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スノボ界の快挙に日本中が大興奮!平野歩夢、USオープン優勝の背景。

Number Web のロゴ Number Web 2018/03/13 17:30 徳原海
89.62の高得点で優勝した平野歩夢。2位の片山來夢(86.75/写真右端)、3位のスコッティ・ジェームズ(83.62)と表彰台で喜びを分かちあった。 © photograph by Kai Tokuhara 89.62の高得点で優勝した平野歩夢。2位の片山來夢(86.75/写真右端)、3位のスコッティ・ジェームズ(83.62)と表彰台で喜びを分かちあった。

 3月10日、スノーボード・ハーフパイプの平野歩夢が「USオープン」で初優勝を飾った。決勝3本目の“ウイニングラン”を終えた直後、駆け寄る関係者やライダー、ジャーナリストたちから小さな体をもみくちゃにされながらめずらしく満面の笑顔をこぼした。

「ここ2~3年かけて、確実にトップを取るための準備をしてきたことが自分の中で大きな自信になっていますし、それをこの大会でしっかり繰り出すことができました」

 メディアルームでの第一声にも達成感が滲んだ。約1カ月前の平昌五輪では金メダルに相応しいハイスコアを叩き出しながら、惜しくもショーン・ホワイトのラストランがそれを上回った。

 雪辱を期す思いというのは言葉にせずとも当然あったはずで、その一方、五輪イヤー特有のハードな転戦を勝利でフィニッシュできた安堵もあったのだろう。いずれにせよ、平野歩夢は考えうる最高の形で今シーズンを締めくくった。

平野が制したのは、世界最高レベルの舞台。

 さて、そんな平野歩夢の快挙を振り返る上で、USオープンの規模についても触れておく必要があるだろう。

 毎年3月上旬にアメリカ・コロラド州ベイルで開催され、今年で37回目を迎える伝統の大会は「Xゲームズ」と並ぶ最高峰の舞台と位置づけられており、またスノーボードのトップブランドであるアメリカのバートン社が主催していることも、世界中のトップライダーたちからリスペクトされる理由だ。

 五輪直後のハードスケジュールにもかかわらず、ともに17歳で金メダルを獲得した女子ハーフパイプのクロエ・キムと男子スロープスタイルのレッド・ジェラード、女子スロープスタイルを制したジェイミー・アンダーソン(以上アメリカ)、女子ビッグエアの初代女王となったアンナ・ガッサー(オーストリア)ら平昌のメダリストたちがこぞって出場したことも、そのタイトル価値の高さを実証している。

 また平野の出場した男子ハーフパイプも、銅メダルのスコッティ・ジェームズ(オーストラリア)や同4位のベン・ファーガソン(アメリカ)をはじめ、ショーン・ホワイトを除いた五輪トップ10が集結。まさに“平昌・第2ラウンド”の様相を呈した。

選手生命の危機を乗り越えて――。

 平野自身も「USオープンは好きな大会。なるべく毎年出たい」と語り、実際2011年に12歳で初出場して以来、2012年に13歳で2位、2015年には3位と常に成長のステージにしてきた経緯がある。それでも今大会にかける思いは例年よりも強かったのではないか。

 昨年のUSオープン、平野は大技キャブダブルコーク1440を繰り出した際、リップ(パイプの縁)に激しく体を打ちつけ、肝臓と左膝内側側副じん帯損傷の重傷を負った。

 2カ月にもわたるリハビリ。平昌五輪の前後には多くのメディアが“大怪我からの復帰”に焦点を当てたが、その怪我というのは1年前、このUSオープンで負ったものだったのだ。

「去年あんな形でクラッシュをしてしまって、もちろんそのときの悪い流れやイメージは頭に残っていたし不安な部分もありました。だから今回は、まず怪我だけはしないようにと気をつけながら臨みました」

優勝が決まっても攻め続けた平野。

 そして見事に打ち勝った。

 予選をトップ通過し、迎えた決勝。1本目にバックサイドダブルコーク1260をミスし転倒するも、2本目はバックサイドインディ・フロントサイドダブルコーク1440・キャブダブルコーク1440・キャブダブルコーク1080・フロントサイドダブルコーク1260と繋げ、バックサイドダブルコーク1260を今度は鮮やかに決めてフィニッシュ。

 ボトムに設置された大型モニターに「89.62」という得点が表示されると、超満員の会場が揺れた。

 その後、3位につけていたスコッティ・ジェームズと、平野同様すばらしいルーティンを成功させ2位に躍進していた片山來夢の2人がともに3本目を失敗したところで、平野の初優勝が決まった。

 冒頭でお伝えしたように3本目はウイニングランとなったわけだが、それでもなおポイントの上積みを狙って攻めのトリックに挑む。

 転倒するも、平野歩夢のスノーボーダーとしてのブレない姿勢を見せつけられた感じがして印象深かった。

“平野歩夢”のスタイルが確立したシーズン。

「ちょうど五輪が終わって気持ち的にリラックスしていたこともあって、ものすごく自分を追い込んで、というよりも今大会はスノーボードそのものを純粋に楽しめたと思っています。

 決勝は天気があまり良くなくて、風も強かったから完璧なライディングとはいかなかったですけど、これまでで一番楽しめました。シーズンのいい締めくくりになったし、自分のやってきたことが1つのスタイルとして認められた感じもしています」

 そう本人も実感するように、1月のXゲームズでの金メダル、2月の平昌五輪銀メダルに続く今回のUSオープン制覇は、まさしく“平野歩夢”というスノーボーダー像が確立された瞬間となった。

 満員の観客は2連覇中だったショーン・ホワイトの不在を残念がるよりも平野のライディングに酔いしれ、大きな拍手を送った。

ついにスノーボードが日本で市民権を得た!

 現地取材から帰国し、国内での反響の大きさにも驚いた。

 五輪直後というプラス要素はあったにせよ、これまででは考えられないくらい「スノボUSオープンで平野歩夢が優勝」という見出しをネット上で見かけ、また今までスノーボードの話などしたことのない知人たちからも現地での観戦を羨む声が届いた。

「ついに競技としてのスノーボードが日本で市民権を得た。そして平野歩夢がそのアイコンになる!」

 大げさではなく、そう確信した。ここが時代のターニングポイントになると。

 事実、2位に入った片山來夢が「歩夢という存在が上にいることが大きな励みになっている」と語ったように、今や平野の存在が日本人ライダー全体のクオリティアップにも少なくない影響を与えるなど、スノーボードシーンに好循環を生み出してもいる。

 残念ながら今シーズンのスノーボードの大会シーンは、このUSオープンをもってほぼ閉幕した。したがって次に平野歩夢のライディングが見られるのはもう少し先だ。

 19歳のもの静かなリーダーは、しばしの休息を経て、来冬さらに進化したライディングで日本のスノーボードシーンを引っ張っていってくれるに違いない。

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