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iPhoneに続いてPCの音声端子もなくなる? 知っておきたい2017年の注目技術

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/01/01
iPhoneに続いてPCの音声端子もなくなる? 知っておきたい2017年の注目技術: これまでのしがらみを捨て、思い切ってUSB Type-C(兼Thunderbolt 3)にインタフェースを統一してきた新型「MacBook Pro」。ヘッドフォン出力端子はそれでも残しているのだが…… © ITmedia PC USER 提供 これまでのしがらみを捨て、思い切ってUSB Type-C(兼Thunderbolt 3)にインタフェースを統一してきた新型「MacBook Pro」。ヘッドフォン出力端子はそれでも残しているのだが……

 Appleの「MacBook」および「MacBook Pro」が全面的な移行を進めてきたことで、PCの世界でUSB Type-Cがいよいよ本格普及の兆しを見せた2016年。これを中心として、2017年に実際のPC製品へ導入されること期待したい注目の技術をまとめよう。

●ヘッドフォン端子を省略可能にする「USB Audio Class 3.0」

 USB Type-Cに集約される機能はさらに増えていく。2016年9月に公式リリースされた新仕様「Universal Serial Bus Device Class Definition for Audio Devices Release 3.0(USB Audio Class 3.0)」は、さらにUSB Type-C搭載デバイスの進化を促しそうだ。

 この仕様では、USB Type-Cケーブルでオーディオ信号を流すためのルールを確立している。デジタルだけでなくアナログオーディオを流せるようになったことに加えて、パワードメイン(Power Domains)仕様により、効果的なパワーマネジメントも可能だ。例えば、ヘッドセットでヘッドフォンのみ利用しているときにマイク回路を休ませて消費電力を削減することができるという。

 USB PDやAlt Mode(DP over USB-C、HDMI Alt Modeなど、詳しくは後述)といった仕様と併用すれば、映像、データ、電源、オーディオの信号をUSB Type-Cケーブル1本で伝送でき、VR(仮想現実)対応のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)やドッキングステーションの接続ケーブルをUSB Type-Cに1本化することが可能になる。

 アナログオーディオを流せるようにした仕様の目的は、3.5mmのヘッドフォン・ヘッドセット端子の排除を促進することにある。というのも、この3.5mm端子およびアナログオーディオの出力回路が、PCをはじめデバイスの薄型軽量化における障害になっているためだ。

 3.5mm端子自体に加えて、デジタル/アナログ変換(DAC)やアナログのノイズ処理、音響処理の回路実装が必要で、高音質を実現するにはオーディオメーカーとの技術提携も事実上必須となり、高コスト要因としても挙げられる。

 しかし、現状であまりに普及している3.5mm端子とアナログ再生機器を同時に切り捨てるリスクはどのメーカーも取りづらい。

 iPhone 7でいち早く3.5mm端子を廃止したAppleも、その発表会でフィル・シラー上級副社長がわざわざ「イヤフォン端子の廃止は勇気」と熱く語ったうえで、製品には変換ケーブルを付属している(この場合はUSB Type-CではなくLightningの端子だが)ほどだ。USB Type-Cに外部拡張端子を集約したMacBookとMacBook Proは、3.5mmのヘッドフォン端子だけは相変わらず搭載し続けている。

 iPhone 7のLightningt端子ではアナログ回路を省いて変換ケーブル側にDACを搭載しているようだが、USB Type-CのUSB Audio Class 3.0のアプローチでは、本体側にDACやアナログ処理回路は搭載したまま端子だけを省ける。そのため、iPhone 7より低コストな変換コネクターで音質への影響も最小限に抑えて、アナログ再生機器をサポートできる。

 もちろん、その場合は省スペース効果も低くなってしまうが、このようなオプションを残せば、デバイスメーカーは3.5mm端子の廃止という判断がしやすくなるし、ユーザーも導入しやすくなる。まず3.5mm端子を廃止し、そこからアナログからデジタルへの移行へとつなげる狙いだろう。もちろん、iPhone 7同様に本体側の回路はデジタルのみにして、省スペース化および省電力化を徹底することも可能だ。

●認証プログラムで理想に一歩近づいた「USB PD」

 USBの便利な点は電源も集約できる(電源ケーブルを省ける)ことにあるが、USBの給電仕様はかなり複雑化している。ここできっちり整理しておこう。

 USBは基本仕様でも給電機能があり、USB 3.1/USB 3.0で最大4.5Wと定められている。USB Type-Cではさらに「USB Type-C Current」として最大15Wでの供給が可能になった。この15Wというのが、USB Type-Cの標準仕様だ。

