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MVNOはなぜドコモ系が多いのか? MNOはMVNOに“いじわる”できる? 総務省が解説

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/04/26
MVNOはなぜドコモ系が多いのか? MNOはMVNOに“いじわる”できる? 総務省が解説: 3キャリアのSIMロック解除対応状況。最近注目されたのが、「SIMロック解除制限期間」と「自社網を利用するMVNOでの端末の利用可否」(赤字部分) © ITmedia Mobile 提供 3キャリアのSIMロック解除対応状況。最近注目されたのが、「SIMロック解除制限期間」と「自社網を利用するMVNOでの端末の利用可否」(赤字部分)

 普段、携帯電話を使っているときに意識することはないが、日本の情報通信に関わる制度を取り仕切っているのは総務省だ。例えば、2016年3月に総務省が策定した「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」では、過剰なキャッシュバックや「実質0円」の端末販売が禁止された。また、1月に発表された新ガイドラインでは、SIMロック解除期間が大幅に短縮されている。

 4月15日に開催された「IIJmio meeting 15」では、総務省総合通信基盤局 電気通信事業部料金サービス課の内藤新一氏が登壇。MVNOに対しても大きな影響を与えている、総務省の情報通信に関する取り組みについて説明した。

 総務省によると、2016年12月末時点でMVNOのシェアは1割弱。しかし、利用者アンケートでは、約16%がMVNOをメイン端末として使用している。これは6人に1人がMVNOを利用していることになり、2016年に同様の調査をしたときから8ポイント近く上昇している。Web上でのモニターアンケートだったので、多少上ブレしている可能性は否めないが、コンシューマー市場でMVNOが伸びていることは明らかだ。

 安価な料金に魅力を感じてMVNOを利用しているユーザーは、なぜMVNOは料金が安いのか、安いと通信品質も悪いのか、といった素朴な疑問を持つに違いない。また、MVNOについて調べてみると、なぜドコモのネットワークを利用するMVNOが圧倒的に多いのか、ドコモ系MVNOではキャリア端末をそのまま使えるのに、au系MVNOを利用するとSIMロック解除が必要になるのはどうしてなのか、といった疑問もわいてくる。内藤氏は、これらの疑問について、総務省が果たしている役割を明らかにしながら解説した。

●MNOはネットワークの貸し出しを拒否できない?

 MVNOの料金が安い理由は、MNO(キャリア)のように大規模な設備投資が不要だから、広告やショップを減らしてコストを抑えているからなど、さまざまな要素はあるが、内藤氏が示したのは市場の構造。現在の携帯電話市場は、ドコモ、au、ソフトバンクの大手3グループとMVNOに大きく分かれる。MVNOは既に600社以上が参入し、新たなユーザー獲得のための競争がし烈だ。MVNOの料金は、競争することで安くなっている傾向があると内藤氏は指摘する。

 MNOとMVNOは、同じ携帯電話のサービスを提供しているので、いわば商売敵だ。しかも、最近はMVNOを選ぶユーザーが増え、MVNO利用者の増加率の方がMNOよりも高い状況。MNOにとってMVNOは無視できない競争相手になってきている。

 こういう状況になると、一般的なビジネスの場合は、MNOがMVNOにネットワークの貸し出しを止めたり、貸す料金を値上げしたりして、自分たちとすみ分けができるようにするものだ。しかし、MNOはそうすることなく、現在の状況を許している。なぜだろうか。

 ここに総務省の役割がある。総務省が所管する電気通信事業法の中には、通信事業者の基本的な義務の1つとして、ネットワークを他の通信事業者に貸す義務が決められている(第32条)。この法律があるため、MNOを含む通信事業者は、ネットワークを借りたいというMVNOを含む他の通信事業者からの要求を、特に理由がない限りは、断ることができないのだ。

 シェアの大きいMNOには、データ接続など一定のネットワーク機能を提供する義務があり、さらにネットワークの料金については、原価と利潤を合わせた水準以下で提供する義務がある。このため、一方的に値上げすることができない。

 法律によって、MVNOはMNOのネットワークをリーズナブルに借りられる。それによって新しいMVNOが参入しやすくなり、その結果が現在のMVNO600社以上につながっているのだ。

●MVNOの通信品質は大手と同じ?

 料金が安いMVNOの通信品質が悪いのだろうか。音声通話については、080/090から始まる番号からかける場合は、MNOのネットワークをそのまま変えずに使っているので、原則的に品質に違いはない。ただ、MVNOの中には「00XY」というプレフィックス番号を付けて発信し、他の通信事業者のネットワークを経由する場合がある。また、050から始まる番号の場合はIP電話の技術を使っていて、この場合はインターネットを経由するため、音質に違いが出てくる。これらの音声通話については、アプリが提供されることが多い。

 データ通信は、MNOのネットワークにMVNOの設備を経由させて、インターネットにつなぐ形になっている。このとき、MNOとMVNOをつなぐ接続点(写真では赤い二重丸の部分)をどれだけの容量にするかによって、通信速度が変わってくる可能性がある。

