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Galaxy S8+には“最先端”の中身が詰まっていた

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/08/03
Galaxy S8+には“最先端”の中身が詰まっていた: 端末の外観図 © ITmedia Mobile 提供 端末の外観図

 世界大手のスマートフォンメーカー、Samsung Electronicsは、年間3億台以上の生産数に加え、新しい部品や機能をいち早く搭載する点で常に世界をリードしてきた。そんなSamsungが投入した最新スマートフォンが「Galaxy S8」と「Galaxy S8+」。今回は、より大きな6.2型ディスプレイを搭載するGalaxy S8+の分解レポートをお届けする。なお、今回はau向け「Galaxy S8+ SCV35」を分解した。

●ベゼルが細くなり、指紋センサーが背面に移動

 Galaxy S8+が従来機から大きく変わったポイントの1つに、外観が細長くなったことが挙げられる。ディスプレイのタテヨコ比は18.5対9で、横幅の倍以上の高さがある。2016年に発売されたGalaxy S7 edgeは16対9だった。フィルムタイプの有機ELパネルと湾曲した3D世代カバーガラスの両端の組み合わせで、ボディーの端ギリギリまで表示部が見え、コンパクトなボディーに大画面を収めている。これによって片手でも操作しやすくなった。

 販売中止となった「Galaxy Note7」に搭載予定だった機能の多くはGalaxy S8+に搭載されている。その1つが虹彩認証カメラである。800万画素のインカメラに加え、少し小型の赤外線カメラが隣に搭載された。また、指紋センサーは端末の裏側に移動した。現在の虹彩認証は認証に2秒ほどかかるようだが、これが一瞬で終わるようになれば、指紋センサーはその役割を終えるのかもしれない。

●タッチパネルが有機ELの裏側にある

 Galaxy S8+のタッチパネルは少々変わった場所にある。本機の有機ELパネルはフィルム状で曲げられる。推定原価はおよそ80ドル。フィルムの発光面裏側に銅箔(どうはく)が貼られており、この銅箔を剥がすとタッチパネルと思われるセンシング面が表れる。つまりタッチパネルは有機ELパネルの裏側にある。カバーガラスに触れた指を認識する信号は、有機ELパネルを突き抜けて裏側のセンサーに届いているということになる。

 有機ELの画素配置はPenTileと呼ばれる方式を採用。Red、Green、Blue(RGB)が横並びになるReal RGBではなかった。2017年のiPhoneの一部のモデルには有機ELパネルを搭載すると予想され、画素の配置は本機と同じと予想される。

●プロセッサは10nm さらなる微細化も?

 Galaxy S8とS8+にはSamsung自前のプロセッサと米Qualcocmmのプロセッサが併用されており、製造は両方ともSamsungが請け負っている。いずれのプロセッサも回路線幅(製造プロセス)は10nmで、上下の金属線との接合面積を増やすため、下の線が上の線に食い込むような形状の「FinFET」と呼ばれる工法が使用されている。FinFETありとなしの場合、FinFETありの方がリーク電流という無駄に流れる電流を抑制できて省エネ効果が高い。現在最も微細な線幅で製造されているプロセッサである。

 10nmの次は7nmといわれている。誰が一番乗りを果たすのか? Samsungの10nm工場は2016年に量産を始めたばかりで、しばらくは10nmプロセッサの製造を続けると思われる。現時点では台湾の半導体製造受諾会社のTSMCが7nm一番乗りを表明しており、2018年末に量産開始予定である。極限まで線を細くするため、EUV(extreme ultraviolet)という波長が13.5nmの極端紫外線を製造工程で採用する。

 筆者は本稿執筆中、サンフランシスコで開催中の半導体展示会「Semicon West」に参加するため北米に滞在していた。そこで開かれたセミナーや発表会によると、半導体の製造プロセスは3nmまでめどが立っているとのこと。カギとなる技術は、FinFETの形状であるヒレのように上部金属に食い込む部分の形状を複数のストローのようにする「Gate All Around」と呼ばれる技術のようだ。

 プロセッサは処理能力が性能の全てではない。電子部品である以上、電気を消費し熱を発する。省エネ性能に優れていて、熱対策が適正に行われているプロセッサこそが真価を発揮する。中身がギュウギュウのスマートフォンにおける熱対策は悩みの1つだ。Galaxy S8+では、中に液体が入った銅のパイプをボディーに埋め込んでプロセッサが接するように配置し、対流により素早く広いエリアに熱を拡散させる工法を採用している。

●450mmウェハは登場するのか?

