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Windows 10が次に実現する「PCではない未来のデバイス」とは?

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2016/12/27
Windows 10が次に実現する「PCではない未来のデバイス」とは?: Amazon Echo型デバイスがWindows 10を搭載して登場するか © ITmedia PC USER 提供 Amazon Echo型デバイスがWindows 10を搭載して登場するか

 米Microsoftは2017年に向けた新たな施策を対外的にアピールし始めている。「PCやスマートフォンの形状をしていない新しいカテゴリーのWindowsデバイス」の世界の展望が見えつつある点に注目したい。

●新しいWindows 10デバイスの予兆

 同社は12月8日(現地時間)に中国の深センで開催したハードウェア開発者向けイベント「WinHEC Shenzhen 2016」にて、「Cortana and the Speech Platform」と「Windows 10 IoT: Build trusted, easy-to-manage, and interoperable devices」という興味深い2つのセッションを行った。

 これらは米Amazon.comが米国で販売している音声制御対応の無線スピーカー「Amazon Echo」のような新しいデバイスにWindows 10を搭載し、OS標準の音声対応アシスタント「Cortana」で音声制御を可能にする仕組みを用意しようという試みだ。

 同件については、2017年3月にも一般提供が始まるとうわさされるWindows 10の次期大型アップデート「Creators Update」において、Cortanaに「Far-field」と「Wake on Voice from Modern Standby」という機能がサポートされ、マイクから離れた場所での音声によるPC(Windows)制御が可能になると、米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏も紹介している。

 そして、この仕組みはIoT向けのWindows 10である「Windows 10 IoT Core」のディスプレイ搭載デバイスにも展開されることとなり、これがMicrosoft版Amazon Echoと呼べるような新デバイスの登場につながるというわけだ。

 本稿では用語解説をしながら、その動向をみていこう。

●Windows 10 IoT CoreのCortanaサポートに注目

 Windows 10 IoT Coreとは、従来は「Windows Embedded Compact」と呼ばれていたWindows OSの製品ラインだ。Windowsファミリーの製品としては、最も動作フットプリントが小さい部類に入る。

 .NET Compact Frameworkでのプログラミングが基本となっており、現在は主に「Raspberry Pi」などのARM SoC(System on a chip)を搭載した小型の「ボードPC」での利用が進みつつある。「Raspberry PiでWindows 10が動く」と一時期IT業界で話題になったのは、このWindows 10 IoT Coreのことだ。フルバージョンのWindowsを特定用途向けにカスタマイズした「Windows Embedded」シリーズとは異なる製品ラインなので注意したい。

 このWindows 10 IoT Coreは、通常のPCよりもメモリ容量が小さく、プロセッサパワーも貧弱な組み込み環境での利用を想定している。最低要求メモリサイズが256〜512MB、ストレージ容量が2GBと、現在もなお制御系機器で動作しているマイコンに比べればはるかに大きいが、アセンブラでの記述も当たり前な組み込みの世界において、Windowsの開発環境やリソースをそのまま持ち込める点でWindows 10 IoT Coreはメリットがある。これは今後登場する家電や産業機器の開発においてコスト削減につながる可能性が高い。

 なお、Windows 10 IoT Coreでは搭載されるデバイスによって要求メモリ仕様が異なり、「Headed(ディスプレイ付き)」が512MB、「Headless(ディスプレイなし)」が256MBとなっている。これはWindowsのビデオサブシステム利用の有無が、ディスプレイの有無で変化するためだ。

※記事初出時、要求メモリ容量の単位に誤りがありました。おわびして訂正いたします(2016年12月27日18時50分/PC USER編集部)

 今回、Windows 10 Creators Updateの提供タイミングで、Windows 10 IoT Coreもディスプレイ付き(Headed)デバイスについてはCortanaがサポートされることが示されており、2017年には実際に「Windows 10 IoT Core+Cortana」によるAmazon EchoライクなWindows 10デバイス製品が市場投入される可能性が高くなった。

●Amazon EchoとGoogle HomeにMicrosoftも追従か

 Amazon Echoについても説明しておくと、これは2015年6月にAmazon.comが米国で発売した「スピーカー」だ。もちろん、単なるスピーカーではなく、音声入力でさまざまな機器を制御したり、スピーカーを通じて情報を取得したりできる「スマートホームを体現したような製品」と言える。

