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名将か愚将か…セ・リーグの監督を査定する!【2017年版】

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2017/11/24 16:00 氏原英明

 ソフトバンクの2年ぶり日本一で閉幕を迎えた2017年のプロ野球。期待通り、あるいは期待以上の成果を残した球団や、今後につながるチームづくりが進んだ球団もあれば、収穫の乏しいシーズンを送ってしまった球団もある。その背景には選手の好不調、思わぬアクシデントや運といった要素もあるが、指揮官の手腕がもたらした影響もあるだろう。そこで今年1年を振り返り、全12球団監督の働きぶりを査定したい。今回はセ・リーグ編だ。

【真中満(ヤクルト)】 評価:D

 ケガ人が続出して、借金を51個作って最下位に終わった。2015年セ・リーグ覇者の面影はなく、シーズン序盤からの失速に歯止めをかけられなかった。とはいえ、これを指揮官の手腕とだけ評価してしまうのはやや厳しいかもしれない。野手陣では畠山和洋、川端慎吾のケガはある程度、予想ができたかもしれないが、山田哲人しか全試合出場した選手がいない。これは指揮官の予想をはるかに超えていただろう。

選手を出迎えるDeNAのラミレス監督 (c)朝日新聞社 © dot. 選手を出迎えるDeNAのラミレス監督 (c)朝日新聞社

 投手陣はもっとひどいありさまで、最多先発が外国人のブキャナンで、次がベテランの石川雅規。原樹理、星知弥といった若手にイキの良さはあったが、フルシーズンを戦えなかった。挙句、星と開幕投手の小川泰弘はケガで来季へのめどが立たない。投手のマネジメントには指揮官の責任もあるが、球団の長年の課題でもある。

 この秋のドラフトでは1位指名で高校生捕手に走った。これは球団のビジョンに疑問を抱かざるをえない選択だ。指揮官の評価を順位ほどに下にしていないのはそれが理由だ。リーグ優勝を狙えるだけの環境を用意するのが先決である。フロントからの改革が必要だ。

【森繁和(中日)】 評価:D

 計算外のシーズンだったといえるかもしれない。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表として戦った平田良介、岡田俊哉のふたりが長期にわたって戦線離脱。シーズン終盤には首位打者の可能性もあった大島洋平もケガで失った。投手陣もエースを務めるはずの大野雄大、2015年に二桁勝利を挙げた若松駿太が計算外に終わり、先発陣の軸がいなかったのは痛かった。

 その中でも、荒木雅博の2000本安打、岩瀬仁紀の最多試合登板など、ベテラン勢の活躍に引っ張られ、チームの骨格作りには成功したシーズンともいえる。外国人のゲレーロ、ビシエドを主軸に据えながら、ルーキーの京田陽太を1番遊撃手として一本立ちさせた。順位は5位だが、希望の見えたシーズンだった。

 小笠原慎之介、鈴木翔太、柳裕也ら若い世代に希望が膨らむ。ドラフト1位で指名した鈴木博志はブルペン陣を厚くできる即戦力としても期待できる。森繁和監督のマネジメントは形になってきている。

【高橋由伸(巨人)】 評価:C

 監督っぽさが見えてこないのがシーズン中盤までの高橋監督だった。交流戦の前後でチームワーストの13連敗を記録。エース・菅野智之をもってしても止められなかったのは、指揮官の力量と言われて致し方ない。世代交代を含めて過渡期にきている。

 ただ、その中でも、フロントが改編されるとともに、チームの停滞に歯止めがかかったのは、少しずつ指揮官としての色が出始めたからに他ならない。「2番・二塁」にマギーを起用するという大英断は巨人が歴史と伝統のある球団であることを考えると、容易ではない。これは高橋監督が指揮官としての方向性を示したひとつの施策といえるだろう。

 菅野、マイコラス、田口麗斗の3本柱に加えて、ジュニアオールスターで活躍したルーキーの畠世周をローテの一角に据えて3位を猛追した。シーズン終盤の反撃に大きな力となったとともに、来季以降へつながる采配だった。

