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俊輔、清武、乾より大フィーバー。地元が待ちわびた柴崎岳デビュー戦。

Number Web のロゴ Number Web 2017/03/21 工藤拓
鹿島で1年目からつけた愛着のある背番号20とともに、スペインのピッチに立った柴崎岳。彼の欧州挑戦はここから始まる。 © photograph by AFLO 鹿島で1年目からつけた愛着のある背番号20とともに、スペインのピッチに立った柴崎岳。彼の欧州挑戦はここから始まる。

 理想のデビュー、というわけにはいかなかった。

 3月19日、柴崎岳が初出場したテネリフェ対レウス戦は、0-1でアウェーチームの勝利に終わった。テネリフェにとってはこれが今季のホーム初黒星。同時に、年明け以降続いていた無敗記録も11戦で途絶えてしまった。

 この試合の後半29分、4-4-2のドブレピボーテの一角に投入された柴崎は、久々の実戦感覚を確かめるように丁寧にボールをさばきながら、約19分間のプレータイムを過ごしていた。

 デビュー戦を白星で飾れなかったことはもちろん、引いて守る相手を押し込み続ける展開が続いただけに、もう少し相手ゴールに近い位置でチャレンジするプレーが見られなかったのは残念だ。ホセ・ルイス・マルティー監督も試合後の会見で以下のように語っている。

「もう少し前のゾーンでプレーしてもらいたかったが、ボール欲しさに引きすぎていた。彼を起用したのはラスト数メートルでパスを通す能力があり、ボールを散らして相手の守備を揺さぶれる選手だからだ」

無言を貫いた本人をよそに、情報がひとり歩き。

 結局、この試合で大きなインパクトを残すことはできなかった。それでも、デビューに至るまでに予想外の遠回りを強いられた彼が、この試合でようやく新天地での第一歩を踏み出せたことは事実である。

 確実視されていたラスパルマス移籍が暗礁に乗り上げ、隣島テネリフェの2部クラブと契約したのが1月末のこと。その後はやれ体調不良で体重6キロ減だ、やれ不安症でホテルから出てこないだ、やれ謎のバルセロナ訪問だと、無言を貫く本人をよそに情報ばかりがひとり歩きしてきた。

俊輔、乾、清武の時を超える現地のフィーバー。

 しかし、テネリフェの人々はそんな「GAKU」のプレーが見られるようになるのを、心待ちにしていたようだ。

 後半開始の少し前、タッチライン脇のウォーミングアップゾーンに日本人MFが姿を現すと、スタンドから温かな拍手が沸き起こった。

 さらに後半29分の登場時には、本拠地エリオドロ・ロドリゲス・ロペスがこの日一番の大歓声に包まれた。その後もしばらくは背番号20がボールに触れるたびに拍手が繰り返された。

 柴崎本人だけではない。我々日本の記者陣も、町を歩けば「ガク! ガク!」と呼びかけられ、写真撮影をせがまれた。スタジアムではラジオや地元紙の取材に引っ張りだこだった。

 過去にエスパニョールの中村俊輔やマジョルカの家長昭博、エイバルの乾貴士、セビージャの清武弘嗣らを取材してきたが、彼らの入団当初ですら、ここまで現地で日本人フィーバーが盛り上がることはなかったと記憶している。

半年契約で、プレーオフ争いというシビアな状況。

 十分すぎるほど肌で感じられた地元民の期待感はしかし、今後柴崎がピッチ上で納得のいくプレーを見せられなかった際、厳しい批判に一変する危険性も孕んでいる。

 初めてベンチ入りした前節ヘタフェ戦に続き、途中交代でデビューを果たした今節までは1つ1つ段階を経ることができた。だが今後柴崎がテネリフェの戦力として定着するためには、限られた出場時間の中で早急に結果を出す必要がある。

 ましてやチームは3~6位の昇格プレーオフ枠を争っている真っ最中。半年契約を結んだ日本人MFの適応を進めるために時間や交代枠を費やしている余裕などない。

必要なのは即戦力だとすれば……。

 残り12試合となった今季のリーグ戦で求められるのは、計算できる即戦力である。その中で新加入の柴崎がチームに貢献する展開としては、2つの状況が考えられる。

 1つはリードしている時に2トップの1人を削ってトップ下に柴崎を投入し、中盤を厚くしたポゼッション重視のゲームコントロールで逃げ切りを図る場合。もう1つはこの日のように、ゴールが必要な状況でボランチを1枚削り、そこに柴崎を加えて攻撃の質を高める場合だ。

 前者のような起用法であれば、デビュー戦のようなプレーでも及第点をつけることはできるだろう。だが後者の場合、当然ながら求められるのはゴールに直結するプレーである。

 デビューに至るまで2カ月近くを要した柴崎にとって、今後は1試合、1分1秒たりとも無駄にできる時間はない。

 次節は勝ち点4差で3位につけるカディスとの上位対決。まずは1週間の練習でしっかりアピールした上で、出番があれば目に見える結果を積極的に狙ってもらいたい。

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