古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

PCとタブレットを共存させる方法──「ちょっと特殊」なクラウドサービス活用事例を実践

2014/09/19

タブレットとPC、複数台のPCと併用する方法を考察

筆者が導入した「dynabook R822/WT8HS(PR822T8HNNSW)」

今回は、「dynabook R822」そのもののレビューとは少し外れるが、もう1台メインとなるPCがあるシーンで、いかに快適な作業環境を構築するか、そのプロセスを紹介していきたい。本機を含むタブレットスタイルでも活用できるマシンを新規導入しつつ、これまでのPCも活用したいと考える人のユーザー事例と考えてもらっても大丈夫だ。

Windows 8時代のUltrabookは、確かにメインのPCとして使うにも十分なパフォーマンスを持っている。dynabook R822/WT8のパフォーマンスにしても、前回までいろいろと調べてきたとおり、メインPCとしての一般ビジネスシーンにもばっちり活用できる実力を示してきた。

しかし"タブレット"を新規導入したならば、これまでのメインPC──ハイスペックなデスクトップPCや据え置き型ノートPCなどもこれまで通り、いや、タブレットを生かす形でうまく併用したいと考えるだろう。このような場合に課題となるのは「複数のPCで、いかにうまく業務ファイルを同期するか」である。

複数のPCを併用する場合によくある例としては、それぞれが自宅やオフィスの同一ネットワークにあり「複数台を同時に起動し、使い分ける」方法だ。これまではネットワーク共有しつつ、適当なファイル同期ソフトを用いる、あるいはNAS(ネットワーク接続型HDD)を用いるなどの方法で、1つの作業ファイルを共有するよう工夫してきたことだろう。筆者も十数年間、この手の同期の方法を利用してきた。

しかし最近は、タブレットや軽量なPCを導入すれば、PCの使用場所は自宅やオフィスにとどまらず、"どこでも"まで活動範囲が広がるようになる。そんなタブレットとPCを併用するため、インターネットに接続されていれば(基本的には)どこからでも同一のデータを参照できる「クラウドサービス」を活用する方法に変更した。

筆者が活用するクラウドストレージサービスの1つ「Dropbox」

今回はクラウドサービスの中でもデータを保存・保管するオンラインストレージサービスを中心に説明するが、まずそのメリットとデメリットを確かにしておきたい。

クラウドストレージのメリットは、インターネットに接続していればどこでも「目的のファイルにアクセスできる」ことにある。これまでの同期方法では、外出する直前に同期を実行し、完了を待って出かけていた感じだが、クラウドストレージの決まった場所へ常に保存するように運用しているなら、この手間、そして同期を忘れて困るリスクがなくなる。

また、PCを買い換えた場合も、初期作業としてクラウド同期ソフトウェアなどをインストールする程度の手間で以前と同じ環境を整えられる。

ただ、デメリットもある。例えばセキュリティ。クラウドストレージサービスのほとんどは暗号化されたSSL通信を利用するとはいえ、インターネットにおいて"完ぺき"なセキュリティ手段はない。また、となりのPCであってもインターネットを経由してデータを転送するので、LAN環境と比べれば同期に時間はかかるし、外付けHDDのような感覚で容量を確保したいのであれば別途月額コストも発生する。無料で数Gバイト分利用できるサービスは多いが、外付けHDDの感覚で使うならおそらくすぐ使いきってしまう容量だろう。有料プランとなれば、今のところ外付けHDD比でかなりコスト高になる。


クラウドでアプリを同期するためのコツとは

さて、業務ファイル程度の同期にクラウドストレージを活用する使い方はかなりすでに実践しているという人も多いだろう。

続いて試したいのは「アプリケーションの同期」だ。

まずはじめに、当然だが市販ソフトウェアにはライセンス数の制約があり、たいていはインストール台数が制限されている。オープンソースやフリーソフトに類するソフトウェアにおいても、ライセンス条項や頒布条項は必ず確認してほしい。同時に、各クラウドサービスの規約にも抵触してもならない。また今回は、クラウドストレージサービスとしてDropboxを例に使用する。Dropboxの規約を読んだ限り、ソフトウェアをアップロードすることに問題があるとする記述は見当たらなかった。このほか、Windowsのx86/x64ソフトウェアには単体で実行できるものと、レジストリに情報を記録して動作するものがある。いわゆるスタンドアロン型と呼ばれる前者についてはほとんど問題ない(ソフトウェアによってはプログラム配下のiniファイルにアプリケーション設定としてパスを格納する場合がある)。一方、後者はレジストリ情報に不整合が出るので、別のPCから起動しようとしてもこのままではエラーが発生し、起動はできない。

