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KDDIがソラコムを子会社化した狙い IoTだけでなく次世代ネットワークでも相乗効果を

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/08/09
KDDIがソラコムを子会社化した狙い IoTだけでなく次世代ネットワークでも相乗効果を: 記者説明会に登壇したKDDIの新居氏(左)、ソラコム玉川氏(中央)、KDDI藤井氏(右) © ITmedia Mobile 提供 記者説明会に登壇したKDDIの新居氏(左)、ソラコム玉川氏(中央)、KDDI藤井氏(右)

 IoT通信ベンチャーのソラコムを8月2日に子会社化することを発表したKDDI。8月8日に両社は説明会を開き、IoTにとどまらないソラコム子会社化の狙いや、今後のビジネスなどについて説明した。

●次世代コアネットワークにもソラコムの技術を活用

 8月2日、KDDIはIoT向けネットワークを提供するベンチャー企業、ソラコムを連結子会社化することを発表したが、両社は8月8日に記者向けの説明会を実施。ソラコム子会社化の経緯や狙いなどについてあらためて説明した。

記者説明会に登壇したKDDIの新居氏、ソラコム玉川氏(中央)、KDDI藤井氏

 ソラコムは2014年設立のスタートアップ企業であり、NTTドコモのMVNOとしてIoT向け通信サービス「SORACOM Air」などを提供している。通信のコアネットワークをクラウド上に構築することで、安価で柔軟性の高いサービスを実現。ベンチャーから大企業まで7000を超える顧客を獲得しているだけでなく、欧米への進出を果たし海外展開にも積極的に取り組むなど、IoTビジネスにおける注目株の1社となっている。

 KDDIの理事 バリュー企画本部 バリュー事業企画本部長の新居眞吾氏は、ソラコムのイベントなどに参加することで同社の実力を以前から評価していたそうで、2016年10月にはソラコムとの協業を発表。ソラコムのコアネットワーク「SORACOM vConnect Core」を活用し、SORACOM Airと同等のサービスをKDDIの携帯電話ネットワークで提供する「KDDI IoTコネクト Air」の提供を12月に開始している。

 そしてこのサービスの提供に当たり、KDDIの技術部門とソラコムが密にコミュニケーションを取り合ったことで「ソラコムにはケイパビリティ(企業の原動力となる組織的能力)があると実感した」(新居氏)という。そのことが、今回の子会社化へとつながっているそうだ。

 KDDIのソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 副本部長の藤井彰人氏は、KDDIのIoTビジネスの現状について説明。同社では機械間通信(M2M)の時代から15年にわたってIoTに取り組んでおり、10年間でM2M/IoT端末の累計稼働台数は6.6倍に伸びているとのこと。だが藤井氏は「日本は海外、特に北米と比べ、IoTの導入実績で大きな差がある」と、普及に向けてはまだ多くの課題を抱えていることを説明。IoTをいっそう普及させるためのカギとして、藤井氏はLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるIoTに適した低消費電力通信の充実と、デバイスの普及拡大、そしてIoTビジネスを支えるプラットフォームの3つを挙げている。

 そこでKDDIは、2017年1月にはクラウド関連のシステム開発で多くの実績を持つアイレットを子会社化したほか、3月にはアクセンチュアとの合弁でデータ分析を手掛ける「ARISe analytics」を設立するなどして、IoTプラットフォームの強化を図ってきた。そして今回、ソラコムを傘下に収めたことにより、デバイスからネットワーク、データ分析に至るまで、グループが持つ多様なリソースと組み合わせることで、IoTプラットフォームの充実を図れる、と藤井氏は考えている。

 また新居氏は、KDDIがソラコムを子会社化することで、いくつかのシナジーが生まれると説明する。1つは、長年M2M・IoTビジネスを手掛けるKDDIと、既に多くの顧客を獲得するソラコムの実績を合わせることで、導入事例の蓄積を増やし、IoTに対する経験が浅い企業の顧客に幅広い提案ができることだ。KDDIは大規模なIoTビジネスに強みを持つが、IoT関連サービスを小さな規模で始めたいというニーズに応えるサービスやノウハウは少なかった。そうした意味でも、両社は補完し合える関係となっているようだ。

 2つ目は、KDDIが持つ600社もの海外通信事業者とのパートナーシップと、世界に100以上ある海外事業拠点を活用することで、ソラコムの海外展開を加速できること。両社はさらに双方の基盤をうまく組み合わせることにより、グローバルに通じる日本発のIoTプラットフォームを共同展開する考えも示している。

 そしてもう1つは、ソラコムが持つ技術や知見を、KDDIが現在検討している次世代の通信ネットワーク基盤の開発に活用することだと、新居氏は話す。ソラコムはクラウド上に携帯電話のコアネットワークを構築していることが大きな特徴となっているが、そうした取り組みは、現在携帯電話業界でも取り組む企業が増えている、「SDN」(Software Defined Network)や「SDS」(Software Defined Storage)などの技術を活用したコアネットワークの仮想化にもつながるものだ。

 新居氏も「KDDIが出資してソラコムの事業価値を上げるだけでなく、ソラコムのリソースを使ってKDDIが成長することを考え、子会社化した方がよいとの判断に至った」と話しており、ソラコムの子会社化の狙いはIoTビジネスの拡大だけではなかったことを示している。

●子会社化でMVNOの限界を超え、第2の創業に

 では子会社化されるソラコム側は、なぜKDDIの傘下に入る道を選んだのだろうか。ソラコムの玉川憲社長は、「単独ではチャレンジだと感じたところ」として4つの課題を挙げている。

 1つ目はグローバルでの営業・交渉力、2つ目は資金やリソースの調達といった、ベンチャー企業ならではの課題である。こうした点はKDDIの傘下に入ることによって大きな後ろ盾が得られ、信頼が向上するとともに、KDDIが持つ法人営業力やビジネス提案力、そして海外でのコネクションなど、大企業ならではのリソースを活用できるなど、多くのメリットが生まれる。

 3つ目は、LPWAの“本命”といわれる「NB-IoT」などの携帯電話網を用いた「セルラーLPWA」や、5Gによる通信サービス提供に時間がかかってしまうことだ。KDDIも2017年度中にはセルラーLPWAのサービスを提供するとしているが、MVNOがセルラーLPWAを利用できるようになるのは、あくまでキャリアがMVNOにその利用を開放した後となり、どうしてもサービス提供が遅くなってしまう。だが今回、大手キャリアの一角であるKDDIの傘下に入ることによってその問題が解消され、いち早くセルラーLPWAを活用できるようになるという。

 そして4つ目は、やはりMVNOという立場上、ソラコム単体ではコアネットワーク構築に関わることのできる範囲が小さく、限界があるということだ。この点もKDDIの子会社となり、KDDI自体の次世代ネットワーク基盤構築にソラコム自身が関わることによって、解消できるとしている。

 一方で、ソラコム自体が現在提供するサービスに変更はなく、ドコモの回線を用いたSORACOM Airも、現状のまま利用できる。また玉川氏を中心とした経営体制もそのまま残るとのこと。それゆえ玉川氏は、今回の子会社化は「“Exit”ではなく“Entrance”。第2の創業期を迎えたと考えている」と話し、KDDIと共にソラコムの事業拡大に努める考えを示している。

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