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骨伝導の大本命は完全ワイヤレス型、世界初の「PEACE」を聴く

アスキー のロゴ アスキー 2019/11/08 13:00 ASCII
© Kadokawa Corporation 提供

クラファン最高記録の更新なるか?

 骨伝導であり、完全ワイヤレス。BoCoの「PEACE」はそんな個性的な製品だ。

 クラウドファンディングの「GREEN FUNDING」では、7月の募集開始以降、当初の目標を大きく超える支援(11月7日9:00時点で約1億2249万1355円)が集まっており、購入型クラウドファンディング国内最高の1億3200万円に迫る勢いだ。BoCoとしても、創業以来の悲願である完全ワイヤレス骨伝導イヤホンということもあり、熱のこもった製品になっている。

上部から見たところ、下の従来モデルから耳を挟み込む向きが変わっているのが分かる。 © Kadokawa Corporation 提供 上部から見たところ、下の従来モデルから耳を挟み込む向きが変わっているのが分かる。

 PEACEについては、過去記事でも紹介し、記事自体の反響も大きかった。形状などはモックアップだったが、その後デザインが変更となり、聴覚補助用モデルで重要となる、マイクの位置、さらに装着時の安定感を加味した改善を加えている。写真を比較すると分かるが、従来機種では耳を挟む接触部分が少し小さく、「長時間装着すると耳が痛くなる」「後ろに部材が飛び出ることによりやや取り回しが悪くなる」というフィードバックもあった。これに応えたという。

従来機の形状(モックアップ) © Kadokawa Corporation 提供 従来機の形状(モックアップ)

 また、7月の試聴時は、無線機能が本体に内蔵されていなかったが、今回は完全ワイヤレス機となった状態で試聴できた。ただし、音質は最終調整中。現状では、一世代前の骨伝導デバイス(V6)を利用しているが、製品版では最新世代(V7)に変更する予定だ。それに合わせてアンプを強化、イコライジング調整なども煮詰めるとのことだ。最終的には音量も上がり、iPhone(iOS12)の表示で見た場合、二目盛ほど大きい音になる予定だという。

ボーカルが聞き取りやすく、音楽を聴きながら会話できる

 骨伝導は、耳の鼓膜を介さず、振動によって直接、耳の中で音を感じる蝸牛を揺らし、音を伝えるのが特徴。結果、周囲の音を聴きながら、音楽もハッキリと聞こえる点がメリットだ。その際には振動する骨伝導デバイスを、顔のどの部分に当てるかが重要になる。PEACEの開発を通じた発見は、振動させる場所を、耳の裏やこめかみではなく、耳穴近くの軟骨に当てると、音量の感度が大きく取れるということ。さらに、音量を大きくしても、会話や周囲の音が聞きやすい印象が得られるという。

装着イメージ。 © Kadokawa Corporation 提供 装着イメージ。

 BoCoの説明では、ヘッドセットと比べてもイヤカフタイプは会話がしやすいとする。イヤホン側の音量を上げたり、周囲の騒音が増えてくれば、聞き分けはだんだん難しくなってくるが、小さい音にしても歌詞などははっきり聞こえるので、まったく不満はない。

 一般的なイヤホンと比べると、レンジが狭い面はあるが、ボーカルなどの中域は非常に聴きやすい。取材ではデモ用の音源を聞きながら、説明を聞いたが、50%程度の音量で、音質評価をしながら、会話も十分成立する。70~80%程度まで音量を上げると、音楽に集中できる一方で、さすがに会話はできない。ただし、危険音の察知はできる範囲だろう。個人的には、2種類の音量を簡単にプリセットで切り替えられる機能が合ってもいいと思った。

周波数特性と、イコライジング後の特性。Hi-Fiオーディオ開発のノウハウも生かされているそうだ。 © Kadokawa Corporation 提供 周波数特性と、イコライジング後の特性。Hi-Fiオーディオ開発のノウハウも生かされているそうだ。

 マッチしそうなのは、小編成のジャズなどアコースティックの自然な響きがあり、音数がそれほど多くないものだ。優しい感じがあり、ナチュラルな響きは、聴いていて飽きがこない。そもそも楽器自体が振動を与えて音色を作る骨伝導に近い仕組みであり、ソースとの相性もいいのだろう。

