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MVNOはキャリアメールを提供できるのか

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/03/10 11:34
MVNOはキャリアメールを提供できるのか: 「キャリアメール」の一例。写真はauのAndroidスマートフォンで使えるメールサービス(@ezweb.ne.jp) © ITmedia Mobile 提供 「キャリアメール」の一例。写真はauのAndroidスマートフォンで使えるメールサービス(@ezweb.ne.jp)

 大手キャリアのスマートフォンを利用している方とお話しすると、「MVNOにはキャリアメールがないから乗り換えられない」という話になることが少なくありません。MVNOはキャリアメールを提供できないのでしょうか。そもそも「キャリアメール」とは一体何なのでしょうか?

●そもそも「キャリアメール」とは?

 「格安スマホ」「格安SIM」を提供するMVNO各社とキャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)とのサービスの違いについてよく取り上げられる話題の1つに、「キャリアメール」があります。

 キャリアメールとは、「xxx@docomo.ne.jp」や「xxx@ezweb.ne.jp」「xxx@i.softbank.jp」といった形式のメールアドレスで、キャリアの携帯電話・スマートフォンの契約によって利用可能になるメールサービスです。明確な定義はありませんが、慣習的に以下の事業者のメールサービスがキャリアメールと呼ばれることが多いようです。

・NTTドコモ

・KDDI(au)

・ソフトバンク

・ディズニー・モバイル(ソフトバンクのMVNO)

・Y!mobile(旧ウィルコム)

・Y!mobile(旧イー・アクセス)

 なお、これらの事業者が提供していても、追加サービスとして提供されるメール(ドコモwebメールや、au oneメール……いずれもサービス終了)はキャリアメールと呼ばれることはありません。

●キャリアメールに求められる役割

 MVNOを検討中の方、ご利用中の方から「MVNOでもキャリアメールを提供してほしい」というご要望が上がることがあります。もちろんMVNOは「キャリア」ではありませんので、MVNOがどのようなメールサービスを提供しようとも「キャリアメール」にはなりません。

 ご要望をより正確に表すなら「キャリアが提供するメールサービス相当の役割を持ったメールサービスをMVNOが提供してほしい」ということだと思われます。

 実は、メールサービスを提供しているMVNOはすでに複数あります。しかし、それらのサービスは「キャリアメール(相当)」と認識されていません。キャリアメールとして認識されるには、普通のメールサービスにはない何かしらの条件があるように思われます。

 その条件を考えるために、「キャリアメールが欲しい」というご要望と一緒に寄せられる、「キャリアメールが必要な理由」を分析してみることにします。

●着信通知が欲しい

 キャリアメールの大きな特徴として、スマートフォンや携帯電話で受信操作を行わなくても自動的にメールが受信され、着信音が鳴るという機能があります。これをプッシュ通知と呼びます。

 これに対して、PC用を含めた多くのメールサービスでは、メールアプリを立ち上げたり、Webメールの画面を開いたりすることで、初めてメールが着信していることが分かります。プッシュ通知に対応しているのは、Gmailと専用アプリの組み合わせなど、一部のサービスに限られています。

 それ以外のメールサービスでも、アプリに「自動受信」を設定することは可能ですが、これは数分〜数十分おきにメールが届いていないかを確認する仕組みのため、利用者がメールに気付くのが遅れてしまうことがあります。

 キャリアメールのプッシュ通知に慣れた方にとっては、この使い勝手の違いが大きなハードルとなるようです。

●ガラケー宛てにメールを送りたい

 ガラケー(フィーチャーフォン)全盛期には、LINEのようなメッセンジャーは携帯電話では普及していません。また、SMSは異なるキャリアの契約者間ではやりとりができず、同一キャリア内でしか利用できないという時代が長く続いたため、携帯電話間の連絡手段としてはほとんど利用されていませんでした。その結果、キャリアメールが携帯電話同士の連絡手段として非常に大きな位置を占めることとなります。

 しかし、その一方で、キャリアメール宛てに大量の迷惑メールが送信されるようになり、多くの方が「迷惑メールフィルター」を利用せざるを得ない状態になりました。

 この迷惑メールフィルターでは「携帯電話からのメールは受信許可」「それ以外のメールは個別に受信したいものを選択する」といった設定にされることが非常に多いようです。これは、迷惑メールのほとんどが携帯電話以外のメールアドレスから送信されているため、携帯電話以外のメールを拒否するだけで迷惑メールの大半を防ぐことができるためです。

 また、ガラケーからサービスを引き継いだスマートフォン向けのキャリアメールでも、同様の迷惑メールフィルターが用意されています。

 これらの迷惑メールフィルターの設定画面では「携帯電話からのメール」だけが他のメールと違って特別扱いされています。この「携帯電話からのメール」とは、キャリアメールを指しています。

 このような設定をしているガラケー・スマートフォンの利用者と連絡を取るためには、メールを送信する側がキャリアメールを使うのが最もリーズナブルです。キャリアメール以外のメールを受信してもらうために、いちいち個別に「受信許可」の設定をしてもらうのはとてもハードルが高いためです。

●コンテンツサービスに登録したい

 ガラケー向け、スマートフォン向けを問わず、コンテンツサービスの中には会員登録時にキャリアメールの登録を必須としているものが散見されます。このようなサービスを利用したいため、キャリアメールが使いたい、というのもよく伺うご要望です。