 MVNOを使っていると、通勤時やランチタイム時に通信速度が落ちることがある。多くの人が一斉に通信するせいでもあるが、トラフィックの量が接続点の容量を超えてしまうことでも遅くなる。接続点の容量を多くすれば速度は改善するが、容量を多くするほどMVNOはMNOに多くの借り賃を支払わなくてはならない。MVNOはサービス面や経営面のバランスを考えて、この容量を決めており、このことがMVNOごとに通信スピードが異なる大きな理由の1つになっている。

 ところで、MNOはネットワークに手を加えずMVNOに貸すことが前提になっているが、競争の中で「MVNOにいじわるをする」可能性も想定できなくはない。こうしたことを防ぐため、電気通信事業法では、MNOがMVNOに対し、自らの利用者に比べて不利な条件とした場合には約款変更命令を出せることになっている(第34条)。また、利用者を合理的な理由なく差別することは不当な差別的取り扱いとなり、業務改善命令の対象となる(第29条)。

 こうした法律があることで、MNOがMVNO向けの通信を遅くするようなことがなく、MVNOが対等に競争できる環境になっているのだ。

 なお、MNOのネットワークのスピードに関しては、総務省がガイドラインを作って計測方法を定めており、計測ソフトも決められたものが使われている。最近はMVNOの通信スピードもユーザーの関心の対象になっているので、どのように計測するべきかを総務省としても検討するということだ。

●MVNOはなぜドコモ系が多いのか

 MVNOの多くは、ドコモからネットワークを借りてサービスを提供している。この最も大きな理由は、ドコモのネットワーク利用料が、3大キャリアの中で一番安いからだ。

 3社の料金を示したグラフから、10Mbps当たり月額30万円近くの差があることが分かる。この利用料は仕入れ値に当たるものなので、MVNOは自然と安いドコモのネットワークを使うようになる。また、ドコモが最も早くから現在のような形でネットワークを提供しており、体制が整っていること、ドコモが採用している通信方式は比較的シンプルで、幅広い端末を使えることもメリットだと内藤氏は分析している。

 ネットワークの利用料は、「ルールによって」決められている。MNOはこれを原価+利潤を回収できる水準以下とする義務があると、電気通信事業法で定められている。MNOによってネットワークの整備にかかる費用は異なるので、原価もそれぞれ異なってくる。ネットワーク料金は構造的にどうしても異なってしまうものなのだ。

 ただ、3キャリア間であまり差があるのは望ましくないということで、利潤の部分については、事業者によって差が出すぎないように、総務省が2017年2月に制度を見直した。それによって、最近のネットワーク利用料金は格差が少し縮小している。もちろん、引き続きドコモが一番安い状況は続いているが、こうした取り組みによって、1つのMNOにMVNOが集中せず、さまざまなMNOに広がっていくことを総務省は期待している。

●自社網のMVNOにもSIMロック

 SIMロックは、MNOが販売する端末が他のMNOでは利用できないように制限をかけることだが、最近注目されているのは、自社網を利用するMVNOでSIMロックを解除することなく端末を使えるかどうかだ。ドコモは自社網を利用するMVNOに対してSIMロックをかけていないが、KDDIは一部、ソフトバンクは全体的にMVNOに対してもSIMロックがかかるような設定をしている。

 SIMロックの解除については、総務省がガイドラインを設けて、2015年5月以降に発売された端末について義務化したが、新ガイドラインでは大きく2つの内容で見直しをしている。

 1つは、MVNO向けのSIMロックの禁止。MVNO向けのSIMロックは、そもそも必要ないという結論になり、2017年の8月1日以降に新規発売になる端末について適用される。同じネットワークを利用するMVNOでは、SIMロックを解除せずに端末を利用できる。今のドコモ端末と同様の扱いだ。

 また、SIMロック解除に応じるまでの期間が短縮され、割賦払いの場合は、割賦の1回目を支払いを確認できる「100日程度以下」の期間となる。これについても8月からの適用。一括払いの場合は、事業者が支払いを確認できた時点で速やかに解除可能にする。こちらはシステムの対応の関係で、2017年の12月以降から適用される。

●今後の取り組みについて

 内藤氏は総務省の役割について、「MVNOに対しては、MNOからネットワークを借りやすくすることで競争を加速させ、ユーザーに対しては、他の通信事業者のサービスを選びやすくすることをサポートする」ことだと語る。

 今後は、「大手キャリアではできるのに、MVNOではできないことを減らしていき、ユーザーにとってMNOとMVNOで差がないという認識を広めていきたい」とした。例えば、IIJのHLR/HSSの導入もその一例だ。

 また、大手キャリアが、特定のMVNOを優遇、あるいは不利にすることを防止していく。競争を促進するためにMVNOの参入を促していたが、一部を優遇したり、不利にしたりすることで、「MVNOを含めた一種のグループ化が進み、市場が3社の寡占的状況に戻ってしまうことを総務省としては懸念」している。

 さらに、MVNOにおける消費者保護と不適正利用防止を充実させていく。MVNOのユーザーが増えたときには、設備増強に合わせてサポートのキャパシティーも高める必要がある。「消費者問題は、消費者のサービスに対する理解と、事業者が提供している情報のミスマッチから発生することが多い」と内藤氏は指摘。MVNOに関する深い知識が少ないユーザーも増えていく今後は、より分かりやすい情報提供が必要だとし、「総務省もモニタリングして、不備があれば改善を個別に図ってもらうようにしていきたい」と語った。

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