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PCのレノボ、「スマホ大攻勢」の勝算は? モトローラ買収で販売エリアを一気に拡大

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2014/05/26 09:00 東洋経済オンライン
2月にスペインで開かれた携帯電話見本市のレノボブース。新型スマホを���表した(撮影:Getty Images): 2月にスペインで開かれた携帯電話見本市のレノボブース。新型スマホを発表した(撮影:Getty Images) © -C-東洋経済オンライン 2月にスペインで開かれた携帯電話見本市のレノボブース。新型スマホを発表した(撮影:Getty Images)

 異例の2連チャンだった。今年1月、レノボが明らかにしたM&Aは業界の度肝を抜いた。

 何しろ、1月23日には23億ドルでIBMのパソコン(PC)サーバー部門買収を発表。その1週間後の29日に、今度は29.1億ドルでグーグル傘下の携帯電話大手、モトローラ・モビリティを買収すると発表。楊元慶(ヤン ユアンチン)CEOが、グーグルのラリー・ペイジCEOと笑顔で握手する写真が世界に広まった。

 立て続けの大規模M&Aは、コンピュータ関連業界において、レノボが大きな存在になっていることを如実に示すものだ。

 そもそもレノボは、1984年に中国科学院の計算機研究所の研究員だった柳傳志氏が設立した、国営系のベンチャー企業。当初は海外ブランドのPCを中国語に対応させて販売していたが、自社でのPC製造に移行。94年に香港株式市場に上場し、97年には中国国内トップに躍進した。

 2004年に買収したIBMのPC部門との統合効果を生かすことで、13年4~6月期にはヒューレット・パッカード(HP)を抜き去り、世界最大のPCメーカーになった。そのレノボがなぜ、PC以外の領域で、立て続けのM&Aを行ったのか。

 その大きな理由は、PC市場が急激に縮小しているためだ。米IDCが3月にまとめた調査リポートによると、13年の世界PC出荷台数は、前年比9.8%減の3億1510万台だった。この減少率は同社が調査を始めて以来、最悪の落ち込みだ。

 原因はスマートフォン(スマホ)やタブレット端末によるPC市場の侵食である。レノボは14年1~3月期には初めて四半期売り上げが100億ドル(約1兆円)を超えるなど着実な成長を続けているが、全売り上げの80%をPCが占めており、将来性を厳しく見られている。

 株式市場からの評価も決して高くはない。モトローラ買収後に株価が急落したこともあり、株式時価総額は日本円換算で1.3兆円程度。赤字決算が続くソニーの1.7兆円を下回る。

 そこで、同社が社運を懸けて乗り出しているのが、新しい領域におけるシェア拡大だ。特に力を入れているのがサーバー、スマホ、タブレット端末、スマートテレビなど「PC+(プラス)」と呼ばれる領域。中でも消費者向けのスマホ、タブレットを重視している。11年に中国で始めたスマホ販売は現在、世界26カ国・地域で展開しており、世界シェアは4位だ。

 ただし、IBMのPC部門を買収したことにより、レノボは企業向けビジネス中心の文化に染まっていた。そこで、スマホなどの消費者向け製品でも勝つためのリーダーとして楊CEOが選んだのが、アップル、HPのマーケティング責任者を務めたデイビッド・ローマン氏だ。

 秀逸だったのが13年10月、人気俳優でテクノロジーへの造詣が深いアシュトン・カッチャーをプロダクトエンジニアとして採用したこと。

 これはもちろんマーケティング上の演出だが、カッチャーといえば映画『スティーブ・ジョブズ』で主役を演じた俳優であり、多くの人が彼をジョブズとダブらせて見つめている。そのカッチャーが入社し、同社のタブレット端末「Yoga」(ヨガ)の開発に参加したことは、レノボに先進イメージを植え付けた。

 ほかにも、NBAのスーパースターであるコービー・ブライアントをスマホの宣伝に使うなど、スターの登用によるシンプルな広告が、レノボのイメージを変えつつある。

 ローマン氏は次のように語る。「これまでレノボは企業向けで成功してきたが、消費者向けのブランド認知を高める必要がある。企業向けに加えて消費者向けの製品も成功させ、ビジネスのバランスを取ることが目標だ」。

 なぜカッチャーを起用したのか。「若い消費者にアピールするようにグローバルなパーソナリティを持ったタレントを起用した。カッチャーは社員に対しても新しいマインドセット(価値観)をもたらしてくれた」。

 レノボグループの強みは、複数ブランドを活用している点だという。「歴史のあるNECブランドを生かすことが、日本市場での成功につながった。モトローラの買収が完了すれば、これまでレノボが参入できなかった国へもリーチできる。大きなチャンスだと考えている」。

 スマホやタブレットのグローバル展開に向けて武器になるのは、過去の買収戦略の積み重ねにより獲得してきた、製造や販売の拠点だ。レノボは、IBMのPC部門を買収した後も、NECのPC部門を傘下に入れた後も、従業員、拠点、ブランドをそのまま引き継いだ。買収により人件費が増えても、中国という圧倒的に強みを発揮する巨大な成長市場があるがゆえに吸収できたのだ。

 モトローラ買収でも、約2500人のエンジニアをそのまま活かしていく方針。高級イメージがあるモトローラブランドを中国市場に再投入し、数量を伸ばす計画だ。やはり、中国あってのレノボなのである。

 巨大な中国市場で圧倒的なシェアを持つ企業は多い。5月7日、米国株式市場への株式公開を申請したアリババは、タオバオ、アリペイなど多くの子会社を持ち、上場時の時価総額は20兆円を超えるとみられている。

 その前の4月17日にはマイクロブログのウェイボーがナスダック市場に上場した。米国市場に上場するとはいえ、アリババ、ウェイボーは、ほぼ「中国専業」。それ以外にも、検索ポータルのバイドゥやSNSのテンセントも、ほぼ中国専業だ。

 モトローラを傘下に入れたレノボがPC以外の製品でもグローバル展開に成功できるか。その行方は、数ある中国専業企業の今後の戦略にも影響を与えるはずだ。

 (週刊東洋経済2014年5月31日号〈5月26日発売〉「核心リポート01-1」)

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