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CIOはデジタル変革にどう立ち向かうべきか

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/10/02 12:00
CIOはデジタル変革にどう立ち向かうべきか: 会見に臨むKPMGコンサルティングの松本剛 執行役員パートナー © ITmedia エンタープライズ 提供 会見に臨むKPMGコンサルティングの松本剛 執行役員パートナー

 「企業のデジタル化への取り組みが、ここにきて計画から実行の段階に入ってきた。それに伴い、CIOにも明確な役割が求められるようになってきた」――。KPMGコンサルティングの松本剛 執行役員パートナーは、同社が先頃発表した「Harvey Nash/KPMG 2017年度CIO調査」についての記者説明会でこう切り出した。

 デジタル化に向けたCIOの役割とは何なのか。同調査結果の概要については発表資料をご覧いただくとして、本コラムでは「役割」に執着して調査レポートを読み解いて考察したい。なお、同調査は世界86カ国から4498人(日本は約60人)のCIOおよび技術管掌幹部を対象に2016年12月から2017年4月にかけて実施したという。

 まず、図1は、企業組織のデジタル化における明確なビジョンと戦略の有無を聞いた調査結果である。2015年から2017年にかけての推移で、「全社的な戦略がある」との回答が伸びているのがポイントだ。ちなみに同回答の2017年は41%となっているが、これを組織規模別に分けると、大規模が53%、中規模が42%、小規模が39%とのことだ。

 この図1の状況を踏まえたうえで、図2をご覧いただきたい。この図は、経営陣がITリーダー(CIO)に対応を求める主要なビジネス上の課題は何かを聞いた調査結果である。

 この結果で不可思議なのは、デジタル化が進んでいるのであれば、「革新的な新製品・サービスの開発」や「顧客・見込顧客とのエンゲージメントの強化」といった点に関心が集まって上位に来そうなところだが、むしろ上位は「安定的かつ一貫性のあるITの提供」「オペレーションの効率性向上」「業務プロセスの改善」「コスト削減」と、従来のITシステムに対する課題と変わらないことだ。

 松本氏はこの点について、「企業のデジタル変革はまだまだこれからとの見方もある一方、デジタル化が全社的な戦略になってきた中で、やはりCIOにはITシステムと合わせてデジタルの推進についても全社的な観点からしっかり管理してほしいとの要望が課題となって表れたとも見て取れる」と説明した。ちなみに、図2で1位の「安定的かつ一貫性のあるITの提供」は、2016年の52%から2017年に63%へ一気に跳ね上がっている。つまりは、この点がデジタル変革においてもCIOに求められている明確な役割といえる。

●デジタル化の目的によって異なるCIOの立ち位置

 一方、企業のデジタル戦略を推進するリーダー役として、かねて注目されているのがCDO(最高デジタル責任者)である。部門を横断して社内外のデジタルビジネスを統括することから、その仕事はCEOの領域であるビジネス戦略、CIOが担うIT、そしてCMO(最高マーケティング責任者)が担うマーケティングの3つを組み合わせたイメージだ。

 KPMGコンサルティングのCIO調査によると、企業組織内にCDO職か、その役割に相当する役職を設置しているかとの問いに対し、図3に示すように回答者の25%が「設置している」と答えている。一方で、69%が「設置していない」と答えていることから、企業のデジタル化への取り組みは実質的にCIOが担っているケースが多いといえそうだ。

 ただし、CDOも2016年で18%だった割合が2017年は25%に伸長。とりわけ、IT予算が年間2億5000万ドル超の大企業では、2016年で36%だった割合が2017年では51%に伸びており、デジタル化の進展に伴ってCDOを設置する企業も増えていきそうだ。

 ちなみに、業種別でCDOを設置している割合が高いのは、放送/メディア46%、広告35%、小売32%、通信31%など。逆に低いのは、公益事業16%、製造18%、エネルギー18%といったところだ。ただし、広告はデジタルそのものが商品であることから、CDOの役割も他業種とは異なっているようだ。

 最後に、デジタル変革の課題についての調査結果を取り上げておきたい。図4は、デジタル化を成功させるうえでの最大の課題を聞いた結果である。それによると、「新技術を導入することの難しさ」「投資利益率(ROI)の達成」「適切な人材の確保」などを抑えて1位になったのは、「変革に対する抵抗」である。どうやら、この課題はこれまでのIT化でも、これからのデジタル化でも変わらないようだ。

 そこで、会見の質疑応答で、改めて「理想的には、企業はCIOとは別にCDOを設置したほうがよいのか」と聞いてみた。すると、松本氏は次のように答えた。

 「デジタル化する目的によって異なる。例えば、社内業務のプロセス改善や生産性向上が目的ならCIOがデジタルリーダーも兼ねてやるべきだ。しかし、新規事業の開拓や革新的な製品・サービスの開発が目的なら、それにふさわしい人材をCDOに据えて、CIOは基本的に関わるべきではない」

 同氏のこの見解は、CIOでさえも変革に対する抵抗勢力になってしまう可能性があるということだ。できうるならば、CIOはそれを心得たうえで、デジタル化についてはCDOをサポートする立場になるのが望ましい。なぜならば、CIOには先述したように全社的な観点からの明確な役割があるからだ。そして、CEOがそのCIOやCDOの後ろ盾になることも非常に重要である。このタッグを強力に組めれば、変革に対する抵抗へも解決策を見いだせるはずである。

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