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NMB48はアイドルシーンで屈指の“タレント集団”にーー横アリ公演にみた「独自の試み」の数々

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/09/25 株式会社ブループリント
© Real Sound 提供

「色んなことをやりつつ、自分たちらしさも極めつつ、それを皆さんに好きだと言ってもらえるグループであれるように、楽しむこと、楽しませることを一番に考えてやっていきますので、思う存分NMB48というグループを楽しんでもらえればと思います!」(山本彩・アンコールのMCより) NMB48はいま、アイドルシーンで屈指の“タレント集団”になりつつあるーー9月20日に神奈川・横浜アリーナで行なわれたアリーナツアー『NMB48 ARENA TOUR 2017』初日公演は、そんなことを思わずにはいられないほど、各メンバーが輝いて見えるライブだった。 この日のライブは、NMB48にとって約2年半ぶりの関東圏ワンマン。ここ1年前後で、岸野里香、上西恵、薮下柊、藤江れいな、須藤凛々花、渡辺美優紀と、中心メンバーが次々とグループを巣立っていき、9月27日には木下百花まで卒業することになったNMB48は、果たしてどんな現在形を提示するのか。期待と不安が織り交ざった気持ちで会場へと向かったが、各メンバーが演出に携わったという公演の冒頭を観て、そんな不安は杞憂であると思い知らされることになる。NMB48 山本彩、『総選挙』不出馬の理由を告白 最初の「overture」が流れ、メンバーが特攻服や改造制服をモチーフにしたヤンキー風の衣装で登場し「パンキッシュ」「マジジョテッペンブルース」の2曲を披露。しかし、白間美瑠は「最初からやり直したい! もっとかわいらしくオープニングを飾りたい」と提案し、再び「overture」が会場に流れ、彼女をセンターにキュートな衣装で「なめくじハート」を歌い踊る。だが、今度は木下が「ちょっと止めて! 卒業前にこれはキツい。もっとNMB48らしいオープニングをやりたい」と話し、横浜アリーナには3度目の「overture」が流れた。 オープニングを2度やり直すという“天丼”も、そこに至るメンバーの絡みも、ライブというよりはよく練り込まれたコントのようで、そのスムーズさからツッコミにくいが、これは「NMB48らしさとは何か?」という一つのテーマに対するグループからの回答でもあるのだろう。カッコよさ、可愛らしさ、面白さ、元気の良さ、泥臭さ、艶やかさ。すべてグループがこの7年で積み上げてきたものであり、どれもがNMB48に欠けてはならない“らしさ”だ。アリーナとスタンドの間に円形のステージを作り、そこを各メンバーがアピールしながら走り回る「ナギイチ」「北川謙二」には、その要素が全てが詰まっているように思えた。 そして、この日の演出やライブを語るうえで欠かせないのは、この日新設された“女性専用エリア”の存在だ。アイドル好きの女性客がここ数年で増えていることは明らかだが、専用エリア以外の割合も含めるとほぼ男女半々の客層というアイドルのライブは異様といえる。その光景を作り出した中心人物は、YouTuberとしてチャンネル登録者がNMB48本体を越える人気を博し、今年の『AKB48 49thシングル選抜総選挙』でも女性ファンを中心とした票で16位を獲得した吉田朱里なのだが、もちろんそれだけではここまでの割合にはならない。 NMB48は当初から、各メンバーがそれぞれピン芸人かのごとくキャラクターの個性を強く打ち出し、現役メンバーはその個性をさらに磨き上げてきた。メンバー同士の関係性や各自のパーソナリティーは、他のグループよりも濃厚すぎて、まるで二次元のアイドルアニメコンテンツを消費しているような気持ちにすらなる(グループ内で山本彩や三田麻央を中心に漫画・BL本がやり取りされていることが関係あるかは不明だが)。筆者の近くにいるNMB48のファンも、男女ともにアイドルアニメコンテンツ好きの割合が多いのは偶然ではないかもしれない。ともかく、広く個人活動を繰り広げる中で獲得したファンが全て結集し、従来のファンや吉田を入り口とした女性ファンと混ざり合って、これまでに観たことのない客層と熱狂が存在しているのが今のNMB48のライブなのだ。 もちろん、個々の“らしさ”を切り取って見せる演出にも進化が見られた。