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暮らしに新風! AIとビッグデータ分析を実装した今どきのエアコン事情

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 2018/09/14 07:39

 記録的な猛暑となった今年の日本の夏。エアコンの販売には大きな弾みがつき、年間出荷台数は、2013年度に続いて、過去2番目の規模となる920万台が見込まれている。

 過去最高となった13年度は、前半の猛暑の影響に加えて、後半はエコポイントの効果が重なり、942万台の出荷実績を記録。18年度は、それに近い台数が出荷されることになる。

 当然、19年度は、今年度の反動が見込まれるが、それでも、業界側の見通しは明るい。19年10月に予定されている消費増税前の駆け込み需要が見込まれているからだ。

 課題と言えば、こうした特需を支えるのが、普及価格帯の製品が中心になりがちなこと。これはエアコンに限らず、すべての製品に言えることで、結果として、台数は出るが、利益が確保しにくい状況から抜け出しにくい。それでも、設置工事などのサービス費用で粗利を稼げるエアコンは、販売店にとって利益確保につなげやすい商材に位置付けられている。

●AI活用のエアコンがトレンド

 猛暑による需要が終了したこの秋口に、各社からエアコン新製品が相次いで発表されている。人工知能(AI)の活用がひとつのトレンドで、カメラやセンサーから取得したデータをもとに、AIによって状況を分析。それによって最適な温度や湿度を実現できる機能の搭載が目立つ。

 三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」の新製品では、18年間に渡って進化させてきた赤外線センサーにAI技術を組み合わせた「ムーブアイmirA.I.」を搭載。部屋の中を360度センシングし、床や壁からの輻射熱や、窓からの日射熱などを検知して分析。外気温の変化などにより、部屋にいる一人一人に起こる少し先の体感温度を予測する。

この機能を利用した「A.I.自動」に運転モードを設定すると、温度や湿度を常に最適な環境にする自動運転に切り替えてくれる。冷房や暖房といったリモコンのボタンが不要になるような新たなモードを搭載したとも言える。

 日立ジョンソンコントロールズ空調のルームエアコン「白くまくん」では、新製品にファンの自動清掃機能を新たに追加するなど、「クリーン」の追求を徹底する。加えて、画像カメラや温度カメラ、近赤外線LED技術を組み合わせた「くらしカメラ AI」により、在室している人の数や位置などを認識するとともに、部屋の温度分布を把握。さらに、室内にいる一人一人を識別して、在室時間をもとに、その体感温度に合わせた気流を送り出せるようにした。

 パナソニックのルームエアコン「エオリア」の新製品では、国内最大の民間気象会社であるウェザーニューズと提携。同社が提供する花粉やPM2.5の飛散予報をもとに、部屋の空気の汚れを先読みし、自動で空気清浄運転を行う「AI先読み空気清浄」を搭載したのが特徴だ。

 冷房や暖房といった基本性能だけでなく、部屋の空気そのものをきれいにすることにこだわった製品になる。

 「従来は、部屋の空気が汚れてから空気清浄機能を稼働させていたが、新製品では、部屋の空気が汚れる前に、それを検知して、空気を清浄することができるのが特徴」(パナソニック アプライアンス社エアコンカンパニーエアコン事業部・白土清事業部長)とする。ここでもAIが活躍する。

●エアコンつけっぱなしで気軽に外出も?

 パナソニックの新製品で注目しておきたいのは、ビッグデータに対応した最初のエアコンであるという点だ。

 ウェザーニューズは、市町村単位で予測した、花粉およびPM2.5の飛散予測データを毎朝提供。これをもとにエオリアAIが機密性、換気、窓の開閉といった住宅環境や利用環境に合わせて、一日の中で空気が汚れるタイミングを予測し、空気清浄機能を稼働させる。

 「室外にはPM2.5が高い水準で飛散しており、これが増えると室内も同様に飛散レベルが高まる。中には、室内でありながらも、環境省が定めた『健康を保護する上で維持されことが望ましい基準』を上回る水準等になる場合すらある。室外のPM2.5が、室内にも侵入しているのは明らかなので、ウェザーニューズが提供する室外のデータを、室内の空気質を高めるデータとしても活用できる」(白土事業部長)

 しかも、エオリアAIの住宅環境の判定機能は、毎日、学習しながら、補正しているため、使えば使うだけ精度が向上することになるという。

 さらに、ウェザーニューズのデータは、新たに搭載した「つけっぱなし判定」にも活用される。

 不在時などに、エアコンをつけっぱなしにした方がいいのか、電源を切ったほうがいいのというのは、外出時間や外気温、住宅の機密性などで変化する。そのため、さまざまなサイトでも、電源を入れたままのほうがいいのか、消した方がいいのかといった議論が行われているが、結論が出にくい状況にある。

パナソニックが発売するルームエアコン「エオリア」の新モデル © ITmedia ビジネスオンライン パナソニックが発売するルームエアコン「エオリア」の新モデル

 つけっぱなし判定は、スマートフォンの専用アプリを使用。外出時間の目安を入力すると、ウェザーニューズの気象情報とエオリアAIが学習した住宅環境情報をベースにして、さらにはエアコン運転に関わる数億件のビッグデータをもとに開発したパナソニック独自のアルゴリズムを使って分析し、その家における電気代と帰宅時の室温の差を判定する。これをもとに、つけっぱなしで外出するか、切って外出するかを判断できるというわけだ。

 こうしたビッグデータをAIで分析し、それを機能として提供する仕組みは、今後のサービスの広がりへとつながるものになる。

 白土事業部長は、「今回の新製品は、ビッグデータを活用した最初の製品であるが、このほかにもさまざまなビッグデータを組み合わせて、サービス強化できる」と語る。

 その詳細については明らかにはしなかったが、冷暖房機能の強化という基本機能の追求だけが競争軸ではなくなりつつあるエアコンの進化において、ビッグデータとAIを活用した「コト」づくりの提案は、今後の切り札になるのは間違いないだろう。

 また、ウェザーニューズの安部大介取締役執行役員も、「家電製品へのデータ提供を通じて、室内を快適にするといった取り組みは今回が初めてだが、今後、他の家電メーカーから要望があればデータを提供していきたい」と意気込む。

 19年10月までは普及価格帯の製品が先行することになるだろうが、それ以降で、想定されるエアコンの需要が停滞した際には、重視されるのは付加価値提案となるだろう。その際に、ビッグデータとAIの活用は、重要な武器になる。今年のエアコン新製品をみると、メーカー各社は、今からその準備を開始し始めていることが見え隠れする。

(大河原克行)

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