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TOMORROW パーマネントライフを探して 【今週末見るべき映画】

エキサイトイズム のロゴ エキサイトイズム 2016/12/21

雑誌「暮しの手帖」の元副編集長で、映画ジャーナリストの二井康雄さんが、多くの映画の中から「今週末見るべき映画」をレビューします

 地球温暖化のせいで、北極の氷がとけた結果、シベリアのほうからの寒波が日本に到来、どこが温暖化か、ということなっているらしい。かたや、販売店で売れ残った食品を、大量に廃棄している国があるかと思えば、食料不足、栄養失調でやせ衰えている子どもたちの多い国もある。もう十分、経済成長を遂げたのに、まだまだ経済成長させましょうという国があれば、いまこれから経済成長しましょうという国もある。経済成長などとはまったく関係のない日々を生きている人もいる。金持ちが増えれば、貧しい人も増えている。さまざまな格差が生じている。

 地球的規模で、先進国といわれている国が、このまま、豊かさや経済成長を目指し続ければ、いったい、地球はどうなるのか?

 こういった難問に、さまざまな行動を通して、世界を、だから地球を滅亡から救おうとしている人たちやグループがある。こういった事例を紹介することで、なんとか難問の答えを出そうとしたドキュメンタリー映画が「TOMORROW パーマネントライフを探して」(セテラ・インターナショナル配給)だ。

© Provided by Excite.ism

 2012年、衝撃的なレポートが発表される。「ネイチャー」という雑誌に、多くの科学者たちが論文を発表し、訴える。「私たちがいまのままのライフスタイルを続けると、人類は滅亡する」と。

 これに驚いたのが、フランスの女優メラニー・ロランである。「イングロリアス・バスターズ」や「オーケストラ!」、「リスボンに誘われて」などに出演、日本でもファンが多い。ちょうど妊娠中だったメラニー・ロランは、この論文を読んで絶望する。しかし、前向きに考えるしかない。新しく生まれてくる子どもがいる。ジャーナリストのシリル・ディオンの協力を得て、メラニー・ロランは決意する。

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 気候変動、人口増加がある。このままでは、将来、水や食料、石油をはじめとする資源エネルギーが乏しくなる。いま、そういったことに将来、ならないよう、世界のあちこちで、いろんな取り組みが行われている。映画に撮ろう、と。メラニー・ロラン、シリル・ディオンのグループが、さまざまな取り組みをしている人たちを取材、カメラに収める。

 取材対象となるテーマは、農業、エネルギー、経済、民主主義、教育の5つ。

 農業は食を支える重要なテーマだ。クルーは、アメリカのデトロイトに向かう。自動車産業が斜陽となり、200万だった人口が激減、いまは70万人という。貧しい市民は、近郊農業のスタイルで、自給自足を目指す。

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 イギリスのマンチェスター近郊の町トッドデーモンは、人口1万4千。町の真ん中に、花壇や作物を植え、共有する。「みんなの菜園」運動の発祥の地で、2018年までに、100%の自給自足を目指している。

 ベルギーの法律の専門家は言う。「勇気ある決断と、有機農場があれば、飢餓問題は解決する」と言う。インドの種子問題の専門家は、遺伝子組み換え作物に異論を唱える。フランスの有機野菜栽培の例が紹介される。

 エネルギー問題は、食とならんで重要なテーマだ。石油はいつか枯渇する。いつまでも、石油エネルギーに頼っていて、いいのだろうか。

 デンマークのコペンハーゲン。さまざまな試みがある。風力発電を増やす。家庭ゴミをバイオ・ガスに変換する。プラスチックのリサイクル。地熱のエネルギー利用など。2025年までに、二酸化炭素の排出ゼロを目指している。市民の半分は自転車で移動する。東京あたりでは、まず不可能だろう。

 アイスランドのレイキャビク。国営のエネルギー公社がある。70年代の石油ショック以降、水力発電や地熱利用などで電力をまかなう。火力発電、原子力発電に依存しない。

 フランスのレユニオン島。ソーラー発電などの再生可能エネルギーで、島で使うエネルギーの35%をまかなっている。

 サンフランシスコは、ゴミゼロを目指している。ゴミの80%が再利用され、2020年までには、すべてのゴミを再利用するという。

 経済面での取り組みが紹介される。

 フランスの封筒メーカー、ポシェコ社は、徹底したリサイクル、自家発電、雨水利用を実施。植林にも熱心だ。

 イギリスのトットネス、ブリストルでは、石油への依存を減らし、地域通貨を導入する。

 ベルギーやスイスの銀行でも、さまざまな通貨の工夫を重ねている。

 アメリカのオークランド。起業家たちのネットワークが、雇用を生み出している。

 民主主義とは何かを説く人たちがいる。

 ベルギーの歴史家、アイスランドの弁護士に議員。インドのカザンバッカム村には、徹底した民主主義がある。村長と村民が一体となって議論、村のインフラを整備する。

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 最後のテーマは、教育である。フィンランドのヘルシンキ。小学校でのテストはない。子どもの個性を重視する。結果、子どもたちの学力は世界でもトップクラス。

 さまざまな事例を、未来の地球にかさねあわせる。「何とかしなきゃ」、「せめて私たちにできることは」と思う。だが、地球環境は、それほどいい方向に向かっているとは思えない。

 自給自足の農村漁村ですら、政治や経済の判断で、大きく変化することがある。石油埋蔵量には限度がある。環境問題は、エネルギー、食料の問題でもあるが、なにより、政治、経済の問題でもある。

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 出来ることは、「滅びゆく地球に対して、わたしたちは何が出来るのか」と問いかけることだけである。まるで、ケネディ大統領の演説だが、「いっしょに始めよう」しかないようだ。

 いずれ、地球は滅びる。出来ることは、滅びの日を、限りなく長く延ばすことである。したがって、「パーマネントライフ」は、おそらく存在しえないのではないか。では、どうするか。そういった問題提起となるドキュメンタリーだろう。(文・二井康雄)

<作品情報>

(C)MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

2016年12月23日(金・祝) 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー

公式サイト

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