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広島・新井貴浩引退 東尾修「絶妙の立ち位置で支えた」

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2018/09/15 07:00

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、今季での引退を決めた広島・新井貴浩選手に言及する。

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝 © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝

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 広島の新井貴浩が現役引退を発表した。本当にお疲れ様と言いたい。4年前に阪神から広島に戻って、チームは常勝軍団となった。もちろん選手個々のレベルアップが前提にあるが、新井が「勝つために何が必要なのか」と、背中で教えてきたからこそ、今のチームがあると思う。

 チームがリーグ3連覇を目前としている中で、引退会見を行うことができる。そして、試合も数多く残しているし、新井のプレーはまだ見ることができる。最高のタイミングでの引き際となるし、これは新井がプロの世界で20年間、野球に真摯(しんし)に取り組んできたご褒美ではないかと感じる。

 周囲に感謝して野球ができる選手だ。名球会のイベントでも率先して物事に取り組んでくれている。ベテランという存在はチームの重荷になってはいけない。常に周囲との距離感を意識して、時折アドバイスを送り、チームを引き締めるくらいがちょうどいい。若手がのびのびと、自分の特長を発揮できる今の広島を見ていれば、新井がどれだけ絶妙の立ち位置でチームを支え続けているかわかる。

 新井は自分のことを「不器用で下手クソ」と話しているが、実直でひたむきに野球に取り組んだからこそ、道は開けたのだと思う。2003年、金本知憲(現阪神監督)が移籍した際に、当時監督だった山本浩二さんが、辛抱強く4番で起用した。まじめであればあるほど、4番という重責を背負ってしまうが、彼は不振であっても、グラウンドでは前を向き続けた。

 私もちょうどプロ生活20年目だった。1988年の中日との日本シリーズ。先発ローテーションから外れた私は第1戦(ナゴヤ球場)で、4−1で迎えた八回無死一、二塁、彦野利勝の打席で先発の渡辺久信をリリーフした。当然、最後まで投げ切るつもりでマウンドに上がったが、当時の森祇晶監督の言葉は「この一人を抑えてくれ」。森監督からすれば、単純に勝つための最善手として、一人を確実に抑えてほしいとの思いから出た言葉だったろう。結局ピンチを切り抜け、九回も投げ切ったが、その言葉は私の心に強く残り、引退を決意した。

 自分では衰えを感じながらも、まだチームの中でできることはあると考えていた。勝負所で力を発揮できる自信もあった。しかし、私自身が考えるチーム内の立ち位置と、監督や球団が考える私のポジションがずれてしまった部分があった。引き際をどう考えるかは人それぞれ。本人しかわからない葛藤がある。

 優勝争いの裏で、引退であったり、戦力外であったり、来季に向けて動き始めている。クライマックスシリーズ(CS)進出も厳しくなったチームは、他チームより先に来季に目を向けて動き出している。楽天は石井一久GMが誕生した。どこでチームが方針転換するか。メジャーリーグほど劇的に起用を切り替えることは難しいとは思うが、下位チームは逆に、早く動き出せる利点を生かすしかない。

 しかし、今年は本当に大逆転勝利の試合が多いな。先発投手が長いイニングを投げられないから、救援陣の登板過多が続く。夏の酷暑も重なり、例年以上に救援陣がへばっている。いかに投手陣の疲労を回復してCSに入るかも日本一となる上で大きなテーマになる。

※週刊朝日  2018年9月21日号

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