低域をどう出すかには消費電力との兼ね合いも

 難点があるとすると、低域の鳴りが少しやせている印象がある点だ。ただし、ここはチューニングで変わる部分とのこと。「低域を出すことはできるが、そのぶん消費電力が上がってしまうため、完全ワイヤレス型ではそのバランス調整が難しい」のだという。どこまでやるかの調整が肝になる。これは骨伝導ならではの要素と言えるかもしれない。実際、直接骨を振動して音を伝える機構もあって、音量を上げるとデバイス自体のぶるぶるとした震えを感じてややこそばゆい感じもある。

 使用時に意識するような音もれはない。ただし、骨伝導イヤホンでは、耳の形にも左右されるという。耳がホーンの役割を果たす傾向があるので、個人差があるそうだ。最終的には中に特殊なスポンジなどを入れて音漏れを減らす。筐体の鳴り=振動を減らすための吸音材、制振材によって調整を加える予定だという。

骨伝導の仕組みには、まだまだ研究の余地がある

 話は少し変わって、骨伝導の特徴について。PEACEの「音楽用モデル」は聴力に問題がない人をターゲットにした製品だが、BoCoはマイクで周囲の音を集音し、骨伝導で伝える「聴覚補助モデル」も提供している。BoCo株式会社の磯部純一氏は以下のように語る。

BoCo株式会社の磯部純一氏(写真は7月の取材時のもの) © Kadokawa Corporation 提供 BoCo株式会社の磯部純一氏(写真は7月の取材時のもの)

磯部 「いまは音質の調整を感覚でやっていますが、人が音を感じる仕組みについては専門家の力を借りながら研究を続けています。これは“音質の向上”と言うよりは、“どのような障害で音が聞こえないか”を知る上で重要です。

 例えば、老人性難聴(全体的に耳が衰えている人)は、もともと健常者なので、大丈夫な場合が多いのですが、特定の場所に障害がある人の場合、骨伝導にしても、有意性のある結果が出ない場合があります。また、生まれながら聴力に障害があった人は、神経が長い間使われていなかったのに、骨伝導にすることで聞こえるようになるのはなぜかという議論もあります。

 骨伝導は、通常とは違うルートで音を聞きます。個人差がありますが、難聴の人で、最初の1週間は聞こえなかったけど、突然聞こえるようになったという人もいます。また、健常者でも、骨伝導イヤホンを使い続けているうちに、ボリュームを下げても聞こえるようになることがあります」

今後はヘッドセット型と完全ワイヤレス型に特化

 骨伝導イヤホンの市場はまだまだ、立ち上がったばかりの面もあり、様々な進化の可能性がある。BoCoとしては、目標だった完全ワイヤレスの製品が実現したことで、従来からあるヘッドセットタイプと完全ワイヤレスの形態に絞り込み、より進化させていくことに舵を切りたいとする。

磯部 「同じ骨伝導でも、完全ワイヤレスの製品を作るノウハウと、ヘッドセットタイプの製品ではだいぶ違います。われわれは骨伝導に特化したメーカーなので、そのノウハウを積み上げて製品に反映しています。特にリスニングポイントと、それに合ったチューニングのノウハウが必要です。

確実なボタン操作にもこだわっているとのこと。なお、写真は試作機のため最終ではない。 © Kadokawa Corporation 提供 確実なボタン操作にもこだわっているとのこと。なお、写真は試作機のため最終ではない。

 骨伝導デバイスは製品にするためにパッケージングするのですが、それではデバイス本来が持っている性能が少し落ちてしまう面があります。デバイスそのものを直接自分の耳の好きな位置に当てて聞いた本来の性能が、パッケージングしても出せるようにしたい目標はあります。パッケージングの技術に関しては、より得意とするメーカーがあるかもしれませんが、競合するというよりは、まずは骨伝導デバイスそのものを普及させていくために、市場を広げていきたいですね。

© Kadokawa Corporation 提供

 デバイス開発という意味でわれわれは多くの特許を持っています。インバウンド向けの通訳機能や、両手をふさがずにナビゲーションができる登山での利用なども視野に入れながら、様々な協業先を探していきたいです」

 PEACEのGREEN FUNDINGでの募集は11月21日まで。12月中旬から順次発送を開始する計画。興味のある人は、リーズナブルにその機能を試せるこの機会を見逃さない方がいいだろう。

主なスペック © Kadokawa Corporation 提供 主なスペック

■関連サイト

  • PEACEのクラウドファンディングサイト

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