「カッコよさ」が目立ったのは、加藤夕夏がセンターを務め、ダンス選抜がキレキレのパフォーマンスを繰り広げる「Must be now」、木下が宝塚風の衣装で登場し、“女性専用エリア”で黄色い歓声を浴びながら歩いた「プライオリティー」。「可愛らしさ」にフォーカスしたのは、白間と吉田による掛け合いが絶妙な「ハートの独占権」、矢倉楓子がセンターを務め、曲中に着替えを披露した「ジッパー」など、枚挙に暇がないほど。 また、絶対的エース・山本彩は、ライブの各所においてマルチな才能を発揮した。歌やダンスはもちろんのこと、他の楽曲では時に中央に立ち、それ以外でも真ん中に立つメンバーを支え、MCではツッコミを入れまくる。極めつけはライブ中盤、エレキギターを担いだ山本が「私と百花の2人で歌うコーナーを用意しました。曲も2人で決めました。聴いてください」と真面目な雰囲気の中でブルージーなギターソロを弾き、ギタリストとしての役割と果たしているかと思えば、木下がキュートな衣装で「ももきー(わるきー)」を歌い会場が笑いに包まれるという、“緊張と緩和”の効いたコミカルな演出にも一役買ってみせた。ソロアルバム2作目のリリースも近づいているが、やはりまだまだ彼女はグループに必要だ。 ライブ後半のMCでは、吉田、市川美織、石塚朱莉と、YouTuberとして活動しているメンバーに焦点を当てたコーナーも用意された。各自のSNS運用が上手いこともNMB48の特徴だが、メイク動画でアイドルYouTuberのトップをひた走る吉田、「やってみた」系の動画を投稿している市川、最近は石塚がゲーム実況YouTuberとしての活動を始めるなど、個人活動の巧さはアイドルグループでも屈指の実力を持つ。そんな彼女たちが「次に披露する楽曲の歌唱中のみ、動画の撮影OKです! YouTubeにアップして、みなさんもYouTuberになってください!」とアナウンスして「オーマイガー!」をパフォーマンスするというのは、運営も一体となってその活動を後押しできていることのあらわれだ。また、曲中にサプライズゲストとしてHIKAKINが登場し、披露後には彼のカメラで会場とメンバーを撮影していたが、全員が我先にと画角に収まろうとするシーンでは、「やはりNMB48は自己プロデュースの上手なタレントが集まる集団だ」と再確認させられた。 そんなライブは終盤、「高嶺の林檎」「カモネギックス」「イビサガール」「ドリアン少年」、「まさかシンガポール」とヒットチューンを次々と披露し本編が終了。アンコールでは代表曲「僕らのユリイカ」でメンバーが会場を駆け回ったあと、市川が同曲のリリース時にグループへと移籍してきたことに触れ「あれから4年、NMB48に染まっている自分と染まっていない自分があって、それが葛藤でもある。何か一つレモンの酸味を入れたいと思っているから……関西の流れに逆らいつつも頑張りたい」と語る。市川のような存在もまた、グループを形作ってきた要素の一つだし、彼女がまだまだ前に出てこれるのがNMB48というグループが持つ懐の広さだ。 そして、木下は「今日もみなさんがそばに居てくれて、声援もくれて。それを近くで聞くことがなくなるんかと思うと、すごい不思議な感じ」と彼女らしく楽しそうに公演を振り返るが、「僕だけのSecret time」でメンバーからの寄せ書きがスクリーンに映し出されると、涙を堪え切れず号泣。「最近泣きすぎて『丸くなった』とか言われてるから泣かんって決めてたのに……」と悔しがりながら、「泣いて終わりたくないんで!」と「青春のラップタイム」を披露するものの、「泣かないって決めてたのに、皆さんの笑顔が素敵すぎて……涙が止まらなくて悔しいんです。もう1回、笑顔で終わるチャンスをもらえませんか? 勝手に曲振ってもいいですか?」と問いかけると、ダブルアンコールの「NMB48」へ。楽曲が終わり、最後にステージに残った山本へ向け、木下がキスをし、照れ笑いを浮かべながらステージを去ったところでライブが終了した。 木下百花という“最強のトリックスター”を送り出すに相応しい、バラエティ豊かで完成度の高い内容となった今回のライブ。次に関東圏で行なわれるライブがいつになるかは分からないが、5期生を含む若手メンバーからベテランまで、各自がそれぞれの分野で個性を発揮し、結果を残しながら、集団としても輝く今のNMB48は、間違いなく面白い。そのことを痛感しつつ、一日でも早く次の機会を与えてほしいと願うばかりだ。(中村拓海)

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