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LGBT同士の愛が社会に訴えたものーー大塚シノブが『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』を観る

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/12/28 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 LGBT(性的少数者)ということで偏見に苦しみ、闘っている人たちがいる。単に人間が子孫を残し繫栄していくために男女の組み合わせが必要だというだけで、それが大多数であるがゆえ、社会ではずっとそれがスタンダードなものとされてきた。つまり男×女という形である。世間では異質なものを排除しようとする傾向があるが、同じ人間である。それは本来弾かれるべきことでも、恥ずべきことでもない。 参考:アメリカで高評価の『Looking/ルッキング』、TVドラマ界に一石を投じた“愛と友情のかたち”  地球は賃貸マンションのようなもので、人間はその地球を借りて住んでいる住人のようなもの、私はそう思っている。そもそも人間が作ったものではないのだから、生き物として絶対なんてことも存在しないはず。私は偏見とは、人間たちが勝手に生み出した疎外だと思っている。人間は群れをなしていれば安心できるもの。そしてそれがいつの間にか世の中のスタンダードとなる。しかし本来、愛について決まり事などない。愛の形は自由なのだ。  映画『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』はローレルとステイシーという、二人の女性の愛と自由をかけた闘いを記録した、ドキュメンタリー映画『フリーヘルド』を映画化した実話である。癌に侵され死にゆくローレル(ジュリアン・ムーア)、それを献身的に支えるステイシー(エレン・ペイジ)。二人の間には利害関係など一切存在しない。そこにあるのはお互いを想い合う純粋な愛だけだ。  ただ少し世の中のスタンダードと違うのは、男と女ではなく女と女の組み合わせということだけである。二人は性別だけでなく、年齢という枠を越えてもお互いを想い合っている。優秀な警察官でもあるローレルの願い、自分の死後年金をステイシーに譲渡したいという申請は、郡政委員会に簡単に却下されてしまう。それは、警察官という職業のためでもあり、同性愛者であること、家族ではなくパートナーであるという関係上の問題もある。  愛というものを形で証明しようとする時、結婚という契約によって守られることは多くある。しかしスタンダードから外れた愛は、それがどんなに純粋で真の愛情だったとしても、社会的に認められる形を持つことはなかなか難しい。形として相手に与えられるもの、残せるもの。男女間では簡単に叶うものも、叶わない。それを壊すべく、自分たちの愛の形を守るために立ち上がり、その歴史に変化を起こしたのがこの二人だった。自分のまっすぐな気持ちに背くことなく真っ向から立ち向かうローレル、それを支えながら二人のささやかな愛を必死に守り抜こうとするステイシー。  ローレルを演じるジュリアン・ムーア。息も絶え絶えになりながら必死で訴えかける演技には、心が震えるようなリアリティーがある。そしてステイシーを演じるエレン・ペイジの純粋に愛を信じ、それを語る瞳。実はエレン・ペイジは同性愛者であることをカミングアウトしており、本作で製作陣の一人としても名を連ねている。またLGBTの人権擁護を進めるイベントでのスピーチなど、その活動にも力を入れていることもあり、LGBTに対する彼女の想いのすべてが全身全霊でローレルを愛す姿と重なり、劇中の基盤である純粋な表現を作っているようにも感じた。  またその想いを受け取るかのように、ジュリアン・ムーアもこの作品について、「ラブストーリーを演じるときは、相手の俳優に純粋な気持ちを抱くことができると、演技がものすごく簡単になる。今回はとてもラッキーだった」と話している。肉体的ではなく、精神的な問題。これは男女問わず、人間としてどれだけ深く相手を信頼し、どれだけ自分を安心して相手に委ねられるかという、演者としてラブストーリーを構築していくのに最も重要な、男女を越えた一種の人間愛的なメッセージであるようにも感じられる。  最近はLGBTが一般的に認知されるようになり、それに関する映画作品も増えている。ストレス社会の中で生きづらさを感じる時代背景もあるのだろうが、より自分らしさを求める社会になって来たことへの現れのようにも思う。そしてそれはLGBTに対する理解が、少しづつ進んで来ている傾向にあるということだろう。人間はいずれ死んでしまえば灰となる身。ならば個人の在り方を尊重し、尊厳を理解し、皆がよりよく生きていける社会にしていくためにはどうすべきかを考えていきたい。男だ女だという考え方はもう古い。今は個人としての力を重視する、そんな時代に突入してきているのではないだろうか。  ローレルとステイシー。“自分のエゴのためではなく、ただお互いを愛し、与え合う”人間としての究極の美しい愛のカタチとは、こういうものなのかもしれない。(大塚 シノブ)

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