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MVNOと消費者保護ルール

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/07/26
昼のMVNOは全て0〜1Mbps台に 「格安SIM」17サービスの実効速度を比較(ドコモ回線6月編): 【その他の画像】 © ITmedia Mobile 提供 【その他の画像】

 2015年5月に改正された電気通信事業法が2016年5月に施行されてから、約1年が経過しました。改正の目的は、電気通信サービスのユーザーが安心して利用できるICT環境を整備することで、消費者保護ルールに関わる改正点も多数盛り込まれています。

 今回は、このように進化する電気通信事業法の消費者保護ルールがMVNOに対してどのように適用されているか、MVNOにとっての今後の課題は何か、皆さんにお伝えしようと思います。

●改正事業法の消費者保護とMVNO

 2015年5月に改正された電気通信事業法の消費者保護に関する大きな変更点は、

1. 書面の交付・初期契約解除制度の導入

2. 不実告知・事実不告知の禁止

3. 勧誘継続行為の禁止

4. 代理店に対する指導などの措置

 の4点です。順番に見ていきましょう。

1.書面の交付・初期契約解除制度の導入

 書面の交付は、契約内容がよく理解されないままに契約すると、後に高額な料金負担が生じる、解約したいのに解約がスムーズに行えない、などのトラブルが生じかねないことから、契約の内容を印刷した紙を発行して手渡すことを義務付けたものです。

 ユーザーからの要望があれば、オンラインでの契約内容の表示やPDF形式での送付なども許容されますが、ユーザーが望めば印刷された紙での発行・交付を行わなくてはいけません。主要な通信サービスはほぼ対象となっているルールであり、MVNO各社も法令に基づいた書面の発行・交付を行っています。

 もう1つの「初期契約解除」とは、いわゆるクーリングオフに近い制度であり、契約書面の受領後8日以内であれば、理由を問わず一方的に契約を解除できる制度です。初期契約解除が行われた場合、違約金やその他損害賠償を事業者が請求することはできません。なお、事務手数料、初期契約解除までの期間に利用したサービスの対価や、工事費などについては請求できます。

 この初期契約解除制度はMVNOも対象となりますが、MVNOの場合は総務省の告示により「期間拘束のある」かつ「データ通信専用サービス」に限られています。期間拘束のないサービスは一般に違約金がなく、いつでも解除可能であること、音声通話可能なSIMカードについてはMNPによるキャッシュバック目当ての乱用が懸念されることから、初期契約解除の対象からは除外されています。

2.不実告知・事実不告知の禁止

 不実告知の禁止・事実不告知の禁止は、「誤った情報を伝えて勧誘してはいけない」「正しい情報をあえて隠して勧誘してはいけない」ことを指します。例えば、事実でないにもかかわらず「マンションの管理組合の決議で当マンションの全ての住戸は光回線を○○に乗り換えることになった」というような勧誘を行うことは、不実告知に該当しますし、契約拘束期間や違約金の存在を隠して勧誘することは事実不告知に該当します。

 これは民法や消費者契約法といった他の法令で既に定められている、いわば当たり前のルールで、違反者は、電気通信事業法を所管する総務大臣による業務改善命令や行政指導の対象となります。当然、これらの規律はMVNOにも適用となります。

3.勧誘継続行為の禁止

 勧誘継続行為の禁止は、消費者が勧誘を断った場合、事業者はその消費者に対して勧誘を続けてはいけないというもので、主に電話や訪問販売といった勧誘方法を対象としたものです。一部のMVNOでは、電話による勧誘や訪問販売といった手法での勧誘しているケースがあるようですが、このルールもMVNOに対して適用されており、消費者が一度勧誘を断ったら、その後MVNOが勧誘を継続することは禁止となります。

4.代理店に対する指導などの措置

 代理店に対する指導などの措置とは、代理店の業務が正しく行われるよう、電気通信事業者に監督や指導を義務付けたものです。例えば不実告知・事実不告知の禁止や、勧誘継続行為の禁止などについては、例え携帯ショップやその他販売店(代理店)が勝手に行った場合でも、電気通信事業者の責任が免れるものではない、ということを意味します。

 この代理店の指導義務も、MVNOに適用されます。代理店が経営する店舗を持つMVNOや、電話勧誘などの販売方法のために代理店と契約しているMVNOは、その勧誘方法やその他業務が適正に行われていることを監督・指導しなければなりません。

