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w-inds. 橘慶太、クリエイターとしての能力を発揮 最新曲における2つのポイント

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/21 株式会社サイゾー
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【参考:2017年1月9日~2017年1月15日のCDシングル週間ランキング(2016年1月23日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2017-01-23/)  筆者が担当するものとしては2017年最初の「チャート分析」。今年からはTOP10の楽曲を一通り聴いて「これは!」と思ったものについて分析していくスタイルにしようと思います。 (関連:w-inds.、“2016年の姿”をパフォーマンスで表現 次の一歩踏み出したツアー国内ファイナル公演)   1月23日付週のチャートで俄然気になったのは、4位のw-inds.「We Don’t Need To Talk Anymore」。最初に聴いたときに「え? これ誰?」とグループ名を二度見してしまった。w-inds.のやってることはめちゃめちゃ格好いいからチェックしとくべきだよという話は周囲から聞いていたし、僕もそれなりに知ってるつもりだったけれど、それでも全然予想外だった。  この「We Don’t Need To Talk Anymore」では、EDMからトロピカル・ハウスの流れ、インディーR&Bがメインストリームのポップとして華やかに花開いたここ最近のダンス・ミュージック・サウンドの傾向を、かなりヴィヴィッドに体現している。たとえばyahyelあたりがインディーな立ち位置でやっている海外シーンとの同時代性あるサウンドを、メジャーのど真ん中で、ほとんどタイムラグなくやっている。しかも、この曲、初めてメンバーの橘慶太が作詞・作曲・編曲のセルフプロデュースを手掛けた作品だという。どこかの作曲家やトラックメイカーを起用したわけじゃなくて、全部自分たちでクリエイトしている。  で、聴いてみたら、端的にこれがめちゃくちゃ格好いい。なのでこの曲のポイントを二つ解説していこうと思います。  まずは「ボーカルドロップ」。オフィシャルサイトの告知でも「w-inds.が提示する最先端のダンスミュージックが完成!」「シングル38作目となる今作は、ボーカルドロップが特徴的なダンスナンバー!」と謳われている。  このボーカルドロップというのは、サビで「We Don’t Need To Talk Anymore」と歌うあとに「モー・モー・モー・モ・モ・モ」と繰り返す部分のこと。  ちゃんと説明すると、そもそもドロップというのは、2010年代初頭のEDMシーンから当たり前になってきた手法で、サビ部分の印象的なメロディを歌じゃなくてシンセのフレーズで奏でるというもの。J-POPのヒット曲でこれを導入したもので言うとSEKAI NO OWARIの「Dragon Night」とか三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」あたりが挙げられる。で、ダンス・ミュージックのシーンの移り変わりは速いもので、これらの曲が日本でお茶の間レベルまでヒットし始めた2015年初頭あたりから、海外のトレンドは変化し始める。ダッチ・トランスとかプログレッシヴ・ハウスを基盤に持つ「とにかく音圧高いシンセを鳴らして、ビルドアップではネジを締めるみたいにビートを8分、16分、32分……と細かくして、ドロップでドッカーン(チャラいハコだったらここで泡をブシュー)」みたいな手法が徐々に飽きられていくようになる。  それに代わってEDM界隈でプッシュされはじめたのが「トロピカル・ハウス」という、音数を減らして、シンセパッドも音圧をベタッと海苔のように貼り付けたものじゃなくて「ポン・ポン」という軽快でリズミックで「聴き疲れしない」音色を選ぶようなジャンルのダンス・ミュージックだ。  ちょっと話は外れるが僕はずーっと納得いってないことがあるので書くけれど、「トロピカル・ハウス」で日本語圏のウェブ検索をすると、「トロピカル・ハウスとは、南国・真夏・ビーチっぽいハウス・ミュージックのことです。代表的なアーティストは“癒し系EDM”のKygo」みたいな説明がたくさん出てくる。まあ否定しないけど、ちゃんと理解して説明してる? っていつも思う。特にKygoはノルウェーのベルゲン出身で、あそこは冬は日照時間ゼロになるくらいの北極圏の港町ですよ? Kygoはむしろロイクソップやトッド・テリエなどノルウェーが育んできたメロディックでディスコティックなダンス・ミュージックの系譜に属するDJだと僕は思っている、というのはことあるごとに言っておきたい。  話がズレた。w-inds.とボーカルドロップの話に戻そう。というわけでトロピカル・ハウス以降のEDM界隈では(音圧でドッカーンという盛り上がりを作る必要がなくなったので)シンセの代わりに録音した歌声をシンセっぽく加工してサビに使う「ボーカルドロップ」の手法が流行ってくることになる。代表的なのはDJ Snakeかな。2015年の春にリリースされたMajor Lazer & DJ Snakeの「Lean On」はシーンの趨勢をひっくり返した一曲で、この曲でもボーカルドロップがふんだんに使われている。「We Don’t Need To Talk Anymore」で使われているのもこの手法、ということだ。  で、「We Don’t Need To Talk Anymore」が面白いのは、ただボーカルドロップの手法を使ってるということじゃなくて、それを自分たちなりに上手く使いこなしてるということ。具体的に言うとサビで出てくる10回目の「モー・モー・モー・モ・モ・モ」。そこまで9回は「ミ・ミ・ミ・レ・レ・レ」「ミ・ミ・ミ・レ・ミ・ファ#」なのだが、10回目にして最高音の「ラ」が出てくる。そこまでの歌メロの最高音がファルセットで歌っている「♪We Don’t Need To Talk Anymore」の「Don’t」のところの「ファ#」で、それもかなりのハイトーンなのだが、そこから2度音程を上げることで「ボーカルの加工音」が「完全なる電子音」に変わる瞬間が一瞬だけ訪れる。そこがめちゃくちゃいい。自分たちの歌のスキルあってこそのボーカルドロップになっている。  そしてもう一つのポイントは、コード進行。これもちゃんとトロピカル・ハウス以降のトレンドを踏まえたものになっている。キーはDなのだが、Aメロで使われているコードはG-A-Bmという、4度−5度−6度の進行。トニックに着地しないので浮遊感がある。たとえばThe Chainsmokersの「Closer」あたりにも共通する進行だ。  ちなみに橘慶太もそれを発売前にツイートで「ネタばらし」している。(https://twitter.com/Official_KEITA/status/806008154739785732?ref_src=twsrc%5Etfw / https://twitter.com/Official_KEITA/status/806011514675138560?ref_src=twsrc%5Etfw)  デビュー15周年を経て、ダンス&ボーカルグループとして新たな歩みを始めたw-inds.。この先は橘慶太のクリエイターとしての能力にもっと注目が集まっていくと思う。(柴 那典)

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