージに10%のボーナスを付けたほか、KDDIグループのじぶん銀行からのチャージでも5%が増額される。auショップには「au WALLET ウェルカムガチャ」を設置。抽選で最大3000ポイントが当たるようになっている。また、申し込み時にあらかじめ1000円分がチャージされているなど、現金の大盤振る舞いで普及を促進する。

 ポイントについても、セブンイレブンやマツモトキヨシ、ビッグエコーなどで還元率を上げており、お得感を演出する。auのポイントプログラムとも連動するため、通信料1000円ごとに10ポイントがつく。

 ただし、おサイフケータイやNFCといった、スマートフォンに搭載される非接触IC技術は活用されていない。あえてプラスチックカードを発行したのは、「カードの方が分かりやすい」(田中氏)ためだ。

 おサイフケータイの活用率は高くても対応端末の2〜3割という調査結果もある。この数字を高いと見るか、低いと見るかは判断が難しいが、電子マネーやポイントカードを個別にインストールしなければならないなど、リテラシーの低いユーザーにとってのハードルは決して低くない。機種変更時の手続きが煩雑で、積極的に活用しているユーザーにとってもハードルはある。また、iPhoneが非対応なのも、おサイフケータイの弱点といえるだろう。

 プラスチックカードなら使い方はクレジットカードと同じ。誰でも簡単に利用でき、端末に依存しないで済む。表向きはこのカードに決済をまとめたいという理由で付けられた「グッバイ、おサイフ」というau WALLETのキャッチコピーだが、背景にはおサイフケータイに縛られたくないという思いもありそうだ。

 2月に開催されたMobile World Congressでは、KDDI会長の小野寺正氏が「(ケータイに搭載する)FeliCaチップは我々の負担、最終的にはエンドユーザーの負担で載せたが、我々には何のメリットもない。私はあのビジネスはおかしいと思っている」としながら、au WALLETについても「ああいう形でやらざるをえない」と語っている。

 一方で、世界的に規格の共通化が進むNFCの決済については「あると思う」(小野寺氏)と肯定的だった。au WALLETのカードにはNFCも搭載されており、現時点では上記のガチャを回すトリガーにしかならないが、今後、活用例が増える可能性もある。まず自社で進められるプラスチックカードを発行し、それが普及したのちにNFCの決済に移行していく――KDDIは、こうした長期的なシナリオを考えているのかもしれない。

●発表会を当面行わないというソフトバンクだが……

 夏モデル全8機種に、au WALLETやキャリアアグリゲーションといったサービス、技術までを華々しく発表したKDDIに対し、ソフトバンクモバイルは動きが静かだ。4月24日には、3辺狭額縁のIGZOディスプレイを採用した「AQUOS Xx 304SH」を発表しているものの、発売は5月下旬なので店頭に並ぶまでにはもう少し時間がかかる。同社は、夏モデルといった形で、まとめて端末を紹介する発表会を見送る方針だ。代表取締役兼CEOの孫正義氏によると、その理由は次のようなところにあるという。

 「これまで、商品発表会を年に2回、3回とやってきたが、それは20機種、30機種そろえる必要性があったから。今はiPhoneと数機種のスマートフォン、その数機種もみんなAndroidになる。スマートフォン以外(従来型ケータイ)は、技術の進化がほとんどなくなり、過去に発表されている機種を焼きまわしているにすぎない。iPhoneについては、(発表会を)Appleがやっている。Androidについては、(機種間の)機能の差がそれほどない。発表会という形式の役割は終わったと認識している」

 iPhoneの発表は確かにメーカーのAppleが行う。iPhoneはキャリアブランドで販売される端末ではないので、それは当然だ。一方で、Androidについても、他社とラインアップがそれほど変わらなくなった。それをあえてキャリアが発表会を開いてまで推す必要はなくなったというのが、孫氏の考えだ。iPhone比率が3キャリアの中で最も高いソフトバンクならではの、合理的な判断ともいえるだろう。

 とはいえ、Androidの機種に差がなくなったかといえば、必ずしもそうではない。むしろ、ラインアップを決めるのはキャリアであり、ある程度は仕様の要求も出しているのが現実だ。KDDIのisai FLのように、共同開発で他キャリアにない機種をそろえる手も残されている。「差がなくなった」というより、「差をつけられなかった」のが現実ではないだろうか。XperiaやGALAXYといった、他社にあるブランドもなく、横並びになったどころか、むしろAndroidのラインアップは手薄にすら見える。

 端末以外のテーマでも話題性に欠いていた。キャリアアグリゲーションやVoLTEといったLTE関連の新サービスは、すぐにスタートしない。キャリアアグリゲーションが始められないのは、900MHz帯を利用したLTEの開始が遅れていることも影響しているようだ。同周波数帯はMCAなどの既存ユーザーが帯域を空けないとソフトバンクが利用できない。孫氏によると、「お金を用意して、機器を渡して、説得してと、非常にまどろっこしいプロセスが必要になる」という。結果として、春に開始予定だった「プラチナバンドのLTE」が「夏ぐらいからは電波が吹けると思う」(同)と遅れてしまった。

 孫氏が「キャリアアグリゲーションは900MHz帯と2GHz帯で行うことができる」と述べていたように、ソフトバンクモバイルはこれらの周波数帯を足し合わせて、速度を上げることを計画していたようだ。ところが、900MHz帯でLTEがスタートしていなければ、当然ながらキャリアアグリゲーションはできない。また、VoLTEについても導入の表明はしているものの、時期が明らかになっていない。新機種はもちろん、それを支えるネットワークの話題にも乏しかったというのが実情だ。

 このように要素を挙げていくと、夏商戦では、あえてソフトバンクモバイルが発表会を開く意義がなかったようにも見える。孫氏は「“状況が変わるまで”当面は見送ると」と述べていたが、端末やネットワークがそろった段階で「状況が変わった」ことになるのかもしれない。そして、以前から孫氏が述べているSprintとの共同調達が実現すれば、再び発表会を開く可能性は高くなりそうだ。

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