 Galaxy S8/S8+のプロセッサは、現在主流の直径300mmのウェハ(半導体の製造に使う、シリコンのお皿)で生産されている。6月にハワイで開催されたInternational Microwave Symposiumは、無線に関係するあらゆる業界から人が集まるイベントで、半導体受託生産大手のGlobal Foundries(GF)が出展していた。同社は450mmウェハの登場は当面ないと予想する。ウェハの大型化には製造装置の入れ替えなど巨額のコストが必要で、そのコストを回収可能なほど多くのICを消費するモノが必要になる。

 ウェハが200mmから現在の300mmになった時、けん引役はPCだった。そして300mmから450mmに進む際のけん引役を果たすのはスマートフォンのはずだったが、市場の飽和と共に出荷数の増加も緩やかになり、450mmウェハから取れる膨大なICを消費するマーケットではなくなりつつある。IoT機器の数量は今後増えるかもしれないが、1台あたりのIC搭載数はスマートフォンよりはるかに少なく、こちらも450mmウェハの需要を喚起することにはならないとのことだった。需要があるとすればデータセンターや人工知能の分野だろうと予想している。

●ノイズ対策は5Gへの布石?

 International Microwave Symposiumでは、2020年以降に商用サービス開始といわれる第5世代通信規格(5G)回路ブロック図が示された。プロセッサは1つであるものの、そこからアンテナまでの回路は、5G専用線を設ける必要があることが示された。周波数が上がるため、ノイズ対策も必要になる。従来のノイズ対策は、電子部品に金属のフタをかぶせるものであった。

 Galaxy S8+の大部分は同様の手法であったが、一部でシートによるノイズ対策が行われている。これはスマートフォンの薄型化にも有効といわれている。メーカーは不明だが、材料で世界の先端を走っている日本メーカー製である可能性が高いと思われる。5Gになってもスマートフォンの外観やサービスは変わらないかもしれないが、高周波に対応するため求められる材料は激変するといわれ、優秀な材料技術を多く持つ日本メーカーに追い風といえるだろう。

●バッテリー問題のその後

 2016年8月に発売されたGalaxy Note7は、度重なるバッテリー問題に悩まされ、製品回収と販売中止に追い込まれた。2016年春に発売されたGalaxy S7(日本未発売)とGalaxy S7 edgeにはSamsung SDI製とTDKの子会社Amperex Technology Limited (ATL)のバッテリーが併用されており、Galaxy Note7も同様だったと思われる。

 2017年1月にSamsungは報告書を公表し、電解液を遮へいする「セパレータ」と呼ばれる部材に損傷があったと述べた。しかしこの報告書のリリース後も、さまざまな情報が飛び交っているのが実情だ。

 Galaxy S8とS8+は、韓国版、日本版、米国版、欧州版など累計5台を分解したが、使用されていたバッテリーはいずれもSamsung SDI製であった。これをもって結論づけることはできないが、Note7のバッテリー問題の原因と無関係ではなさそうだ。

●次期Galaxy Sはどうなる?

 間もなく発表が予想される「Galaxy Note8」は、デュアルカメラの採用、メインメモリ6GBへ増量、指紋センサーをディスプレイ面に埋め込むなどの変化が予想されている。また、これまでGalaxy Sシリーズに心拍センサーを搭載していたSamsungの意図が分かるかもしれない。2018年の「Galaxy S9」にはヘルスケア機能が多く搭載されるとの予想があり、心拍、血圧、血糖値、呼気などさまざまな健康データのハブステーションになるかもしれない。

●業界のベンチマーク=Samsung

 自動車業界のベンチマーク標準はフォルクスワーゲンといわれている。これが比較調査の中央値となるのだ。スマートフォン業界において、Samsungはまさにこのような立場にある。約10万円のハイエンド機から数千円のエントリー機までバラエティー豊かな製品群を抱え、スマートフォン市場での世界シェアは2割以上でダントツの1位。

 新機能や新部品をいち早く搭載することに積極的で、Samsung製品を調べれば、最新の、また他のスマートフォンメーカーが追随する技術を効率よく調べられる。これからもスマートフォン市場におけるSamsungの存在感は増していくだろう。

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