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SIMロック解除の条件緩和、端末の実質価格に新基準――改正ガイドラインの影響は?

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2016/11/18
SIMロック解除の条件緩和、端末の実質価格に新基準――改正ガイドラインの影響は?: 総務省でのフォローアップ会合を経て、2つのガイドラインが改正される。写真は第1回の様子 © ITmedia Mobile 提供 総務省でのフォローアップ会合を経て、2つのガイドラインが改正される。写真は第1回の様子

 「SIMロック解除に関するガイドライン」と、4月に施行された「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」の2つが統合され、内容も改正される見込みだ。現在、総務省ではパブリックコメントを受け付けており、1月にも新たなルールが適用される。ガイドライン改正の根拠となっているのが、「フォローアップ会合」と呼ばれる有識者会議だ。

 ここでは、ガイドラインの厳格化を求める意見や、SIMロック解除の猶予期間を短縮する意見が相次いで出された。今回は、ガイドラインを読み解いていくとともに、改正ガイドラインが業界に与える影響を考察した。

●端末の実質価格は“中古の下取り価格”が基準に

 フォローアップ会合では、実質0円禁止のガイドラインに抜け穴があることが問題視された。第1回の会合でヒアリングされたドコモの取締役常務執行役員 大松澤清博氏は、期間限定の販売奨励金や高額なプランへの加入を条件とした販売奨励金を挙げ、「ガイドラインの抜け道はふさぐべき」と主張している。

 一方で、端末購入補助がどの程度なら「適正」と見なされるのかは、議論が分かれたポイントだ。実際、ドコモはiPhone SEの発売時に、実質価格(税込)を0円から648円に変更している。これは、総務省から「待った」がかかったからだ。現状では、648円という価格設定が暗黙のうちにセーフと見なされているが、明文化された決まりは存在しない。

 結果として、ガイドライン施行後も、実質価格ではハイエンド端末とミッドレンジ端末の差が、わずかな金額にとどまっていた。フォローアップ会合では、ソフトバンクがこの点を指摘。同社の常務執行役員、徳永順二氏は「廉価な端末の普及を図るのは、消費者にとって便があるが、現時点では普及が進んでいない」と語っている。

 確かに、iPhone 7のような最新のハイエンドモデルが、実質1万円程度の値づけでは、ミッドレンジやローエンドモデルとの差が出しづらい。2年間でトータル1万円程度の負担であれば、ハイエンドモデルを選ぶという心理が働くはずだ。割引額に一定のキャップが設けられれば、「中スペックの端末のウェイトが高まり、消費者の便益になる」(徳永氏)。同様にドコモの大松澤氏も、「実質負担額の安い端末、高い端末を調達価格に応じて改善していくと、価格的すみ分けも進んでいく」という見通しを語った。

 キャリアや有識者からの指摘を受け、改正ガイドライン案では、端末価格の目安として次のような記載が加わっている。

 「事業者は、スマートフォンを購入する利用者には、端末を購入しない利用者との間で著しい不公平を生じないよう、端末の調達費用及び関連下取り等価格に照らし、合理的な額の負担を求めることが適当である」(原文ママ)

 価格の基準に、突如下取り価格が挙げられているが、これもフォローアップ会合で構成員から出た提案に基づいている。基準となるのは、2年前の同じシリーズの端末。つまり、iPhone 7であれば、iPhone 6の下取り価格が、実質価格の下限ということになる。理屈としては、型落ち端末の下取り価格を最新の端末が下回るのは不自然なため、ここを目安にするというわけだ。仮に、このガイドラインを現在の販売価格や下取り価格に当てはめてみると、iPhone 7の場合、1万7000円〜2万5000円程度(税込)が適正と見なされることになる。

 逆に、ガイドラインの改正で規制が緩和された部分もある。フィーチャーフォンからスマートフォンへの買い替えや、3G端末からLTE端末への買い替えといったように、技術的なマイグレーション(移行)を含むケースが、それだ。フォローアップ会合では、ソフトバンクの徳永氏が「本来は行き過ぎた端末値引きの規制だったが、新規、MNPの規制になっているのではないか」と指摘。「マイグレーションはご考慮いただきたい」として、過度な規制の緩和を訴えた。

 結果として、改正ガイドライン案には、以下のようなただし書きが明記されることになった。

 「ただし、事業者は、端末の販売状況等を踏まえて在庫の端末の円滑な販売を図ることが必要な場合、携帯電話の通信方式の変更若しくは周波数帯の移行を伴う場合又は廉価端末の場合には、スマートフォンの価格に相当するような行き過ぎた額とならない範囲で、端末購入補助を行うことができる」(原文ママ)

●SIMロック解除の条件は大幅に緩和される見通し

 フォローアップ会合では、ユーザーのスイッチングコストを上げることにつながる「SIMロック」もやり玉に挙がった。SIMロックの解除は、2015年5月以降に発売された端末から、原則として義務化されている。一方で、端末の不正取得を防止する観点から、解除に応じない一定の期間を設けることも認められていた。論点になったのが、SIMロック解除が可能になるまでの期間だ。