【アレックス・ラミレス(DeNA)】 評価:A

 シーズン3位ながら日本シリーズ進出を果たした。その日本シリーズでも、ソフトバンクを追い詰めるなど、大きな足跡を残したシーズンだった。

 去年からの継続のひとつとして2番に梶谷隆幸を起用し、「8番・投手」「3番・筒香嘉智」など常識外の起用があった。投手陣でも、不調だったクローザーの山崎康晃を一時、中継ぎに配置転換するなど、柔軟性のある起用を見せた。

 桑原将志や倉本寿彦を不調であるにもかかわらず、起用し続けた我慢強さも注目されるが、宮崎敏郎を首位打者に育てあげた手腕も見事だ。あれだけのフルスイングを許容した采配はもっと評価されるべきだ。

 また、打順変更や中継ぎの配置転換などに際して、選手を尊重してしっかりとコミュニケーションを取ることを忘れなかった。監督然するタイプではないが、堂々としている様に選手が尊敬の念を抱き、ポストシーズンでの好結果につながった。

【金本知憲( 阪神)】 評価:A

 シーズン2位でフィニッシュ。クライマックスシリーズ(CS)では3位のDeNAに後塵を拝したが、天候なども影響して致し方ない部分はあった。指揮官の采配による敗退とは感じられなかった。

 むしろ、戦力の整備は着実に進んだといえる。今季60試合登板5人を果たしたブルペン陣はマテオ、ドリスの両外国人に試合のクローズを頼り切るだけではなく、リリーバー全般に厚みを生み出した。桑原謙太朗を再生させたのは見事だし、FA移籍2年目の高橋聡文を生かし、元クローザーの藤川球児が生きる場所を見つけ、3年目の石崎剛も一本立ちさせた。先発陣も藤浪晋太郎の予想外の不調にも崩されず、8年目の秋山拓巳を再ブレークさせた。

 打線の方は、超変革を継続。中谷将大、大山悠輔らの台頭を促しつつ、糸井嘉男、福留孝介、鳥谷敬の3人のベテラン、上本博樹、俊介ら中堅世代の頑張りにも目を付けた。来季、高山俊や糸原健斗らが巻き返してくれば、指揮官の狙い通りに事が運ぶはずだ。

【緒方孝一( 広島)】 評価:B

 ほとんどA評価といっていい。レギュラーシーズンをダントツで制覇した手腕は高い評価を受けていい。ただ、それだけの圧倒的な差を作りながら、CSで敗れてしまったことはマイナス要素。勝敗のアドバンテージ、日程面での余裕をプラスに変えられたかったのがやや厳しい評価につながった

 とはいえ、現状に満足しないチーム作りはさすがといえる。田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也に頼るだけのチームにするつもりはなく、ファームからの突き上げをどんどん受け入れた。鈴木の代役として4番入った松山竜平や、三塁手としてチームを引っ張った安部友裕、2年目の西川龍馬ら選手層の厚みはセ・リーグ随一だ。

 投手陣も中継ぎ起用の多かった薮田和樹を先発のひとりとして育成。黒田博樹の引退やジョンソンの不調といったマイナス要素がある中、薮田に大瀬良大地に加え、岡田明丈、中村祐太などでしっかり穴を埋めた。

 当然、選手を見極めるスカウティング、育てあげるファームの育成があってのことだが、三位一体を忘れず緒方監督が選手の力を引き出した。(文・氏原英明)

●プロフィール

氏原英明

1977年、サンパウロ生まれ奈良育ち。地方新聞社勤務を経て、03年からフリーライター。夏の甲子園は03年から大会をすべて観戦取材するなど、アマチュア野球に精通。現在のプロ野球選手のアマチュア時代を知る強さを生かし、プロの現場でも成長ぶりを追いかける。一方、最近では個性がどう生かされているかをプロアマを問わず観戦の主眼に置いている。

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