 そもそもなぜ、コンテンツサービスでキャリアメールの登録を必須としているのでしょうか。それには、コンテンツサービスを提供する事業者側の立場で考える必要があります。

 コンテンツサービスの提供者にとって、サービス利用者への連絡手段を確保するのは重要です。キャリアメールにはプッシュ通知の機能がありますので、その他のメールサービスと異なり、メールの着信後、速やかに読まれることが多く、サービス提供者にとって都合が良いというのも理由の1つです。

 また、それ以外にも1人の利用者がむやみに多数の会員登録を行うことを防止するという目的がある場合もあります。無料で利用できるフリーメールはもちろん、PC向けのメールサービスなどでは安価に多数のアドレスを持てます。

 それと比べると、キャリアメールは携帯電話の契約ごとに原則としてアドレス1つだけが提供されるため、複数のアドレスを持つためのコストが高くなります。お金に糸目をつけなければ複数のアドレスを持つことも不可能ではありませんが、フリーメールなどを使ってカジュアルに大量登録されるようなことは防げますので、ある程度の効果があると考えられていました。

 また、SNSなどのサービスではサイト上でのやりとりに関連して事件などが発生することがあります。こうした事態に備え、サービス提供者は利用者の身元を確認することが求められる場合もあります。誰でも登録できるフリーメールと異なり、キャリアメールは携帯電話の契約に基づいて発行されるため、それを身元確認の代わりとして使用するケースもあります。

※ドコモの「2in1」サービスなど、1契約で複数のメールアドレスを持つことができる場合もあります。※通常、キャリアメールから利用者の個人情報を調べることはできませんが、警察やその他の機関が適切な手続きを踏むことによって、携帯電話契約者の情報を開示させる場合があります。

●キャリアメールの条件

 ここまで取り上げた話を整理すると、メールサービスが「キャリアメール」と認識されるための条件として、以下を挙げられます。

・プッシュ通知ができること

・迷惑メールフィルターで「携帯電話からのメール」として扱われること

・コンテンツサービスに登録できること

・携帯電話の契約に基づいてメールアドレスが提供されること

・携帯電話1契約につき、1つのメールアドレスが提供されること

 では、これらの条件をクリアしたサービスをMVNOが提供することは可能なのでしょうか?

プッシュ通知

 PC向けのメールで一般的に使われているPOP3やIMAP4と呼ばれるメールの通信方式では、プッシュ通知を実現することはできません。キャリアメールでは、POP3やIMAP4をベースに独自拡張した方式や、MMSと呼ばれる携帯電話専用のメールシステムを利用しています。

※IMAP4でプッシュ通知を実現するIMAP IDLEやPush-IMAPという方式が提案されていますが、普及していません。

 MMSは携帯電話システムの一部として動作しており、この部分は現在MVNOが利用することはできません。従って、MVNOがMMSでキャリアメールを提供することはできません。

 従って、MVNOがプッシュ通知を実現するためには、プッシュ通知に対応した独自の通信方式と対応アプリを開発するか、Microsoft Exchange ActiveSyncプロトコルのようなプッシュ通知に対応したサーバを用意する必要があります。

 あまり一般的ではないものを用意しなければならないため、多少の努力は必要ですが、技術的にはMVNOがキャリアメール相当のものを用意するのは不可能ではありません。

迷惑メールフィルターの対応

 MVNOが提供するメールサービスを「携帯電話からのメール」として取り扱ってもらうためには、MVNOではなく各キャリアの迷惑メールフィルターに設定を行ってもらう必要があります。

 しかし、現時点では「携帯電話からのメール」として扱われるための基準や、手続きがオープンにはなっておらず、どのような対応をすれば良いかが判然としていません。

コンテンツサービスへの登録

 コンテンツ提供事業者が期待する、「携帯電話契約との関連付け」「1契約1アドレス」については、契約管理システムをそのように設計すればMVNOでも対応可能です。ですが、仮にMVNOがそのような準備を整えたとしても、その先には大きなハードルがあります。

 どのメールアドレスを登録可能にするかは各コンテンツサービスが独自に判断していることで、どこかの団体や窓口が統括しているようなものではありません。そのため、各コンテンツサービスの提供元を1つ1つ回ってMVNOのメールを登録可能にしてもらえるように交渉して回る必要があるのです。交渉しなければならないサービスがどれだけあるかも分からず、その難易度も測りかねるといった状況です。

●キャリアメールの将来

 以上のように、MVNOがキャリアメール的なものを提供するためには、技術的なハードルよりも、各キャリアやコンテンツサービスの提供者との交渉といった、非技術的なハードルの方が高いと考えられます。

 一方で、スマートフォン同士の連絡手段としてはLINEを始めとした各種メッセンジャーが普及し、コンテンツサービスでも多重登録防止・本人確認のためにSMSを導入する提供者が増えてきています。

 ある意味レガシーなメディアとなりつつあるキャリアメールをこの先どのように位置付けていくのかは、熟慮が必要かと思われます。

●著者プロフィール

堂前清隆

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) 広報部 技術広報担当課長

「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。

・Twitterアカウント @IIJ_doumae

・IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」 http://techlog.iij.ad.jp/

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