 スピーカーの向こうには「Alexa」と呼ばれる音声アシスタントがクラウド上に存在し、音声コマンドで音楽や映像の再生を指示したり、さらには今日の天気予報やニュースを取得したりと、Amazon版のCortanaやSiriとも呼べる仕組みをAmazon Echoに入れている。

 Amazon.com自体はMicrosoftのようにOSプラットフォームを用意したり、Appleのように全てのジャンルを網羅するような専用ハードウェアを販売したりはしていない(Fire TVやKindleのような製品はあるが……)。一方で、Amazon EchoはAPIを公開するなどサードパーティーによるサービスや関連製品のリリースを推奨しており、スマートホームのエコシステムを構築することを目指している。

 これは実に興味深い動きだ。米Googleは2015年夏に開催した開発者会議「Google I/O 2015」において同種の「Google Home」というデバイスを発表して追随している。またAppleが同種のデバイスを開発しているといううわさは長らく業界に存在しており、iPhoneやiPad、Mac製品以外にもSiriやHomeKit的な仕組みを拡大する可能性がある。

 Microsoft自身はCortanaを長年にわたって提供しており、主にモバイル方面からユーザーにアプローチしていた。しかし今回同社がCortanaのアップデートで目指しているのは、PCを直接操作できない少し離れた距離での利用、さらにはPCが設置されていない場所での利用にある。Windows 10 Creators Updateでは、ポストPC時代を見据えたMicrosoftの次の一手が見えつつあるだ。

●Windows 10 Creators UpdateにおけるCortanaの動作

 Windows 10 IoT Coreに限らず、PCを含むWindows 10 Creators Update全般におけるCortanaの動向についても触れておきたい。CortanaはもともとモバイルOSの「Windows Phone 8.1」で初めて搭載され、スマートフォンを利用するユーザーに「持ち歩ける音声アシスタント」を提供することを主眼としていた。2014年4月発表のCortanaよりも先行して2011年に投入されていたAppleのSiriも同様だ。

 Cortanaが目指したのは「パーソナル」な音声対応アシスタントであり、これはWindows 10 for PCに展開されてからも変わらず、基本的には「PCの目の前に座っているユーザーとの対話」に重点が置かれている。「Xbox One」ではテレビとの物理的な距離があるため、もう少し離れた距離での音声制御を想定しているが、おおむね近接距離(Near-field)での対話に主眼が置かれている。

 しかしWindows 10 Creators Updateでは、Far-fieldという遠距離からの音声制御と、デバイスがスリープ状態にあってもCortanaを音声コマンドで呼び出せるWake on Voice(WoV)の仕組みがあらためて明記されている。これは従来のPCの使い方を越えたホームユース、例えばAmazon Echoのような新デバイスの登場を想定したアップデートと言える。

●Far-fieldとNear-field

 現在Windows 10に搭載されているCortanaは、ユーザーがPCの目の前にいて操作していることを想定している。Microsoftによれば0.5m程度の距離での利用が目安だ。これはCortanaの制限というよりも、PCに内蔵されたマイクの性質による。

 ゲーム実況などライブストリーミングを行っているようなユーザーは専用のマイクやWebカメラを用意して、より広範囲の映像や音声を収録できる環境を整えているかもしれないが、実際に多くのユーザーがノートPCやデスクトップPCを使っている環境はそうではない。

 PC内蔵あるいは外付けの標準的なマイクは、ユーザーがあくまでPCの正面に向き合っていることを想定し、外部からのノイズを極力取り込まず快適に利用できるチューニングとなっている。

 しかし、Cortanaを複数人で操作したり、あるいは離れた場所にあるPCに音声コマンドを通じて操作したりといった活用を考えた場合、このマイクのチューニングでは困る場面が出てくる。うまく音声を取り込めず、Cortanaに話した内容が伝わらないからだ。

 そこで、遠距離からの利用を想定したマイクのチューニングや搭載方法が必要となる。例えばMicrosoftが「Premium(P)」と定義しているマイクは、有効範囲が0.8m程度と若干広くなっており、複数人の操作や環境音楽のより高品位な取り込みが可能だ。