 これに、充電需要に対応した拡張仕様が加わる。「USB BC(Battery Cahrging)」、その後継の「USB PD(Power Delivery)」がそれだ。後者は最大100Wへと給電能力が大幅に拡張され、ノートPCや2in1の充電も可能になっている。

・USBの給電仕様(最大電力)

・USB 2.0:1.5W

・USB 3.1:4.5W

・USB BC 1.2:7.5W

・USB Type-C Current:15W

・USB PD 2.0/3.0:100W

 USB PDの最新リビジョンは3.0だが、2.0バージョン1.2(v1.2)で大幅に変更された。従来「パワープロファイル」と呼ばれていた充給電の仕様が廃止され、「パワールール」という新たな規則になり、9Vと15Vの仕様が追加されたのだ。USB PD 3.0はこのUSB PD 2.0にさらに管理機能などを追加したものだ。

 USB Type-C関連ICを多数開発しているTexas Instrumentsでは、同社Webサイト内にBlogを用意してUSB Type-C関連の情報を公開している。その中で、デリック・ウォータース氏のエントリでは「USB PD 3.0製品はUSB PD 2.0との下位互換性を保証し、完全に相互運用が可能である」と述べている。ただ、その内容を見ると、同氏の語るUSB PD 2.0は、v1.2を前提としているようだ。

 問題は、USB PD 2.0 v1.1とv1.2の間にある大きな差だ。Texas Instrumentsは、同社がUSB PD v1.1時代に開発したUSB PD用IC「TPS65982」でUSB PD v1.2のパワールールをサポートするドキュメントを公開しているが、これは若干の実装回路の変更または追加チップの実装によるソリューションを提示したものとなる。既にUSB PD 2.0 v1.1以前の仕様で実装された製品が、USB PD 2.0 v1.2以降のパワールールで追加された仕様に対応するのは難しそうだ。

 ちなみに、Qualcommのスマートフォン向け急速充電技術に「Quick Charge 3.0」という仕様があり、USB Type-Cもこれを利用可能となっている。これは3.6Vから最大20Vの範囲内で200mV単位で調整し、最適な電圧で充電するというものだ。QualcommのSoC(System on a Chip)を搭載した対応スマートフォンのみで使える技術であり、USB PDの仕様とは完全に別物なので注意したい。

 USB PDでは前出のパワールールを使うことで、充電側に適切な電圧と電流で給電が行われる仕組みになっており、上位ルール対応製品は下位ルールを全てカバーすることが原則だ。そのため、「理論上」では電力仕様が異なるデバイスでACアダプターやモバイルバッテリーを共有して運用できる。

 しかし、それは理想であり、現実はそううまくはいかない。充電端子がUSB Type-C形状でもUSB PDを利用しているとは限らないし、内部的にはこれを利用して充電端子の設計を行っていたと思われる製品でも、わざわざ「USB PD対応」と公言することはごくまれだ。余計なサポートの負担を背負い込むことになるためだ。

 ユーザーとしては、サポートは自社製品限定でもいいからUSB PD対応なら対応と公表してもらいたいものだが、電源というクリティカルな要素であり、仕様を満たさない粗悪品が出回るリスクなども考慮するとやむを得ないだろう。USB PD 2.0 v1.1からv1.2の間に大きな差があったように、規格自体も安定していなかった。そのため、ユーザーは手探りで可能な組み合わせを模索し、自己責任で運用するしかなかった。

 その点で、2016年8月からUSB-IFでUSB PD対応ACアダプターの認証ロゴプログラムが開始されたことは朗報だ。「Certified USB Charger」のロゴがついたACアダプターであれば、USB PDの仕様(USB PD 2.0 v1.2以降)をきちんと満たした製品であると分かり、安心して利用することができる。こうした安心して利用できるACアダプターが出回れば、デバイス側もUSB PDサポートをうたうメリットも出てくるのではないだろうか。

●HDMIもUSB Type-Cで転送可能に、省電力のUSBディスプレイ規格も

 USB Type-Cに関するディスプレイ出力の仕様についても触れておこう。USB Type-Cには「Alternate Mode(Alt Mode)」といって、USB Type-CでUSB以外の信号線を流す仕様が用意されている。それを利用する規格としては、Thunderbolt 3のほか、「DP over USB-C(DP Alt Mode)」と「MHL Alt Mode」があるが、2016年には「HDMI Alt Mode」が加わった。

 このHDMI Alt Modeでは、オーディオリターンチャンネル(ARC)や機器制御(CEC)なども含め、HDMI 1.4bの仕様をUSB Type-Cで全て実現できるという。ただ、最新のHDMI 2.0bに関しては何も言及してされていない。