秀丸エディタや秀丸メールは、「持ち出しキット」を適用するとUSBメモリなどで持ち運べる形式に変換できる(USBメモリにインストールできる)。すでに構築済みの環境も変換できるため、使い慣れた設定そのまま、依存関係を解消できる

一例として、筆者が愛用するテキストエディタの「秀丸エディタ」(サイトー企画/シェアウェア)を取り上げる。秀丸エディタはは4200円のシェアウェアであり、1ライセンスにつき、1人の使用者のみが、複数のコンピュータにインストールして使用できると記述されている。

合わせて、秀丸エディタのプログラムをUSBメモリなどへインストールし、別のPC環境でも利用できるようにする「秀丸エディタ持ち出しキット」(フリーソフト)を応用すると、普通にクラウドストレージで同期できるようになる。ただ、1カ所だけ設定変更が必要なのでそこだけ自身で作業する際には気を付けてほしい。

アドレスバーの反転部分がWindowsユーザーアカウント(いわゆるユーザー名)である。Dropboxを標準インストールした場合、ユーザー名直下にDropboxという名の同期フォルダを作成するため、ユーザー名の異なるPCと同期しようという場合に問題が生じる

秀丸エディタはマクロや設定ファイルに対してパスを指定するが、その際に絶対パスを指定すると問題が生じる可能性が高まる。今回例として用いたDropboxをはじめ、オンラインストレージサービスの同期ツールを導入すると、そのほとんどがユーザーフォルダ配下に同期フォルダを作成する。例えばユーザーアカウントが「ishikawa」のPCだと、

C:\Users\ishikawa\Documents\dropbox\

がDropbox同期フォルダのパスになり、今回の使い方だと、その下に「Hidemaru¥Macr¥...」といった具合でフォルダを生成することになる。このため、ユーザーアカウント名が違うPCと同期してしまうと、指定したパスの文字列が異ってしまうため、不都合が起こる。ある具体例としては、秀丸エディタからマクロを実行しようとしても設定したマクロフォルダが参照できず、使用できない──などだ。

アプリケーションによっては、その設定のなかでパスを指定する必要が出てくる。相対パスを指定できるものなら、相対パスを指定することで解決できる

この問題は「相対パスによる指定」により解決できる。秀丸エディタのプログラムフォルダ内にMacro、Settingsという2つのフォルダを置き、パスは「.\Macro」や「.\Settings」と相対パスで指定するのだ(同一フォルダ/Hidemaruフォルダ以下のMacroあるいはSettingフォルダを参照せよ、という意味となる)。

こうしたパス相違の問題は、秀丸エディタ以外のほかのソフトウェアでも応用できる例は多いだろう。中には相対パスを受け付けない、あるいはそのままではどうやっても同期できない事例もある。そうした場合は、同期フォルダを指定文字列が変わる/可変する可能性が少ない、例えばCドライブ直下に配置するなど、別の応用も必要になる。

続いてWebブラウザの「Firefox, Portable Edition」も試してみたが、こちらは問題が生じて同期はできなかった。Firefoxは、起動中にそのプロファイルに対してロックファイル(特定のユーザー以外からアクセスできないファイル)を作成する。そのロックファイルを同期しようとしても、クラウドサービスの同期プログラムでエラーが発生してしまうためだ。

一般ユーザー/ビジネスコンシューマーの範囲(Windows Server+RemoteAppなど、企業向けシステムは使用できない層)においても、ソフトウェアを同期する運用、使い方によっては意外にアリかもと感じていただけるだろう。そのまま利用できるものもあれば、多少の設定が必要なもの、あるいはそもそも利用できないものもあることが分かった。

比較的問題が起きないのは、USBメモリなどポータブルストレージにインストールして起動できるよう設計されたソフトウェアだ。例えば「PortableApps.com」などと併用してみるのもよさそうだ。

「開発環境/業務アプリ・ツール」もクラウドストレージで共有してみる

比較的扱いやすい「GPU-Z」のセンサーログの結果ファイルの中身。形式はCSVだが、最終的なデータ文字列の管理に使用するExcelへはコピー&ペーストしにくいので、それとなく前段階で整形処理が必要になる。ただ、このくらいならエディタの置換処理マクロでなんとかなる

