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MAN WITH A MISSIONが成功した「2つの要因」 そのオリジナリティはどう確立したか?

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/21 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 2016年後半、MAN WITH A MISSION(以下、MWAM)を大型フェスで観る機会が何度かあったのだが、その中でも特に印象に残ったステージが2つある。ひとつは自身2度目の出演となった、2016年7月の『FUJI ROCK FESTIVAL '16』。初めてGREEN STAGEに立った彼らは、日本のロックバンド代表として堂々としたパフォーマンスとエンタテインメント性の強い演出で観るものを楽しませてくれた。そしてふたつめは、2016年12月に福岡で初開催された『AIR JAM 2016』。イベント後半に登場したMWAMは“AIR JAM世代”を前に一歩も引かないステージを繰り広げ、MCでは昔から憧れていた『AIR JAM』に出演できた喜びを興奮気味に語っていた。  90年代にロックに夢中になった者、バンドを始めた者なら誰もが一度は憧れたであろう『FUJI ROCK FESTIVAL』と『AIR JAM』。ともに1997年に初開催された2つのフェスに、約20年の歳月を経て出演できているMWAMの快挙は、メンバーはもちろんのこと、ファンやロック/パンクリスナーにとっても感慨深いものがあるのではないだろうか。  なぜMWAMは現在のように、人気/セールス/動員において成功を収めることができたのか。そこには「ヴィジュアル」と「サウンド」という2つの大きな要因が関係していると思われる。  2010年に始動したMWAMにとって、バンドの認知に大いに役立ったのは「頭はオオカミ、身体は人間」というそのヴィジュアルだ。最初こそイロモノ的な目で見られていたものの、英詞と日本語詞を巧みに織り交ぜた歌詞と、激しく攻撃的ながらもメロディアスで親しみやすいメロディを持つ楽曲は本格的なものであり、ロックキッズたちが彼らの作品に反応し始めたのである。当初、大人たちは胡散臭いものを見る目で敬遠しがちだったが、キッズたちは反対に、まるでヒーローショーのキャラクターを見るかのごとくMWAMのその姿を素直に受け入れたのも興味深い。  思えば日本人は、こういった“キャラクター色”の強いロックバンドにはめっぽう弱いと思う。古くはアメリカのハードロックバンド、KISSが1970年代からここ日本でも熱狂的に歓迎され、21世紀に入ってからもSlipknotのような猟奇的覆面をしたラウドロックバンドが人気を博している。ここ日本でも1980年代には“悪魔界からの使者”聖飢魔IIがお茶の間で受け入れられ、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)にまで出場。BEAT CRUSADERSのようなお面からSEKAI NO OWARIのDJ LOVEまで、それぞれスタイルこそ異なるものの、その系譜は現在まで脈々と受け継がれている。そもそもさらに過去にさかのぼれば、日本には伝統芸能の能をはじめ、天狗やなまはげなど地方の行事やお祭りなど、“何か別の生き物などに変身し、その生き物として振る舞う”行為は必要不可欠なもの。MWAMの場合は(メンバーの言うことを鵜呑みにすれば)厳密には“その生き物として振る舞う”とは異なるのかもしれないが、その“人間ではない何か”だったからこそ、アーティストにリスナー自身を投影するのとは違う、純粋なエンタテインメントとして受け入れることができたのではないだろうか。  そして先にも触れたように、こういうヴィジュアルだからこそ、鳴らすサウンドは本格的なものでなくてはならない。MWAMを聴いていると、90年代後半を起点にメロディックパンクやミクスチャーロック、そして現在のラウドロックと “過去20年の国内ストリートミュージック”の歴史が走馬灯のようによみがえってくる。しかし、そこには単なる焼き直しや“パクリ”では終わらないオリジナリティが確実に存在している。  もっともわかりやすい例としては、1月25日にリリースされるニューシングル『Dead End in Tokyo』が真っ先に挙げられるだろう。すでに報道されているとおり、この作品の表題曲はアメリカのロックバンド、Fall Out Boyのパトリック・スタンプをプロデューサーに迎え制作された。楽曲のテイストやちょっとしたアレンジからは、確かにFall Out Boyっぽさが感じられる。しかし、曲を聴き終えたときに残るのは“MWAMらしさ”だったりもする。  また同じように、カップリングの「Hey Now」はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之がプロデュースを担当しており、冒頭のサウンドアレンジやAメロのテイストは確実にBOOM BOOM SATELLITESからの影響を感じさせるのに、サビに突入すると“MWAMらしさ”が一気に炸裂し、やはり曲を聴き終えたときは“MWAMらしさ”が色濃く残る。これだけコラボレーション相手のカラーをしっかり生かしつつも、自分たちの芯にある“らしさ”は絶対に殺さない、いや、殺せないというMWAMのスタイルは特筆に値するものと言える。  思えばMWAMは過去にもNirvana(「Smells Like Teen Spirit」「Lithium」)やMr.Big(「Green-Tinted Sixties Mind」)といった90年代初頭に活躍した海外バンドのカバー曲を発表しているが、これらの楽曲も原曲のテイストを残したまま独自のカラーで染め上げていた。こういったチャレンジが、現在の“他のテイストをうまく取り入れつつも、ベースにあるカラーは決して揺らがない”というスタンスに直結しているのかもしれない(だからこそ、一度完成したMWAMの楽曲をBOOM BOOM SATELLITESや石野卓球などがリミックスしたテイクで別の楽しみ方ができるのが、非常に興味深い)。  近年、MWAMは海外展開も積極的に行っているが、まずはその奇抜なヴィジュアルが各国でウケて、続いてバンドが奏でるパワフルでオリジナリティある楽曲にノックアウトされるケースが多いと聞く。MWAMは今後もさまざまな実験を繰り返しながら、「頭はオオカミ、身体は人間」という彼らにしか作れない音楽で我々人間を楽しませてくれるに違いない。(西廣智一)

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