 さらに、USB IFでは「USB Display Class」というUSBネイティブのディスプレイ出力仕様が策定中だ。出力のみで複数のディスプレイ対応、ブート利用ができ、コンテンツ保護対応、USBハブ経由で運用可能という特徴のほか、部分更新や圧縮技術、リモートフレームバッファといった仕様をサポートする内容で、ドッキングステーションなどの用途が想定され、省電力である点が強調されている。

●有機ELのさらなる活用に期待

 ディスプレイまわりについては、有機EL(OLED)のPCおよび2in1への採用も期待したいところだ。

 液晶をバックライトのシャッターとして利用する液晶ディスプレイに対し、有機ELディスプレイは有機物の発光体を蒸着した基板自体が発光するため、薄型軽量化がしやすいだけでなく、省電力で輝度やコントラスト、視野角、応答速度など画質面で大きな優位があり、曲面にしやすいという特徴もある。反面、デメリットとしては、高コストで液晶ディスプレイに比べると寿命が短いなどの点がが挙げられる。

 2016年販売の2in1ノート「ThinkPad X1 Yoga」に有機ELディスプレイの採用モデルがあるが、あくまで液晶ディスプレイモデルがベースの設計に搭載してみたといった印象だ。販売数も少なく、試験的な意味合いが強かったように思う。また、メインのディスプレイではないが、新MacBook Proの「Touch Bar」にも有機ELが使われている。

 今後、有機ELディスプレイに最適化した設計をすれば、画質面以外でもより強烈なインパクトのあるノートPCや2in1の製品が期待できるはずだ。

 もっとも、コストを考えると比較的画面が小さいスマートフォン(Samsungの「Galaxy S7 edge」などに採用されている)で、よりアグレッシブな製品に期待するほうが現実的かもしれない。

●「RYZEN」はIntelを脅かす存在になるか

 CPU市場では、Intelが開発コード名でKaby Lakeと呼ばれる「第7世代Core」プロセッサのデスクトップPC向けモデル、およびハイパフォーマンスノートPC向けモデルを投入することが明らかにされている。先行して投入されているモバイル向けモデルでも着実な進化がみられ、当然PC製品の主役を務めるプロセッサとしての期待がかかる。

 一方で、AMDも次世代CPUの「RYZEN」を投入することを予告している。全く新しい「Zenアーキテクチャ」を採用するということで、技術的にはこちらのほうが目新しい。現時点で分かっていることをまとめよう。

 RYZENが採用するZenマイクロアーキテクチャは、完全に新規の設計となる。現行のBulldozer系の独特のマルチコア構造は廃止され、IntelのCPUと似た構造になり、「Sense MI」と呼ばれるインテリジェントな技術が導入される。

 機械学習により内部命令の実行履歴を学習して分岐予測を高速化する「Neural Net Prediction」、高レベルのマージン冷却を検出すると本来のリミットを超えてブーストする「Extended Frequency Range」といったフィーチャーは特に興味深い。

 こうした技術により、従来のExcavatorコアに比べてクロックあたりの性能は40%向上するという。製造プロセスルールも現行の28nmから一気に14mmのFinFETとなり、この点でもIntelに追い付く。このプロセスルールの進化だけでも、相当な飛躍が期待できる。

 初代製品の開発コード名は「Summit Ridge」で、4コア/8スレッドで基本クロックが3.4GHz以上、TDP(熱設計電力)は95Wだ。Socket AM4プラットフォームを採用、DDR4-2400のデュアルチャンネルメモリに対応し、PCI Express 3.0、NVMeなど、最新の周辺技術をキャッチアップする。

 2016年12月14日に行われたファンイベント「New Horizon」では、3.4GHzのRYZENシステムのデモが披露され、3DCGレンダリング、動画エンコードにおいてIntelのCore i7-6900K(3.2GHz/最大3.7GHz)搭載システムと同等以上に渡りあう様子が伝えられた。Core i7-6900Kは、Intelのコンシューマー向けCPUではナンバー2の存在であり、高価で消費電力も高いCPUだけにかなりのインパクトがあった。

 このデモで見せた通りのパフォーマンスを製品でも発揮できるならば、Intelにとっても大きな脅威になるだろう。

●USB Type-Cを制す者はPCの世界を制す?

 USB Type-Cの話が大半を占めてしまったが、2017年以降のPCがどう進化するのかを考えた場合、USBの関連規格は欠かせない要素だ。USB PDの仕様が2.0 v1.2で安定し、DP over USB-CやThunderbolt 3の存在も広く知られるようになったことで、混乱期も脱しつつあるように思う。

 対応する周辺機器も着実に増えており、USB Type-C関連規格をいかに活用するかが、魅力的な製品を開発するためのカギになるのではないだろうか。

[鈴木雅暢,ITmedia]

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