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iPhoneよりも人生を変える、Apple Watch

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/06/22
iPhoneよりも人生を変える、Apple Watch: Appleはより多くの人が同じように製品を使えるような活動を続けています。iPhoneの設定画面で「アクセシビリティー」という項目を見たことがある人も多いはず © ITmedia PC USER 提供 Appleはより多くの人が同じように製品を使えるような活動を続けています。iPhoneの設定画面で「アクセシビリティー」という項目を見たことがある人も多いはず

 Appleは幅広いユーザーが製品を使えるよう、アクセシビリティー機能を各製品に搭載しています。「アクセシビリティー」とは、高齢者や障がいを持つ人々が、いかに支障なくサービスを利用できるかを表す言葉です。Apple StoreでもiPhoneやiPadの視覚サポート機能を中心に、使い方を紹介するセッションを定期的に行うなど、アクセシビリティーに関する取り組みを続けています。

 その中でもApple銀座で取材した「視覚に障害がある方のためのApple Watchの基本」のセッションは、目からウロコの連続でした。目が見えない状態で、あんな小さな画面を操作するなんてiPhoneよりも大変なはず……。最初は疑心暗鬼でしたが、視覚障がいを持つApple Watchユーザーの話を聞くと、自分がいかにテクノロジーの常識に縛られていたかが分かったのです。

●知っていた機能も視覚障がい者視点なら異なる使い方に

 セッションでは、視覚障がいの男性が一利用者として、参加者にApple Watchの活用方法をレクチャー。「私は視野が5%しか見えない状態です。目が見えないのは怖いことですが、時計のおかげで安全に動けています」とApple Watchを紹介します。

 時計がないと正確な時間が分からなくなる私たちと同様に、視覚障がい者も時間の感覚はずれていきます。セッションに登壇した男性は、これまでは時間を確認することすら大変で、時計を見るのを諦めていたと言います。

 しかし、Apple Watchによってこの状況は一変しました。振動で時刻を知らせる「Tapticタイム」機能は、Apple Watchの画面を手で覆って、ディスプレイが暗くなった状態で画面を2度タップすると、バイブレーションで時刻を知ることができます。

 長い振動は十の位、短い振動は一の位を表します。例えば、6時31分なら短い振動6回、長い振動3回、短い振動1回で時刻を伝えます。3度タップすると分だけがバイブされるので、頻繁に時間を確認する際もまどろっこしさを感じません。

 Apple Watchは時計なのだから、時刻が分かって当然だと私たちは考えてしまいがち。しかし男性は「Apple Watchの時計機能が一番便利。おかげでタイムスケジュールを把握できるようになりました」と笑顔で語ります。

 「Apple Watchで時間管理の質が飛躍的に上がりました。今までは出勤時間の1時間半前に到着するくらい余裕を持って家を出ていましたが、時刻を性格に把握できるようになってから30分前に来るようになりました。生活に余裕を持てるようになったのです」。

 またApple Watchの「iPhoneを探す」機能は、視覚障がい者はちょっと違った使い方をしています。Apple WatchのコントロールセンターでiPhoneのボタンをタップすると、iPhoneから音が出て知らせてくれる機能です。

 私はこの機能を部屋でiPhoneの置き場所が分からなくなったときによく活用しますが、視覚障がい者は、お風呂上がりを家族に伝えるときに使ったり、困ったときに支援者に知らせたりするナースコールのような使い方をする人もいるのだそうです。

 男性は深呼吸を定期的に促す「呼吸」アプリも便利だと言います。「視覚障がい者は慌てやすく、情緒が不安定になりやすい。だから意識的に呼吸することで気持ちが安定します」と意外な理由を教えてくれました。

 さらに「僕らの生命線」として紹介されたのが、緊急SOS機能。「もし転倒してiPhoneが手から離れてしまっても、手元で救急の連絡をかけられます」。iPhoneの「ヘルスケア」アプリのメディカルIDに緊急連絡先を追加しておけば、緊急通話が終わった段階で指定の緊急連絡先にテキストメッセージが送られるのも重要なポイントです。

●「画面操作はVoiceOverで

 視覚障がい者の意外なApple Watch活用法を聞いたところで、1つの疑問が湧いてきます。目が見えない状態で、どうやってその小さな画面を操作しているのでしょうか?

 方法の1つは、ジェスチャーで操作する画面読み上げ機能「VoiceOver」です。Apple Watchのスピーカーを使って、画面上の出来事を全て読み上げるので、画面を見なくとも操作ができる優れものです。前述した、バイブで時刻を知らせる「Tacticタイム」もVoiceOver機能の1つです。

 VoiceOverをオンにすると、実行する候補の項目が四角で囲まれ、タップするとその項目名を音声で知らせます。アプリ名からアクティビティーの消費カロリーまで、あらゆる項目を読み上げます。

 セッションの参加者からは「iPhoneやiPadは自分が今どこを触っているか、迷子になりやすい。画面の小さいApple WatchこそVoiceOverとの親和性が高そう」との声が上がり、その意見に対し、視覚障がい者の男性も「小さい画面の中でVoiceOverで全部移動できるので、iPhoneの子機みたいに使えます」と同意していました。

 個人的に素晴らしいと感じたのは、VoiceOverをSiriで簡単にオン、オフできる点。VoiceOverをオンにすると操作方法がガラッと変わるので、支援者が一時的に操作を手伝う際、なじみのiPhoneでも使い方に戸惑ってしまいます。そこでSiriからオフにすることで、サポートの際も簡単に切り替えができるのです。アクセシビリティーを掲げるテクノロジー企業は複数存在しますが、本人だけでなく、支援者の使い方にも寄り添う企業はごくわずかではないでしょうか。

 他にもズーム機能やグレースケール表示といった視覚サポート機能があり、老眼や色覚障害の人でも見えやすい設定に変更できます。

●「点字や手話は意外とバリアフリーではない」

 セッションを取材しながら、同じ機能でも違った視点で見ることで、物事の捉え方が変わってくることに気付きました。呼吸アプリも緊急SOSも、「あれば便利」程度に感じていましたが、一方で「生命線」と表現する人もいます。

 「Apple PayはSuicaやクレジットカードがあるからいらない」と切り捨てる人もいれば、「お札や小銭を判別することすら難しかったが、Apple Payならレジでの支払いが怖くなくなる」と劇的な変化を感じる人もいます。これからのテクノロジーはあらゆる人に開かれるべきであり、Appleの「全ての人が使える製品を」という思いは、今こそ再評価されてしかるべきです。

 Apple直営店で行われる「Today at Apple」のセッションは、今後も定期的に開催予定です。またアクセシビリティー機能に関する7本の動画が、AppleのYoutube公式チャンネルにて日本語字幕付きでアップされているほか、App Storeでもアクセシビリティーに役立つアプリが公開中です。

 レクチャーをしてくれた視覚障がいの男性は、点字や手話について「実はバリアフリーではありません。なぜなら分かる人にしか分からないないから」と意外な弱点を明かします。だからこそ、学習しなくでも音声やジェスチャーで操作できるApple Watchのメリットが引き立つのでしょう。「視覚障がい者の世界にはまだApple Watchの情報が入ってきていません。しかしApple Watchを視覚障害者が持てば、iPhoneを持つより人生が変わると思います」。

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