続いて、複数のソフトウェアが絡むような少々手間のかかる環境の同期を実践してみよう。筆者にとってテキストエディタの次に重要なプログラミング環境を同期してみる。プログラミング環境といっても……主業務であるPCベンチマークテスト作業の効率を高める目的で作成しているもので、業務用まで深いものの事例でないのは容赦願いたい。

ベンチマークプログラムのうち、いくつかのソフトにはテスト結果をファイルとして保存する機能が備わっており、その結果ファイルはプログラム別に複数のフォーマットがある。単なるテキスト(TXT)ファイルを生成するもののほか、XML、CSV、あるいはベンチマークプログラム独自のファイル形式もある。TXTやXML、CSV程度であればエディタのマクロ機能のみでもさほど苦労なく集計・整形できるのだが、独自形式となると扱いは少々やっかいだ。

3DMarkの結果ファイルの実体は、ZIP形式のアーカイブファイルだ

特殊なフォーマットの例を挙げると、3DMarkなどFuturemark系の結果ファイル(拡張子は.3dmark-result)は、複数のファイルをZIP圧縮した内容となっており、集計のため手動で中身を見るには、ファイルの拡張子を.zipにリネーム→ZIP解凍→必要なXMLファイルを取り出す→xmlファイルを分析する、といったそこそこ面倒な手順が必要になる。

1つだけならいいが、この作業を十数回繰り返すわけで、すべて手動ではいくら時間があっても足りないので、プログラムを組んで自動化するわけである。筆者は主にPerl(Practical Extraction Report Language)スクリプトでこれを処理している。

実際のPerlスクリプト作成風景。Perlスクリプトなら、ちょっと覚えるだけで日常のルーチンワークを自動化できる。そしてちょっとつまずくような問題があっても、インターネット上の情報で解決できたりする。ちなみに、最新グラフィックスカード(GPU)やCPUのレビュー記事は、検証評価期間が2、3日しかない中で、環境1つあたり数回(テスト1回あたり1時間以上)+複数の環境+比較対象を含めた回数分を測定したテスト結果をまとめ、検証し、発表日当日までに原稿を仕上げるというハードワークの末にできている。これをこなすのに、手動作業では間に合わず、ミスが起こる確率も高まるのだ。また業務的な作業はもちろん、仕事とは関係ない普段の作業も含めてスクリプト化することで時間を有効利用できるよう工夫もしている。


Perlは、その実行のためWindowsのシステム環境変数にPerl.exeへのパスを指定する必要がある

Perlのメリットは、正規表現とともにテキストベースのデータ取り扱いに向いていることと、モジュールを追加することでさまざまな機能を追加できる点にある。正規表現を駆使し、テキストファイル内文字列の検索・置換のほか、文字列の有無を条件分岐として利用できるので、ベンチマーク結果ファイルの解析と成形にとても都合がいい。後者に関しては、例えばZIPファイルを解凍する、Excelファイルとして出力するといったモジュールが公開されているので、これらを活用することで(筆者の範囲では)かなり利用範囲が広がる。

これをPCごとに運用する際の課題としては、Perl本体のバージョンとモジュールの導入やバージョンを統一することだった。PC毎にバージョンが異なると、場合によってはスクリプトが動作しなくなることもある。また、追加モジュールの数が増えるにつれ、それをPC間で統一する手間も増えることになる。

……ということで、プログラミング環境もクラウド同期する第1歩は、Perl本体とライブラリが同期という単純なコピーで動作するのかという点を調査すること。PerlにもWinポータブル版として「Strawberry Perl(PortableZIP edition)」があるが、今回は筆者が慣れている環境で実現したかったので「ActivePerl」の、それも通常版で同期ができるのかどうか実践してみた。

画面内容のとおり、コピー/同期したそのままではパスが通っていない状態のため、Perlは動作しない。パスを通すと正常に利用できるようになるが、毎回この作業をするというのも少し面倒だ

筆者が調べた限りでは、いくつか課題はあるもののActivePerl自身はクラウド同期が可能だった。フォルダを変更したとしても、いくつかモジュールを追加したとしても、筆者が使用するスクリプトの範囲では問題なく、もちろんDropbox経由でもクラウド同期が行えた。

