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BABYMETALにはYMOとの共通点がある? 円堂都司昭が改めて考察する、世界的成功の理由

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/04 株式会社サイゾー
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 9月19日、20日に催された『BABYMETAL WORLD TOUR 2016 LEGEND -METAL RESISTANCE- RED NIGHT & BLACK NIGHT』の東京ドーム2公演は、BABYMETALという存在の巨大化ぶりをみせつけた。 (関連:BABYMETALの世界的“熱狂”はどこまで広がる? 新作『METAL RESISTANCE』までの歩みから読む)  このメタル・ダンス・ユニットは2010年の活動開始以来、国内で支持を拡大しつつ、海外進出を果たした。その後は、逆輸入のような形でさらに注目度が高まり、人気が増幅してきた。東京ドーム公演は現時点までの集大成といえる一大エンターテインメント・ショーだったし、BABYMETALの海外での成功を印象づけた、今年4月のイギリスでのウェンブリー・アリーナ公演を収録したDVD『LIVE AT WEMBLEY』も11月23日にリリースされる。また、彼女たちは、アメリカの大物ロック・バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズが12月に行うイギリス・ツアーにスペシャル・ゲストとして参加する。快進撃はまだ続きそうだ。  それにしても、BABYMETALがこれほどまでの成果を上げると予想した人が、初期にどれだけいただろうか。デビュー曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」は、アイドル・ポップスとヘヴィ・メタルを強引に合体させたアレンジで、いかにも企画モノという第一印象だった。  AKB48のブレイク後、多数のアイドル・グループが競争を繰り広げるなか、音楽面でも様々なチャレンジ、実験が試みられた。ももいろクローバーZの「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」にはいかにもメタルなギター・ソロが挿入され、後に彼女たちはアメリカの老舗ハード・ロック・バンド、キッスとコラボ・シングルを発表した。でんぱ組.incはアメリカのヒップホップ・ユニット、ビースティ・ボーイズがやかましいバンド・サウンドで録音した「サボタージュ」をカバーし、BiSがノイズ・バンドの非常階段とコラボしてBiS階段を結成したりもした。  アイドルという存在が真ん中にいるのであれば、どんな傾向のサウンドでもアイドルの曲として成立するはず。そんな姿勢でサウンドの選択肢が広げられていったわけだ。しかし、多くのグループにとって、アイドル的な「カワイイ」と対照的なやかましい音というのは、基本的には飛び道具として扱われ、いろんな曲調を歌うなかでの一つ、あるいは一時的な企画と位置づけられていた。  さくら学院の重音部として出発したBABYMETALも、当初は母体であるアイドル・グループから派生した一時的な企画モノに思えた。だが、このユニットは、メタルにこだわり続けることで、現在に至るまでの予想外の発展をみせる。  多数のグループ乱立に伴い、一時はアイドル戦国時代というフレーズがしきりにいわれた。戦いだから武器が必要であり、当然、飛び道具も使われるのだ。そして、アイドル戦国時代に「天下統一」を目標として打ち出したのが、6人時代のももクロだった。だから、シンガポール公演を経験しただけで、まだ海外進出が本格化する以前のBABYMETALが、2013年に「世界征服」を目標に掲げた時には、「天下統一」のパロディのようなもんだろうと受けとめた。ちなみに元モーニング娘。の加護亜依が結婚・出産後に若い女子メンバーと組んだユニット、Girls Beat!!による2014年のデビュー・シングルは『世界征服』と題されていた。加護の場合、身辺であれこれあって世界征服どころかユニットを脱退することになったが、BABYMETALの場合、征服のほうはともかく、世界的アーティストになる夢は現実化したのだ。  BABYMETALは、メタルに特化して継続的に活動することで国境を乗り越えた。このジャンルには様々なバリエーションがある。とはいえ、たとえ国が違っても、メタルといえばハードなギターとヘヴィなリズムによるこんなサウンドーーといった漠然とした共通認識はある。だから、大御所メタリカをカバーするキッズ・バンドとか、デスメタルのボーカルを真似る幼児などの動画が面白がられ、再生回数を増やしたりする。メタルの荒々しさと子どもの可愛らしさとのイメージのギャップが、広く微笑を誘う。  MOAMETALとYUIMETALは特にそうだが、BABYMETALは年齢よりも幼くみえるユニットだ。「カワイイ」アイドルである彼女たちに対しては、“子ども・ミーツ・メタル”的なミスマッチの面白さが、人々の興味の入口になっていたと思う。だが、実際にみてみると、パフォーマンスの見事さに引きこまれていく。  BABYMETALは昨年、ジューダス・プリーストのボーカルでメタル・ゴッドと称されるロブ・ハルフォードと共演した。彼とSU-METALが並んで歌う光景は、まるでお爺ちゃんと孫みたいだった。その動画から思い出したのが、2009年に少年ギタリスト(当時9歳)の宮澤佑門が、オジー・オズボーンとステージで共演した光景だった。メタルは歌舞伎と似て、「型」を継承する伝統芸能的なところがある。だから、年長世代から技や精神を受け継ぐというドラマ性が、わかりやすく成立する。  ただ、日本の少女たちの世界的成功に関しては、批判や揶揄もあった。なかでもピーター・バラカンの“BABYMETALは「まがいもの」”発言は、ファンの激しい反発を呼んだ。だが、ふり返ってみればバラカンは、英語詞への関与などYMO関連の仕事によって日本での知名度をあげた人物であった。このことは、考えようによっては興味深い。  YMOも、初期(1979〜1980年)の海外ツアーの模様が国内で報道され、逆輸入的に日本での人気を高めたバンドだった。彼らが欧米で話題になったのは、第一にコンピュータを使ったテクノというサウンド・コンセプトが、新鮮だったからだ。当時、シンセサイザーを多用したポップスの波が、米英でも同時多発的に起こりつつあった。テクノが音楽における世界の共通語になり始める時期だったのである。  それだけではない。YMOのメンバーは中国の人民服風の衣裳を着て、メロディにもオリエンタルなフレーズを混ぜるなど、欧米人が思う「まがいもの」の東洋を意図的に演じる戦略性があった。また、彼らのツアーに参加した矢野顕子が数曲、無邪気な幼女のようなアクの強いボーカルで注目される一方、渡辺香津美のフュージョン系ギタリストとしての力量が評価されもした。  これに対し、BABYMETALは、「カワイイ」+メタルというミスマッチの企画モノで始まっている。いわば「まがいもの」でありながら、海外との共通語であるメタルというコンセプトを徹底させることで、独自のポジションを築いた。メタルにアイドルという新たな選択肢を加えたのである。  そして、「メギツネ」のように東洋趣味を織りこんだ曲がありつつ、少女たちが童心を感じさせるパフォーマンスを披露し、神バンドがテクニカルな演奏を繰り広げるという構図だ。「まがいもの」を特異な優れものにする方程式を成立させた点で、BABYMETALはYMOと共通したところがあった。まあ、バラカンは認めないだろうけれど。  ファースト『BABYMETAL』では、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」に代表される通り、シリアスとギャグが混在する意味不明なパワーがあった。一方、セカンド『METAL RESISTANCE』では、シリアスとギャグが色分けされ、曲ごとにサウンドの傾向も整理された。メンバーの年齢が上昇したこと、海外への意識が高まったことが、曲が変化した背景にはあるのだろう。だが、SU-METALの凛としたボーカルを中心にして、神バンドの高度な演奏とアイドル的な「カワイイ」を体現したダンスが合体するライブは、相変わらず意味不明な面白さに満ちている。来年の彼女たちは、どのような展開をみせるのだろうか。(円堂都司昭)

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