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PCだけでなくサーバもARM対応を進めるMicrosoft

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/03/27
PCだけでなくサーバもARM対応を進めるMicrosoft: 「Project Olympus」の1Uサーバデザイン © ITmedia PC USER 提供 「Project Olympus」の1Uサーバデザイン

【連載】鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:

 米Microsoftが「Windows Server」のARMプロセッサ版を開発し、同プロセッサとソフトウェアを用いたシステム運用を計画していると発表し、サーバ市場の今後のトレンドを見据えた動きの一つとして話題になっている。

 サーバ市場向けのプロセッサと言えば、現在はIntelが独占的な地位にあるが、今回のMicrosoftの発表をはじめ、ARMプロセッサに注目が集まりつつある状況だ。

 今回はこの背景を整理しつつ、MicrosoftとIntel、そしてARMプロセッサとデータセンターの将来について考えてみたい。

●サーバ向けプロセッサ市場を独占するIntelにARMで対抗へ

 今回の発表は、3月8日に米カリフォルニア州サンタクララで開催されたOCP(Open Compute Project) Summit 2017にて、米Microsoft Azureクラウドハードウェアインフラストラクチャ担当ジェネラルマネジャーのKushagra Vaid氏による基調講演で行われた。

 OCPとは、2011年にFacebookを中心にクラウド事業者や各種ベンダーらが集まって設立された団体だ。データセンター向けに効率的な共通のハードウェアデザインによるサーバアーキテクチャを開発している。

 Microsoft自身は「Azure」というクラウドサービスを提供する事業者であり、2014年に同団体に加盟後はさまざまな形でデザインやシステム開発面での貢献を行ってきた。2016年10月には「Project Olympus」を発表し、共通のマザーボードとバッテリーを備えた1U、2Uのラックサーバによる高密度サーバのデザインを提案している。

 Olympusとはギリシャ神話で神々が住む山として知られる「オリンポス山」の英語名だが、さまざまな役割を持ったサービスが共通デザインのサーバに同居する形でデータセンター内に鎮座している様子をイメージしているのだろう。

 OCPそのものはIntelもプラチナメンバーとして参加している他、CanonicalやRed HatのようなMicrosoft以外のOSベンダーも参加しているなど、ベンダーと顧客が一体となって共通のアーキテクチャを模索している。

 一方、調査会社のIDCが2016年5月に発表したサーバ市場の調査報告によれば、Intelの同市場におけるプロセッサ製品シェアは2010年で93.0%、2015年で99.2%とほぼ独占というレベルに達しており、他の半導体メーカーに付け入る隙を与えていない。2016年の同社データセンター部門(DCG)の売上は172億ドル、営業利益は75億ドルだ。

 実際、Intelのサーバ向けプロセッサ「Xeon」は稼ぎ頭であり、PC向けプロセッサなどと比較しても利益率が非常に高い。

 かつてAMD(Advanced Micro Devices)が「Opteron」プロセッサで享受していた高収益市場をIntelが奪って独占しているのが現状だが、これは同時に他のベンダーにとって大きな攻略ターゲットにもなっている。

 IDCの調査報告は、Intelの独占状況を伝えるとともに、2016年から2017年にかけてAMDによるx86ベースの対抗製品に加え、Qualcomm、Applied Micro、Cavium、さらにはBroadcom(2017年現在はAvago Technologiesによる買収で同社の一部門に)といったベンダーが次々とARMプロセッサの新製品を投入し、Intel包囲網を築きつつあると述べている。

 ARMプロセッサによるサーバ市場の攻略は、ARM64アーキテクチャが発表された2011年以降に活発になるが、IDCの調査報告にあるように、この時期から逆にIntelの独占が進んでおり、市場の拡大に反してARMの活躍の場が限定的になっているのが実際だ。

