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Microsoftのモバイル秘密兵器「Andromeda」とは何か

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/10/04 14:30
Microsoftのモバイル秘密兵器「Andromeda」とは何か: MicrosoftはWindows 10 Mobileからフェードアウトしつつあり、モバイル戦略の抜本的な見直しを迫られている © ITmedia PC USER 提供 MicrosoftはWindows 10 Mobileからフェードアウトしつつあり、モバイル戦略の抜本的な見直しを迫られている

 Microsoftのモバイル戦略を担うピースとして現在もなお開発の続く「Windows 10 Mobile」。だが最近では大手アプリでも撤退の話題が出てきたり、ハイエンド端末としては最後のとりでとなりつつある「HP Elite x3」の販売中止がうわさされたり(HPは否定しているが)と、盛り上がりに欠ける印象だ。

 ついには米Microsoftの共同創業者であるビル・ゲイツ氏も「最近Androidに乗り換えた」と米Fox Newsのインタビューで語る始末。Microsoftにとって、もはやモバイルOSはそれほど重要な意味を持たなくなっているとさえ思える。

 しかしこうした中、「モバイルを含むマルチデバイス戦略での中核となるOS」および「同OSを搭載したモバイルデバイス」の新プロジェクトをMicrosoftが進めているとのウワサがささやかれている。このプロジェクト名は「Andromeda」と呼ばれ、一部報道によれば2018年中にもその姿を現すという。

●レガシーに捕らわれたWindowsの課題を解決する?

 実はこの話題は本連載でも過去に2度触れている。最初は2017年6月掲載の「Microsoftが新モバイルOSとデバイスを開発中か Windows 10 Mobileのリベンジへ」という記事だ。Windows関連の最新動向に詳しいブラッド・サムス氏が「Microsoft社内で新しいモバイル向けハードウェアのテストを実施している」「このハードウェア用にWindows 10 Mobileと異なるソフトウェアを準備している」という話をしたことを紹介した。

 この時点ではまだAndromedaという名称とはリンクしていなかったものの、もしMicrosoftがそのようなソフトウェアとハードウェアの準備をしていたとして、考え得る問題点や姿を考察してみた。筆者が導き出した結論は「PC向けWindows 10の延長ではなく、あくまでモバイル向けに最適化されたソフトウェア」であり、「デバイスや環境を横断できるユーザー体験が重要」というもので、少なくとも「第3のモバイルOS」のような製品ではないと考えている。

 2度目の話題もブラッド・サムス氏が提供した情報からで、「ウワサの“Windows 10 Mobileではない”Microsoft新デバイスに続報」という記事で紹介した。内容は若干踏み込んでおり、2つの情報源の話として「Microsoftが同社CShell(Composable Shell)とARM64上で動作するモバイル系の新しいデバイスの開発を進めている」という。少なくとも、長らくうわさされてきた「Surface Phone」とは異なるもので、この時点で複数のメディアがAndromedaとの関係を指摘し始めた。

 AnromedaはMicrosoftが開発する次期モバイルデバイスの開発コード名とされているが、このデバイスで動作してWindows 10の機能性を大きく変化させるのが「Andromeda OS」だと、米Windows Centralのザック・ボーデン氏は指摘している。

 同氏によれば、Windowsはハードウェアからソフトウェアまで古い資産に捕らわれて身動きができなくなっており、OSそのものをモジュラー化することでデバイスや用途に最適化された形での展開が可能になり、Windows 10 Mobileのよう派生版OSを用意することなく、真の意味でWindows 10をユニバーサルOS化するというのだ。

 Andromedaの中心は「OneCore」(Windows共通の基盤部分)であり、これをWin32 APIなども組み合わせて自由にカスタマイズできるとボーデン氏は説明する。組み合わせを考えるのはOEMで、Microsoft側で基本セットのような組み合わせも用意するが、あくまでそのターゲットは「モバイル」であり、少なくとも当面はデスクトップOS側への波及はないという。

●Andromeda OSの正体は機能分割されたWindows 10か

 Windows OSのモジュラー化という概念は、以前から組み込み向けOSのWindows Embedded(現在のWindows 10 IoT)で実践されてきたもので、恐らくはその延長となる。

 本体のリソースが限られ、特定用途のみでの恒常運用が求められる組み込み用途の場合、Windowsアプリケーションや周辺機器が動作する必要はあっても、フル機能のOSを包含する必要はなく、これがモジュラー化構造の理由になっている。Linuxのリビルドのようなものとは異なるものの、OEMや顧客がソフトウェアイメージ展開の際に必要な機能を適時選択できるようになっており、Andromeda OSも同様の仕組みだと考えられる。

 ボーデン氏は「Andromedaはエンドユーザー向けに提供される機能ではないことに注意が必要」と説明しているが、それはこのモジュラー構造を決定するのがデバイスをユーザーに提供するOEMである点に由来する。エンドユーザーはOSそのものの構造をいじれないため、「この機能がほしいので、このデバイスを選ぶ」といった形でデバイスの選択をもって機能を選ぶことになる。

 エンドユーザーからすれば、OSそのものは「機能分割されたWindows 10」にすぎず、ユーザーインタフェースを彩る「シェル」の目新しさを除けば、「普通のWindows 10」に見えるだろう。つまり、Andromeda OSはリソースの限られたモバイルデバイスでの実装を柔軟にすることが目的であり、少なくとも「Windows 10 Mobileに代わる全く新しいモバイルOS」というわけではなさそうだ。

●真のターゲットはモバイルに限らないAndroid全体か

 ここでAndromeda OSに関して疑問が幾つか出てくる。1つ目は、ボーデン氏によれば当初のターゲットが「モバイル用途」限定ということで、「カスタマイズの幅がそれほど広くないのではないか」という疑問だ。

 Windows 10 Mobileを含め、現状でMicrosoftは主にARM環境で動作するハードウェアをきちんと規定しており、Androidのようにハードウェアごとのカスタマイズの余地が少ないからだ。メモリが1GB以下であったり、SoC(System on a Chip)のスペックが極めて貧弱というのでなければ、あえて機能を極限までそぎ落とす必要性も低いと考えられ、実質的にはコア部分のフットプリントは機種ごとに違いはないと予想している。

 つまり「スマートフォン向けOS」を想定している限り、このカスタマイズ機能はそれほど意味を持たないのではないか、というのが筆者の考えだ。

 そこで出てくる2つ目の疑問が「どのようなデバイスを想定したOSか」という点だ。カスタマイズに幅を持たせるためにはフォームファクタや用途そのものを大きく変化させるしかなく、「従来のスマートフォン以外のモバイルデバイスにもWindows OSを搭載できるようにする」というのがモジュラー化の目的の1つではないかと推察している。

 Androidの場合、AOSP(Android Open Source Project)を通じてデバイスメーカーがこうしたカスタマイズを行うのが容易だが、Windowsの場合はあくまでOSとしてのセットをMicrosoft側からの供給を受けるのが前提となっている。

 もし一連の報道が正しいのだとすれば、このAndromeda OSの真の目的は「MicrosoftのAndroidエコシステム対抗」であり、これを搭載して市場投入されるAndromedaというモバイルデバイスは、恐らく既存のスマートフォンとも異なる製品ではないかと予想する。

 これはあらためて本連載で紹介するが、Microsoftの牙城だったPOSやKIOSKシステムにAndroidがハイペースで食い込んできており、カスタマイズの自由さとシステムの柔軟性から今後もさらに利用が広まると予想されている。

 Andromeda OSのターゲットは当初モバイルとされているが、恐らくは拡大するAndroidの市場全体を見据えた動きではないだろうか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

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