「いくつか」と書いたのは、Windowsのシステム環境変数にPerl.exeへのパスは通しておく必要があるためだ。このパスは、コントロールパネル→システムの詳細設定→環境変数で指定するパスであり、この設定項目はクラウドストレージのみで運用する同期では実現できない。この部分のみPCごとにパスを記述するか、スクリプト起動用にバッチファイルなどを組み、実行ごとにPerl.exeへパスを通す方法をとる感じだ。


Eclipse Portableも相対パス指定で問題なし

Eclipseでも相対パス指定が必要になる。Perl EPICの設定で、Perl.exeへのパスが必要になるが、その際は画面のような書式で相対パスを指定する

Perlの次は開発環境の導入を試そう。テキストエディタベースでマクロを組むくらいならここまでの手順だけで大丈夫だが、どうせならデバッグ機能を含めたIDE(統合開発環境)を導入した方が作業もはかどるものである。ポータブル版IDEとしては「Eclipse Portable」がある。Java開発のためのIDEとして開発されたEclipseのポータブル版で、EPICというプラグインを導入することでPerlプログラミングも可能になる。このEclipse Portableをクラウド同期するため、同期フォルダの配下にインストールしてみた。

Eclipseも、Perlを実行するにあたってPerl.exeにパスを通す必要がある。これは、Windows自体のPerl.exeへのパスとは別のもので、Eclipseで設定するもの。ここでも、パス内にWindowsユーザー名が含まれるとパスの文字列に不整合が起こるので、前述のように相対パスを指定して回避する。

なお筆者はこれまで自宅PCのWindowsユーザーアカウント名は適当に付けていたが……、今回のようにソフトウェアのクラウド同期を用いた運用方法を考えるなら、Windowsユーザーアカウント名はアルファベット表記のもので統一しておくのが賢明だ。合わせて、クラウドストレージサービスの同期フォルダをほぼ固有の文字列で統一できるCドライブ直下などに指定する方法もアリだろう。

さて、ここまでやっても、1つだけ解決できないところがあった。Eclipseでプロジェクトを開くとどうやらロックファイルを作成する場合があるようで、これが作られると、別のPCからEclipseを起動する際にエラーすることになる(オフライン状態で起動すれば大丈夫かもしれないが、コンフリクトを起こすとも考えられる)。ともあれ、同時に起動するのはどれか1台のみと限定するよう自身で気を付ければひとまず大丈夫という感じか。

同期そのものについては、EPICなどEclipse側のプラグインを含めて問題はなかった。ワークフォルダを同期フォルダ内に作成すれば、現在進行中のスクリプトについても同期され、業務環境向上のためのアイデアがひらめいたら、今使っているマシンでサッとスクリプトが書ける環境が整った。


「主業務作業用のPC、営業ツールとして手軽に持ち出せるタブレット」、これらをより効率的に活用しよう

タブレットとしても使える「dynabook R822」

このように、ソフトウェアや開発環境のクラウド同期にも、現時点では可能なものと不可能なものがあり、一部カスタマイズを要するなどいくつか壁はある。ただ、クラウドストレージサービスも単体ファイル(テキストデータ、写真/動画データ、Office/PDFデータなど)やフォルダの同期に活用するだけでなく、ソフトウェアを含む作業環境も工夫によって同期を実現できることも確認できた。

一応、クラウドストレージにソフトウェアの実行ファイルを置くことになるため、セキュリティにはより気を付けるよう心がけたい。実行ファイルを改鼠されると、同期している全てのPCに影響が及んでしまうからだ。なお、今回はDropboxを例にしたが、数十~数百Gバイトクラスの大量のデータをまとめてクラウド環境で管理したいなら、自宅やオフィスのPC/サーバ環境にクラウドストレージサービスと似たネットワークアクセス環境を──個人PCユーザーであれば、例えば「ownCloud」やネットワーククセス機能を備えたNASを導入するなどの方法もアリだと思う。

さて、ノートPCとタブレット、2つの使い方を1台でカバーできる「dynabook R822」ならここまでの苦労はいらないかもしれない。ともあれ、主業務作業用のPC、営業ツールとして手軽に持ち出せるタブレット、「どうせならこの2つの特長を生かし、ズバッと業務と連携させたい」ならば、何となくでも今後につながるヒントとなれば幸いだ。

image beaconimage beaconimage beacon