●ARMサーバが注目を集める理由

 ではなぜ、今このタイミングになってARMサーバが注目を集めるのだろうか。

 それは、前述のようにベンダー各社が新製品を投入し続けている他、技術の進展によりパフォーマンスやスケーラビリティの面でXeonなどの強力なライバルに遜色ないものが出てくるようになったことが挙げられる。

 また、ARMプロセッサ搭載システムをベンダーらと協力して開発しているのは、顧客であるサービスプロバイダー側であり、かつてシステムデザインやアプリケーションの互換性で競合をリードしていたx86アーキテクチャの強みが相殺されている。

 2016年にはGoogleがIBMと共同でPower9ベースのサーバを開発していることも話題となったが、現在サーバ市場のトレンドを動かしているのは、クラウドサービスのために巨大データセンターを運用するサービスプロバイダーであり、OCPのような動きとも無縁ではないだろう。

 InfoWorldによれば、AMDは2020年までにARMアーキテクチャによるサーバ市場のシェアが20%に達すると予測しており、これがもし外れたとしても、4年以内にはある程度の勢力図を描き出している可能性は十分にある。

●Windows Server on ARMはMicrosoftの社内用途限定だが……

 さて、Microsoftに話を戻そう。同社は2016年末にQualcommのSnapdragonプロセッサ上でフルバージョンのWindows 10が動作するデバイスを2017年中に投入する計画を発表しているが、今回も同様に、QualcommのQualcomm Centriq 2400プラットフォーム上でMicrosoftのサーバ向けソフトウェアを動作させる計画だ。

 Qualcommの事業部門であるQualcomm Datacenter Technologies(QDT)は過去数年にわたってMicrosoftとARMサーバの可能性について研究開発を続けており、マザーボードの開発などでプロジェクトに参加しているCaviumとともに、マザーボードからファームウェア、OS、コンパイラ、各種ツール、CoreCLRなどを用意する。

 動作するOSもWindows Serverを同プラットフォーム向けに最適化したもので、48コアの1UサーバのシステムはOCPならびにProject Olympusに準拠している。システムの詳細については、OCPがYouTube上にMicrosoftの基調講演の模様をアップロードしているので、興味のある方は確認していただきたい。

 なおQualcommの説明によれば、このProject Olympusで動作するWindows Server on ARMは次世代のクラウドサービスでの利用を想定しているものの、現状ではまだMicrosoftの社内データセンターでの内部利用にとどまるという。

 またBloombergが本件を伝えた記事でも、米MicrosoftでAzureクラウド部門担当バイスプレジデントのJason Zander氏がインタビューの中で「まだ製品化には至っておらず、あくまで次の論理的なステップにすぎない」と念を押している。

 つまり、Windows Server for ARMといったソフトウェアを販売したり、Azureで選択可能なインスタンスにARMサーバが出現するといった一般向けの提供は行わず、当面は研究開発フェーズが続くと考えられる。

●このタイミングでWindows Server on ARMを発表した意味

 とはいえ、長年にわたって水面下で研究開発していたものを、あえてこのタイミングで正式に発表したことには相応の意味があるはずだ。今後MicrosoftはこのシステムをWindows Serverのシステムとは直接リンクしないサービス、例えば検索やストレージ、一部アプリケーションサービスといった用途で活用していくだろう。

 また、MicrosoftはOCPでの発表の一部として、米NVIDIAとの提携による「AI分野でのProject OlympusにおけるNVIDIA GPUの活用」も明らかにしている。恐らくは機械学習やデータマイニング分野での活用も視野に入れているはずだ。

 一方で、Windows Serverプラットフォームで動作するアプリケーション群の多くは既存のx86アーキテクチャの延長線上にある。今後企業システムのクラウドへのシフトや利用するアプリケーションの傾向が変化することで、アーキテクチャに対するニーズも変化してくる可能性がある。

 IDCの調査報告にもあるように、2017年はちょうどその端境期になろうとしている。Microsoftはユーザーのサービス利用動向を見極めつつ、今後数年で変化していくトレンドを見据え、このタイミングでの発表を決めたのではないだろうか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

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