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SXSW 2017観戦記 IBM流デザイン思考で教育現場はどう変わる?

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/06/13
SXSW 2017観戦記 IBM流デザイン思考で教育現場はどう変わる?: IBMの展示会場 © ITmedia エンタープライズ 提供 IBMの展示会場

 今回のSXSW観戦記は、“IBM is making”を掲げるIBMの展示から、「PERSONAL」と「HEALTHIER」をテーマにしたものを紹介します。

●8. お天気ステーション(WEATHER STATION)

 ソーシャルイノベーション領域のデモ。「天気を制御することはできませんが、天気の体験を制御することはできる」というメッセージとともに展示されていました。

 センサーで収集された気象データが集計され、可視化されています。

●9. 共創(CO-CREATION)

 教育現場における「IBM Watson Education」と「IBM Design Thinking」に関するデモ。「共創とは具体的には何をどうすることなのか?」を示すために、教育現場を題材にしたIBM流デザイン思考のデモ展示を行っていました。

 デザイン思考の実践に当たり、教育の現場で教師の仕事をしっかりと把握するため、教師の後をついていったり教室に張り付いたり、教師たちの会議に数えきれないほど参加したりしたとのこと。観察からのアイデアの変革を目指し、観察結果を基にワークショップを開き、教師たちと一緒に課題解決に向けた議論を重ねたそうです。そして、ワークショップで作ったアイデアを試し、そのフィードバックをもとに、さらに拡張を繰り返したといいます。

 このプロジェクトで出たアイデアの1つが、「Student Dashboard」。教師は当初、生徒のパフォーマンスを示すグラフを見たいと考えていましたが、実際には成績を記録するためのツールが必要なことが分かり、そこからStudent Dashboardが生まれました。

 デザイン思考の考え方をもとにした課題抽出やアイデア出し、ワークショップ、プロトタイピング、実証実験というIBMのプロセスに、ユーザーとなる教師をも巻き込んでいる点が特徴的だと思いました。ユーザーもデザイン(設計)の課程に巻き込むことにより、ユーザーがその成果物を気に入りやすくなるというわけです。

 IBMは、技術面だけではなく、デザイン思考やワークショップなどの開発手法、共創の手法も実践しているというデモ展示でした。

●10. オープンソースのbotプロジェクト(TJBot)

 IBMは、chatbotだけでなく、物理的な筐体を持つロボットを用いたインタフェースの研究開発に取り組んでいます。Watsonの各種サービスにユーザーが楽しくアクセスするための(キーボードやディスプレイとは異なる)インタフェースとして開発されたのが、このTJBotです。

 このロボットをコントロールするための指示を書くツールも用意されていました。

 オープンソースのプロジェクトとしていることによって、多くの人がアクセスし、多数のユースケースができるわけです。

●11. Internet of Caring Things(AGING IN PLACE)

 「IBM Research」がシニアのヘルスケアのためにIoTを使い、「AGING IN PLACE(住み慣れた地域でその人らしく最期まで)」をサポートする事例として、“高齢者のための未来の家”に関するデモを展示していました。

 その背景にあるのは介護問題。米国の高齢者は約4千6百万人いて、子どもの世話をしながら親の世話もしなければならない世代の人たちもたくさんいます。また、高齢化はアメリカだけの問題ではなく、世界中の問題となっています。

 この展示は高齢者向けのスマートハウスのデモで、キャビネットや椅子、冷蔵庫など、さまざまなところにセンサーを付けて、PCのやスマホなどから家の様子が分かるようになっています。例えば、「お母さんが今、この椅子に座っている」などといったことを離れた場所から知ることができます。

 IBMはこれらの技術を「Internet of Things(IoT)」ではなく、「Internet of Caring Things(IoCT)」と名付けています(Care:ケア→気に掛ける、世話をする、介護する)。テクノロジーが人間をより人間らしくしてくれるという点が重要です。

 技術としては、スマートハウスの事例にInternet of Caring Thingsといった名前をつけて、一段大きな視点で技術の位置付けをしている点がうまいところでしょうか。

●12. ワトソンヘルスケア(WATSON HEALTH)

 Watosonを利用したヘルスケアに関するデモ。ヘルスケアに関するデータの80%は非構造データであるテキストデータだそうです。Watsonの自然言語処理技術は、診療に関するデータから構造的なデータを取り出すことができ、その結果を基に、その後の解析やアラートを実現できるということです。

 医療の専門家のためのヘルスデータのプラットフォームである「IBM Watson Platform for Health」は、ビジネスのためのプラットフォームではなく、医療におけるイノベーションを実現するためのプラットフォームという位置付けになっています。

●13. ワトソンビート(WATSON BEAT)

 おしゃれで機能的なヘッドフォン「Beats」やキーボードを使った音楽関係のデモも行っていました。

●14. コグニティブビール(COGNITIVE BREWS)

 Watsonがビールの鑑定をしてくれるデモ。真偽はさておき、面白い試みでした。こうして、生活の中に新しいデジタルテクノロジーが徐々に浸透していくのでしょうか。

●15. chatbotと会話してTシャツをゲットしよう!(IBMPerspnail-tee)

 IBM版のchatbotのデモで、「面白い」と同時に「うまい」デモだと思いました。はっきりとした正解のない「性格判断」を題材としているので、その結果に同意できれば「当たってる」と思えますし、同意できなくても「そんな一面があるんだ」と思わせることもできます。

 ここで使われている「Conversation」というAPIは、あらかじめ決めたシナリオに沿って対話を進められるとのこと。台本を書くことにより、その台本に沿った対話が生成できます。そのため、複雑な会話は実現できませんが、この性格診断では、基本的にシステムが質問してユーザーが答えるというスタイルに絞っているので、台本だけに沿ったデモでもそれなりに見せていました。

 「Tone Analyzer」という、ポジネガ分類(Sentiment Analysis)の拡張版のようなAPIも使われています。専門家によると、恐らく、機械学習を使ってあらかじめ感情の情報が付与されたテキストから学習しているのではないとのこと。この手の分類問題は、問題の定義自体があやふやだったりします。例えば、複数の人に同じ文章を見せて、「書き手はどんな感情か」を尋ねると、意見が分かれることが多いようで、人間でも判断が揺れる問題ですが、ある程度の数の学習データがあれば、機械学習で判断できるようになるということです。そういうあやふやなものを扱うAPIを、性格診断という、結果の厳密さが問われないところで使っているのも、「うまい」ところだと思いました。

 マーケティングと技術、その両者がこれほどうまく連携できている例は、実際のところ、少ないのではないのではないでしょうか。アドテク(ad-tech)といっても、よくある事例はad寄りだったり、tech寄りだったりしているように感じます。

●16. オープンエアでネットワーキング(ROOF)

 メインフロアを離れ、屋上のルーフ(ROOF)に上がると、そこにはBARカウンターとネットワーキングの場が。いかにもアメリカらしいですね。開放感あふれるオープンエアーの環境でちょっと息抜きできました。

【著者:柴崎辰彦】

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