 現状の仕組みをあらためて整理しておくと、ドコモが6カ月、auとソフトバンクが180日のSIMロック解除猶予期間を設けている。ドコモのみ、過去にSIMロックを解除している端末があり、そこから6カ月経過している場合、新たに購入した端末でも即時SIMロックを解除できるが、他の2社には例外がなく180日間は待たなければならない。また、ドコモやソフトバンクでは中古で購入した端末を持ち込んでSIMロックを解除することができないなど、回線の契約とひもづける形で、一定の制約も設けられている。

 フォローアップ会合では、この期間の短縮が主な焦点になった。端末の不正取得防止が目的であれば、確かに一律で6カ月もしくは180日の期間を設けるのは、適当とはいえないだろう。ヒアリングに参加したIIJの取締役 島上純一氏は、「SIMロック解除の重要性はますます増している」としたうえで、「SIMロックではない形の不正防止も重要になってくるのではないか」と語っている。

 これに対し、ソフトバンクはSIMロック解除が可能になるまでの期間を、120日程度に短縮する案を表明していた。一括で代金を支払い済みの場合、即座にSIMロックを解除してもいいのではないかといった構成員の意見もあり、改正ガイドライン案は、これらのアイデアが反映された形になった。

 改正ガイドライン案に明記されたのが、SIMロック解除の猶予期間を短縮すべきということだ。具体的には「100日程度」にする方針が記載されており、現状の180日から80日ほど短期化される見込みとなった。また、改正ガイドライン案では、一括で代金を支払った場合は、即時SIMロックの解除を可能にするよう、対応が求められている。100日程度への期間短縮は2017年8月1日から、一括購入時の即時SIMロック解除は2017年12月1日から適用される見込みだ。

 フォローアップ会合では、MVNOに対するSIMロックも問題視されていたが、これも改正ガイドライン案で規制されることになりそうだ。現状では、ドコモの端末をドコモ系MVNOで使う場合、端末のSIMロックを解除する必要はない。SIMカードでは、ドコモかMVNOかを区別できず、MVNOのSIMカードを挿しても、端末側は「ドコモのSIMカードが挿してある」と認識するためだ。これに対し、KDDIは、MVNOに専用のSIMカードを発行しており、VoLTEに対応した端末の場合、SIMロックを解除しなければ、MVNOで利用することができない。

 改正ガイドライン案はこの状況にもメスを入れ、MVNOに対するSIMロックも禁止している。事実上、これはauやソフトバンクへの規制と考えてよさそうだ。ガイドラインの対象になるのは、2017年8月1日以降に発売される端末。並行してSIMロック解除不可期間の短縮化も行われているため、大きな変化ではないのかもしれないが、auユーザーがau系MVNOに移りやすくなることは確かだ。ユーザーにとってはメリットになる一方、auからau系MVNOへの流出が加速する可能性もある。

●改正ガイドラインが業界に与える影響は?

 長期的に見れば、ガイドラインはより厳格になり、端末価格は上がっていく方向にある。ハイエンド端末とミッドレンジ以下の端末での価格差も広がっていくだろう。ドコモの吉澤和弘社長は、決算説明会で「実際にわれわれがメーカーから端末を購入するときには、それなりの価格になる。それを1万円で売るというのは、もう少し是正できるのではないか」とした上で、「すぐに2万円、3万円、4万円とはならないと思うが、そういった動きはしていきたい」と語っている。

 実質価格が上がれば、キャリアの利益は増す形になるが、その分を通信費で還元していく意向も示している。ソフトバンクグループの孫正義代表は、「通信料金は安くして、多くの人に楽しんでいただかなければいけない。単価はどんどん安くしていく」と語っており、総務省の方針に従う意向を示している。ドコモやKDDIも、長期利用者向けの施策を通じて、ユーザーへの還元を図ろうとしている。

 ただ、改正ガイドライン案が、本当に端末価格の適正化につながるのかは未知数だ。価格の目安が示された一方で、その基準が下取り価格になっているため、抜け穴もある。下取り価格を最終的に決定しているのも、キャリアだからだ。もしキャリアが次期iPhoneを実質1円で売りたい場合、iPhone 6sの下取り価格を1円に設定すれば、ガイドラインを守ったことになってしまう。

 さすがにこれは極端な例で、運用でカバーされる可能性もあるが、現状でも最新モデルの実質価格は、下取り価格を上回っているケースが多い。下取り価格が、基準として適切なのかは疑問の余地が残るところだ。むしろ、フォローアップ会合でソフトバンクなどのキャリアが主張していたように、割引に一定の上限を設けるだけでよかったのではないだろうか。下取り価格を端末価格の基準にするというアイデアは、フォローアップ会合でも十分な検討がされたとは言いがたい。

 10月13日から3回に渡って開催されたフォローアップ会合だが、結論を拙速に出そうとしていた感は否めない。SIMロック解除に対する議論は細かな仕組みやルールまで話し合われていたのに対し、端末価格の適正化に関しては、きちんと論点が整理されていなかった印象も受ける。ガイドラインは、キャリアやメーカーだけでなく、ユーザーに与える影響も大きいだけに、総務省には慎重な検討を期待したい。

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