 そして今回Microsoftが定義したFar-fieldは、最大で4m程度からCortanaを利用することを想定している。Xbox Oneを利用するケースで、テレビからの距離は大体2m前後が一般的であることを考えれば(日本ではなくリビングの広い国ではもう少し離れているかもしれない)、4mというのはかなりの遠距離だ。家庭内でちょっと広い部屋の端から端くらいまで届く距離があると考えてよいだろう。

 この距離でユーザーの音声を正確に聞き取るには、デバイスに専用のマイクを配置したり、チューニングしたりが必要となり、一般的なPC向けの仕様ではない。これは「既存のPCの形状ではない専用デバイス」など、設置型マイク経由での利用に特化したデバイスでの搭載を想定したものと推察する。その意味では、Amazon Echo型のWindows 10デバイスというのはまさに理にかなったカタチではないだろうか。

●Wake on Voiceによるスリープからの音声制御

 ロックスクリーンが出ている状態でもCortanaの制御が可能な仕組みは既にWindows 10に搭載されているが、現在のMicrosoftが目指しているのはその先だ。具体的にはスリープ状態であっても「Hey Cortana」と呼びかければ、いつでもマシンが復帰し、入力した音声コマンドを実行できる状態に持ち込むことが目標となる。これがWake on Voice(WoV)だ。

 WoVの機能は疑似的には簡単に実装できる。例えば、ディスプレイの電源を落として省電力動作モードに移行し、ユーザーから「Hey Cortana」と呼びかけられるまでずっと待機していればいい。ただ、標準状態ではディスプレイがオフの状態になってからしばらく後にスリープ状態へと移行してしまうため、ユーザーに了承をとったうえで「スリープ移行禁止」のモードを用意する。AC電源に接続されていることが前提となるが、デスクトップPCではアリな選択だろう。

 次に利用するのが、Intelプロセッサの「S0ix」ステートなどと表現される新しいタイプのスリープ状態だ。Windows OSでは、Windows 8以降に「InstantGo(Connected Standby)」の名称でタブレットPCや2in1に対応が進んでおり、CPUが通常の稼働状態を示す「S0」のステートでありながら超低消費電力での動作が可能で、かつ通常のスリープ状態と比較しても復帰が早い。

 InstantGoのメリットは、タブレットPCで使わないときは画面を消してバッテリーを極力消費しない省電力モードへと移行し、バックグラウンドでのネットワーク通信や情報のアップデートは行うといった、いわゆるスマートフォンやタブレットのような使い方がPCでも実現できることにもある。

 Microsoftではこの種の待機型スリープ状態を「Modern Standby」と表現しており、これにWoVを組み合わせる方策を検討している。S0ixのステートでは断続的ながら実質的にCPUが通常動作しているので、ソフトウェア的にWoVを実装するのは容易だ。このようにソフトウェアで音声認識によるキーワードを抽出する仕組みを「Software Keyword Spotter」と表現する。

 ただし、スリープ状態からの復帰ラグなどの関係で、Software Keyword Spotterでは音声の取りこぼしが発生する可能性がある。そこでMicrosoftがPremiumと定義しているマイク環境を備えたデバイスでは100〜200ms(ミリ秒)程度の音声バッファを取得できる仕組みを用意するよう推奨している。

 そして次のステップとしては、CPUやチップセットが完全にスリープ状態にある、いわゆる「S3(スタンバイ)」の状態でもWoVが利用できるよう、専用ハードウェアの追加でサポートする「HW KWS」を実装していきたい意向だ。

 どのようなPCやデバイスでこのような仕組みが必要になるかは分からないが、いずれは「キーボードやタッチ操作を必要としないPC」が登場する世界も予想され、未来のPCへと一歩近づくことになるかもしれない。

 いや、未来のPC……と呼んでいいのかは分からないが、かつてPCだったデバイスが未来にどのような形状をもって家庭に鎮座しているのか、その答えの1つはAmazon Echoに見いだせるだろう。

●Cortana対応デバイスの開発キットも用意

 MicrosoftはCortana対応デバイスの開発を支援するため、「Cortana Skills Kit」と「Cortana Devices SDK」を2017年早期に一般公開すると発表した。この開発キットを先行提供されたパートナーのHarman KardonによるCortana搭載スピーカーの動画も公開されている。

 まずは第一歩だが、2017年は「既存のPCとは異なる新しいデバイス」の展望が見えるようになることに期待したい。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

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