●消費者保護のチェックのためのモニタリング会合

 このように電気通信事業法の改正により強化された消費者保護ルールですが、これらの仕組みが適切に実施されていることをチェックし、電気通信事業者による自主的な取り組みを促したり、新たな制度改正を提案したりするための専門家による有識者会議として、「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」が2016年に設けられました。この会合では、消費者からの苦情の分析結果や、電気通信事業者への書面調査・対面調査・覆面調査、ユーザーへのアンケートを行い、その結果を年1回、報告書としてまとめています。

・2016年度のモニタリング報告書(※PDF)

 この中で話題となったのは覆面調査でしょう。総務省の委託を受けた調査員が実際に店舗に行き、あたかも契約をするユーザーに装って店舗スタッフから説明を受け、その説明や応対に問題がなかったかを採点するという取り組みです。

 2017年6月に開かれたモニタリング会合では、覆面調査に基づくMNOの初期契約解除制度や料金プランが説明不足だっという指摘がありました。2016年度に、この覆面調査はMNO(ドコモ、au、ソフトバンク)、光ファイバー(FTTH)事業者18社に限り行われ、MVNOは覆面調査の対象とはなっていません。ただ、書面調査については15社のMVNOが対象となっています。

 MVNOの苦情を分析すると、端末の保証に関する認識の不一致や、解約の条件に関する苦情など、消費者のサービスの理解が実際と不一致だったことに起因する苦情が多いことが分かりました。ここから、MVNOサービスの契約時に十分な説明がなされていない、またはユーザーの理解が十分でないまま契約に至ったケースが多いことが疑われます。

 MNOに比べ、ネットワークのつながりやすさや通信速度に関する苦情が多かったことも指摘されました。実際、MNOでは苦情全体の4.8%がネットワークのつながりやすさや通信速度などに関するクレームでしたが、MVNOでは3.6倍の17.4%でした。苦情の総件数に占める比率でも、2016年1〜3月期と、2017年1〜3月期における比較において、MNO3社が30.6%から26.2%に減ったのに対し、MVNOは4.5%から7.7%へと大きく増加しています。

 書面調査に関しては、対象となった15社のうち12社でユーザーへの説明などにかかわる記載不備などがあり、総務省による改善指導が行われたことが報告されています。

 このように、MVNOに対しては厳しい指摘が見られたモニタリング会合ですが、2017年度にはMVNOの実店舗に対する覆面調査も実施が予定されるなど、MVNOに関するモニタリングがより強化される見込みです。

●MVNO業界の取り組み

 ユーザーの増加を上回るペースで苦情の増えているMVNOですが、独立行政法人国民生活センターから、「こんなはずじゃなかったのに!"格安スマホ"のトラブル -料金だけでなく、サービス内容や手続き方法も確認しましょう-」という報道発表が2017年4月13日に行われました。

 この発表には、相談の急増に関する状況だけでなく、主な相談事例や、より丁寧な説明などの消費者啓発を求める業界団体への要望も含まれています。

 この報道発表に関連して、MVNOの業界団体である一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会も、「MVNOサービスの利用を考えている方へのご注意とアドバイス」を4月21日発表しました。この文書に基づき、MVNO各社の中でも消費者への独自の注意喚起を自社のWebサイトに掲載する事業者が相次ぎました。

・インターネットイニシアティブ:「IIJmio」

・NTTコミュニケーションズ:「OCN モバイル ONE」

・ケイ・オプティコム:「mineo」「日経電子版+SIM」

・ソニーネットワークコミュニケーションズ:「nuroモバイル」

・ニフティ:「NifMo」

・ビッグローブ:「BIGLOBE LTE・3G」

・LINEモバイル:「LINEモバイル」

(MVNO委員会による情報開示より)

 このような取り組みが必要なこと自体は、決して自慢できることではありません。ただ、消費生活センターなどの相談窓口からの提言に対し、業界を挙げて速やかに行動することで、より消費者のMVNOサービスの理解を高めていくことは、今後のMVNO業界の健全な発展のためには非常に重要なことであり、(筆者もメンバーの1人である)MVNO委員会でも今後も積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 また、最終的に消費者への説明を担っていくのはそれぞれのMVNO各社であり、その代理店(店舗)となります。業界団体が笛を吹けど踊らず、とならないよう、加盟各社による一層の取り組みも期待されています。

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